べっぴんな彼女

「さーねみっ!会いたかったよぉ!」

「ばかてめぇ、人前でくっつくなァ、たく」

クシャッて抱きつくと優しく撫でてくれる。見上げた実弥は照れながらもあたしの腰に腕を回していて。そうやって軽く身体のどこかに触れられるのって、好きだなぁ…なんて思わず笑みが零れた。

「ハルは、天元の後ろね!一応安全運転してよ?」

実弥と一緒に来てくれたのは、天元。公認の恋人が3人いるって天元はある意味すごい。恋人たちは独り占めしたいと思わないんだろうか?

「あたしなら嫌だなぁ」

「あァ?なんだァ?」

「自分の恋人にあたし以外の女が他にもいたら絶対嫌だなって思ったの」

視線の先の天元を見た実弥はポスッとあたしの頭を一撫ですると照れくさそうに続けた。

「俺はゆき乃以外は興味ねェ」

「うん。知ってる」

「そうかよ」

告白してくれてからの実弥は、あたしの前で大概素直になっているのか、こうして実弥の気持ちをよく伝えてくれる。それが凄く嬉しくて。実弥が素直になっているんだからあたしも…そう思えてきた。
ヘルメットをあたしに被せると、腰を抱いてそのままバイクの後部座席に抱き上げて乗せてくれた。

「しっかり捕まっとけよォ」

「うん」

実弥が前に乗ったから腰に腕を回してギュッと抱きつく。誰にも邪魔されずに堂々と抱きつけるバイクのニケツはいいかもなんて、柄にもなく浮かれた事を思った。

ハルを元気づける為に…なんて言いながらも、あたし自身が楽しんでしまう。
海沿いにある屋台を実弥の腕に絡まりながら見て歩く。なんだか夏の風物詩のお祭りみたいで、色んな所から醤油のこおばしい匂いがしてお腹も空いてきた。

「兄ちゃん!美人な彼女に1本どうだ!?」

イカ焼きを手に実弥を呼び止めたおっちゃん。ハルは天元がうまく言ってくれているようで、なんだかんだで楽しそうだった。
実弥はチラッとあたしを見ると「食うかァ?」そう聞く。だからコクッと頷くとそのままあたしの腕を引いてイカ焼きのテントに入った。

「んじゃ一つくれ」

「よっし、毎度あり!随分べっぴんだなぁ彼女」

「当たりめぇだァ」

まだ彼女じゃないけどね、なーんて思いながらも実弥がイカ焼きを受け取ってそれをそのままあたしの口の前に持ってくる。

「火傷すんなよ、熱いから」

「実弥が先に食べて?」

「味見かよ、たく」

大きなイカ焼きにかぶりつく実弥は、反対側の手であたしの腰にやっぱり触れていて。

「美味しい?」

「美味いぞ、食え」

今度こそ実弥があたしの口の前で腕を止めてくれているからそのままイカ焼きにかじり付いた。こーゆうところで食べると、普通の店で食べるより美味しいのって何でなんだろう。海風は正直ベタベタして髪もぐちゃぐちゃになっちゃうから苦手なんだけれど、…こうして海を感じるのは好きだ。

「ちょっと二人で歩かねぇかァ?」

イカ焼きを食べ終えたあたしに向かって実弥がそう言う。キョトンとしながら頷くと、「宇隨、悪いちょっとゆき乃連れてく!」天元にそう告げるとあたしの手をキュッと握りしめた。
後ろから「おー!」なんて天元の声が聞こえたけど、実弥の背中はなんというか、周りに誰も寄せ付けないような、そんなオーラをまとっていたなんて。