普通プロポーズって幸せいっぱいの報告だって思ってた。でも目の前のゆき乃さんはそんな風には見えなくて。
「不死川さんと付き合ってたの?ゆき乃さん…」
恋人同士の会話の中で成り立つ物なんじゃないか?って。わたしの言葉に首を横に振るゆき乃さん。
そう、だよね。そんな素振り見せなかったし、さすがに付き合っていたら報告だってしてくれるはず。
それなのに、ゆき乃さんにプロポーズしたって不死川さんはある意味凄いと思った。
「付き合ってないどころか、実弥とはキス一つしてない。でも全部知ってるの、あたしが馬鹿みたいに遊んでること。…もっと自分を大事にしろって。そんな安売りすんなって…ーー見てられねぇって言われて。あの不器用な人がね、こんな汚いあたしの事全部受け止めるって。…そんな事言ってもらう資格なんてないのに。…でもね、ハル。それ聞いた時もうこんな馬鹿なことは止めようって思えたし、実弥と同じ未来が見たいって。今まで自分がしてきたことが馬鹿すぎて、本気で好きになった人にこんなにも罪悪感が生まれるなんて…。ほんと馬鹿、自業自得。でも実弥があたしに伸ばしてくれた手、掴みたいの。離したくないの…」
恋愛で泣くなんて馬鹿みたい!って散々言っていたゆき乃さん。本気になんてならない!ってしこたま言っていたゆき乃さん。今わたしの目の前にいるゆき乃さんはクッションに顔を埋めて肩を震わせて泣いている。
ねぇ大丈夫、ゆき乃さんは馬鹿みたいじゃないよ。
そんでもって不死川!!!よく言った!!!
大好きなゆき乃さんが誰かのものになってしまうのは悔しいけど、相手が不死川さんなら、安心して任せられる。
この前の海で仲良く並んで笑い合う二人に、嘘はないって思えたよ。
「ゆき乃さんっ!!飛び込もう!!不死川さんのとこ!!きっと、全部不死川さんに受け止めて貰える人生なんだよ、ゆき乃さんは!てゆーか何も気づかなくてごめんねっ!自分の事ばっかりゆき乃さんに話しちゃってごめんねっ!」
「ほんとだよ、全く…」
え、そこは「そんな事いいの、」とかじゃないの?
苦笑いのわたしに、クッションから顔を上げたゆき乃さんが毒づいた。
「ご、ごめん、ほんとに」
「二の次にしやがって」
「いやほんとに、すみません」
「クソがぁ」
「す、すみません」
「チッ」
これ絶対いつまでも続くパターンだよね。わたしがジーッとゆき乃さんを見ると、クッションに顔を埋めて小さく言ったんだ。
「ありがとう」と。
だから嬉しくてゆき乃さんの隣に座ってゴロンと転がった。
「げ、なに?」
「げ?って言わないでよぉ!幸せお裾分けしてえ、ゆき乃さぁん!」
「知らないわよ、ハル今モテ期でしょ?」
「いーじゃんゆき乃さんなんて常にモテ期なんだからさぁ」
「そりゃそーでしょ。ゆき乃可愛いもん!」
ブッて2人して笑う。ほんと可愛い人だよゆき乃さん。でも不死川さんみたいに大きな心で受け止めてくれる人がいるんだって分かると、希望に繋がるというか。
杏寿郎への気持ちは確かにまだ消えないし、この先も消えないのかもしれない。それでもエルヴィンはそんなわたし事愛してくれる…そう言ってくれた。
その愛を信じてみても、いいんじゃないかって。
「どーしよー。実弥とえっちしたーい!!」
「ぶっ。そんなのすぐ食いつくでしょ不死川さん!」
ちょっと早いゆき乃さんへの前途を祝して、わたし達は乾杯をした。