だからといって、じゃあ!とすぐに生活を変える事ができたら苦労はしないーー。
実弥との関係を泳がせているというのは表向き。どう進めばいいのか分からずにいる。
「いやそれ、ゆき乃さんも好きって言えばいいだけじゃないすか?」
「そんな事言えないよ、好きなんて…もう何年も言ってないもん!」
「あーじゃあ俺で練習します?恋人ごっこ。その代わり俺は貴女に好意を持って触れますけど」
「恵って本当に17?やっぱ歳誤魔化してない?」
「ゆき乃さんこそ、本当に三十路?もっと若いんじゃねぇの?」
「実年齢より若く見えなきゃ女じゃないわよ!三十路に見られてたまるか!」
17歳の高校生に恋愛相談しちゃってるあたし、ヤバイよね。でもなんでか恵は喋りやすくて、あたしの心の中をよく読む子だった。顔がいいからヤリモクだろうと思っていたけれど、手なんて出してこない。それはそれで新鮮でつい本音をポロリと零してしまったあたしに、そのままでいいって言ってくれたんだった。
「どーすんの?やります?」
「やる!!あたし、恵と恋人ごっこやります!」
「なら、はい、ぎゅー」
おうおう、今時の17歳は積極的じゃねぇか!そう思いながらも、ハグなんて慣れっこだ。相手が未成年というだけでちょっとだけ緊張した自分が可笑しかったなんて。
「あ、じゃあさハルの前でもそう見えるかちょっと付き合って?」
「ハル?」
「うん。一緒にシェアしてる会社の後輩。あの子今モテ期なんだよねぇ。でも本命は幼馴染のへっぽこ野郎なんだと思うんだよねぇ」
「ふっ、へっぽこ野郎?」
耳元を掠める恵の吐息が甘い。この子があと10年早く生まれていたら、恋に落ちていたかもしれない。でも今のあたしは実弥に恋してる。ぎゅうって恵の胸に顔を埋めると、なんだかいい匂いがする。あたしも香水つけるけど、この匂いはなんだか安心できる。ぐりぐりって顔を押し付けるあたしをぎゅうって抱きしめる恵は、童貞のくせに女慣れしてるよなぁ〜って思う。
「そうへっぽこ野郎。でもね、あたしはハルを好きになってくれてる人の方が幸せになれると思うんだよねぇ」
「なら俺がゆき乃さんのソイツより好きになったら俺を選んでくれます?」
そして恵はちょっと意地悪だ。顔がいいから許すけど。そんな選択肢…どーしろっていうの?
これも、あと10歳若かったら即イエスなんだろうと思うけど。久々にうまれたこの実弥への恋心を終わらせたくない。
「彼よりえっちもうまかったらね!」
「…自信ねぇ」
悔しそうに頬を膨らませる恵が可愛くてあたしはニコッと笑った。そう見るとやっぱり17歳かも…なんて。
こうして、あたしと恵の奇妙な恋人ごっこが静かに幕を開けた。