01あげ損…
一年に一度、女の子から好きな人にチョコを渡して告白できる日らしい。でもそれっておかしいと思うの。一年に一回しか告白しちゃいけないなんて、そんなのとんでもない。いつ何時も私は風間さんに愛を叫びたいと思っている。…いや、叫んでる。
「ゆき乃は風間さんにチョコ渡すの?」
同じクラスでボーダー隊員でもある玉狛支部のオペレーターハルと、二宮隊のスナイパー美月といつも通りお昼を食べていた。
今日はそのバレンタインデーで、勿論私は学校が終わったら本部に行って大好きな風間さんにチョコを渡すつもりだ。そのために2回ほど練習して夜な夜な作ったトリュフを鞄の中に仕込んでいる。
「うん!もちろーん!」
「緊張しちゃうね。なんか」
優等生の級長ハルがもじもじとしながらそう言うけど、風間さんにはバレンタイン以前からもう何度も告白している。最も、放課後学校の裏庭に呼び出してそこで想いを伝える…的なことではないけれど、顔を見れば話しかけて毎度大好き!と伝えている。
残念ながら相手にされていないし、受け止めてくれる事も今の所ないけれど、それは風間さんが私を女として見ていないと分かっているから諦めない。女として見れないとハッキリ言われた訳でもないし、冷たくされたから諦める程度なら最初から好きになんてなっていない。
世の片想い女子たちは、最初から自分は無理だと諦めている人が多いのが何故だかなんて私にはさっぱり分からないけれど、みんな損している!なんて思ってしまう。自分のことを知らないから…というなら知ってもらえばいい。
◇
コンコン…風間隊の作戦室のドアをノックする。分かっていたのか相変わらず私に冷たい視線を向けてくる菊地原くんが顔を出した。
「ハッピーバレンタイン!風間さんいる?」
材料を買いに行った時に配布用の義理チョコもたんと買っといたからそれを菊地原くんに差し出すけど受け取ろうとしない。眉間にシワを寄せて「風間さんならいないよ」と、冷たく言われた。
「え、なんで?どこいったの?」
「さあね」
あくまで教えてくれないつもりなのか、菊地原くんは私を見下ろしてフンと鼻息を鳴らした。ムムム、負けるもんかと私は奥に歌川くんがいないかを見回す。それをまた菊地原くんの手に
「そんなことしてる暇あるの?明日ランク戦でしょ?」
「隊長の許可は貰ってるわよ、」
言い返す私を面倒だと思ったのか、菊地原くんは「とにかくここにはいないから」そう言うとバタンとドアを閉めたんだ。と同時、ゴチンとオデコがドアに当たって激痛。マジなんなの、アイツ〜。風間さんの事好きなのは分かってるけど、ヤキモチか?
都合のいいように取れば、風間さんが少しは自分を気にしてくれているのか?という結果に辿り着き、無駄に頬が緩んだ。仕方ない、探すか〜。こんな時迅さんみたいなSEがあったらすぐに見つかったりするのかなぁ?なんて思って歩いていたら、ちょうど自販機のところに大好きな人の後ろ姿を見つけた。
すぐに走ってそちらへ行く。私の足音で風間さんが振り返ると、目を大きく見開いた。
「風間さーん!今作戦室行ったらいないって言われて探してました。はい、バレンタイン!」
抱きつきたい気持ちを押さえてハート型の箱を差し出すとそれを素直に受け取ってくれる。まじまじと見つめたあと、「作ったのか?」そう聞かれて「はい!徹夜で作りました」そう笑うと、ポコンと頭にチョップされた。
「ちゃんと寝ろ、明日はランク戦なんだから。これは有難く貰っておくが、お返しは期待するなよ」
そう言われて、風間さんがお返しをくれるなんてことを想像していなかったせいか、キョトンと見つめたまま脳内で妄想する。
――絶対忘れられてる気がする。
ニュイっと風間さんの服の裾を引っ張る。当たり前に視線が私を捉えて…
「あの、お返し今くれませんか?」
「は?」
小柄で童顔だからこうして二人で並んでいても彼が年上に見えないかもしれない。けれど確実に風間さんは私より歳上で大学生だ。私よりずっと大人だ。
怪訝に私を見入る風間さんをチラリと見つめ返す。
「一ノ瀬?」
「忘れちゃうでしょ風間さん!ホワイトデーなんて忘れちゃうでしょ。だから今この場でゆき乃が欲しいお返し下さい…」
無言で考える事数秒、薄い唇を開いた風間さんがほんのり眉毛を下げて言葉を繋げる。
「確かに忘れてるだろうな。だがなんだ、今一ノ瀬が欲しいものなんて俺は持ってない、ぞ…」
ふわりと一歩近づいて風間さんの視界を私だけで埋める。彼はきっと目を閉じていないだろう。ドキドキしながらももう一度好きって気持ちを込めて一瞬離れた唇をまた重ねた―――
「ホワイトデーの日にまた貰いに来ますね!」
「…あげ損じゃないか、」
なんてことないって顔で私の言葉に返すけれど、その日の風間さんは確実におかしかった…って、歌川くんに聞くことになるのは、もう少し先のお話。
Thanks reading…♡