BBQから1ヶ月が過ぎていた。
数日後に杏寿郎の誕生日を控えたその日、わたしは七海さんとショッピングモールで買い物をしていた。
あれからすごくすごく考えて、七海さんと結婚を前提に交際をする事にした。
エルヴィンの事も確かに気になっていたと思う。ただわたしにとって、七海さんと居る時間の方がわたしらしく居られた。杏寿郎との事も全部話したし、その上で七海さんは「結婚を前提にお付き合いしてください」と、改めて言ってくれたんだった。
こんなに心地の良い人にはもう出会えないかもしれない…そう思うんだ。
そしてゆき乃さんも、不死川さんとの結婚に向けて本格的に男切りをしているせいか、毎日疲れた顔をしていた。遊び同然で一夜を共にした相手だけれど、本気で好きだと申し出てくるオトコが後を絶たない。でもそれは自分でしてきた事だからと、誰に助けを求める訳でもなく、ひたすら謝罪に行っている。あのゆき乃さんを変えたのは間違いなく不死川さん。少しは不死川さんに甘えてもいいと思ってしまうわたしは、結局のところ、七海さんに甘えているんだって思う。
それでもそんなわたしを快く受け入れてくれる七海さんとの時間は、確実にわたしの中で無くてはない物と化されつつあった。
「建人さん、これは?」
家具売り場で大きなベッドを物色していたわたし達。ゆき乃さんの男切りが終わり次第、不死川さんとの新婚生活を始めるから、あのシェアハウスはわたしも出て行こうと思っている。その為、建人さんのマンションに引っ越す事で、家具を新調しに来ていた。
キングサイズの特大ベッドを指さすわたしに、クスッて笑う建人さん。
「まるでラブホテルのようだね」
「な!!違います。建人さんが身体大きいからそれに合わせて言ってるの!別にそんなつもりで選んだ訳じゃありません」
「はは、分かっているよ。怒った貴女も素敵です」
サラリと女が喜ぶ事を言う建人さんは、確信犯だと思う。付き合ってから少しづつだけどお互い素の部分を見せられるようになっていた。今日は休日ということもあって、いつもはガチガチに固めている七三分けも、ラフに下ろしている。ホワイトスーツも着ていなく、白シャツにデニムとう至って普通の格好なのに、めちゃくちゃ格好良い。だからすれ違う女がよく振り返って建人さんを見ているのが分かる。この人はそうやって人によく見られる人だった。
「もう…狡いですよ、そーゆうの」
クシャッとわたしの髪を優しく撫でると、建人さんの腕がそのまま肩に回された。
「ではベッドはこれに決めましょうか」
店員を呼んで注文する。今在庫が現物しかなく、別の店舗から取り寄せてくれるとの事で、2週間かかるって言われた。それで了承したわたし達は家具売り場を後にした。
「お腹空きましたか?」
「はい」
「ではあのお店に入りましょうか」
Hawaiiの直営店で人気のお店だった。当たり前に昼食待ちの行列ができているのが目に入る。食べたいのは山々だけどさすがにあの行列に並ぶのは億劫だなぁと思うわけで。
「少しここで待っててください」
「え?」
ニッコリ微笑んだ建人さんはお店の中に入って行ってしまった。でもすぐに戻ってくると、わたしの背中に手を掛けて「入りましょう。席を用意して貰ってますので」…な、なんだって!?