エルヴィンにも、七海さんにも、自分の気持ちにケリをつけてくるので、週明けに会って欲しい…と連絡をして。
助手席に座っているゆき乃さんは、サングラスをかける不死川さんを連写してスマホにおさめているのが可笑しくて、後部座席に座っていたわたしはそんな二人が微笑ましくて顔がニヤついてしまう。
「撮りすぎだァ」
「やば、ハル見てコレ!めっちゃカッコイイ!待受にしよぉ!」
「ゆき乃てめぇ、聞いてねぇだろ」
後ろを振り返ってスマホをわたしに見せてくれるゆき乃さん。その画面には、煙草咥えてサングラスをかけて運転している不死川さんの横顔が写っている。綺麗に光が反射してちょっとポスターみたいな写りで…
「うん、めっちゃカッコイイ!モデルさんみたいね!」
「でしょでしょ!実弥にも後で送ってあげるね」
「いらねェよ」
「じゃあ代わりにゆき乃の自撮り送ってあげる〜」
「…それは、貰っとく」
ブッ!!不死川さん素直すぎる!!
思わず飲んでたカフェラテを吹き出しそうになったわたしにチッて舌打ちが飛んできた。
「大好きなんですね不死川さん、ゆき乃さんが。羨ましい…」
いつの間に用意していたのか、ゆき乃さんの左手薬指には婚約指輪なる物がついていて。もしも、プロポーズを断られたらどうするつもりだったんだろう?なんて。付き合ってもいない女にプロポーズをした不死川さんの覚悟は相当のものだったんだって、今なら分かる。
だけど一つだけ浮かんだその疑問、つい口に出してしまった。
「え、えっちしたの?ゆき乃さん!」
「ブッ!!!」
吹き出したのはゆき乃さん、ではなく不死川さんで。ちょうど缶コーヒーを口に含んだタイミングで後ろからそんな言葉を飛ばしてしまった。
ゆき乃さんが笑いながらウェットティッシュを取り出して動揺している不死川さんを拭いてあげてる。
「実弥、答えてあげて、」
「ざけんなァ。言うか、んなこたァ」
サングラスをかけ直す不死川さんは耳まで真っ赤で、やっぱりゆき乃さんのが
そして、杏寿郎とちゃんと話そうと決めた事でわたしの気持ちも少なからず決まりつつあった。
「ハルさんよォ、てめぇは人の事より自分の心配してろ。煉獄も楽しみにしてたぞ。冨岡拾ってから来るっつったから、俺らよりちょっと遅いかもしれねェが」
「たはは、ですよね」
宇髄さんところも、彼女が三人来るらしい。公認で三人と付き合っている宇髄さんはさすがだと思うけど。彼女たちとも久々に会うからそれはそれで楽しみだった。
「ハルと杏寿郎くんがうまくいったらさ、一泊してこ、実弥」
「あぁ、任せる」
「んじゃ宿予約しとくね」
「あぁ」
ん?んんん????
サラリとすごい事言ったけどゆき乃さん。許嫁のいる杏寿郎とわたしが、今日うまくいくという可能性はゼロに近いと思うんだけど。顔に出ていたのか、ゆき乃さんはまた振り返るとニッと笑った。
「空白の一夜は内緒にしてやるから!」
そんな事、杏寿郎が許すわけないのに、わたしの心はゆき乃さんの言葉を鵜呑みにしてしまいそうなぐらい、舞い上がっていたんだ。
「あー煉獄の車もう着いてんなァ」
駐車場に着いたら不死川さんがそんな事を言い出して。クルリと辺りを見回すと、杏寿郎の明るい髪が目に入った。
わたし達も近くに車を停めていざ出陣!
荷物を持って杏寿郎の車の方に近寄る。心臓がバクバク高鳴っているのが分かる。
「杏寿郎…」
小さく声をかけると、振り返った杏寿郎が大きな目を更に大きく見開いた。
「ハル…居たのか…」
「杏寿郎さん、これも持っていきますよね?」
トランクの向こう側、忘れもしない許嫁のサチが笑顔で顔を出した。