ナナバに連れられてヤミのテーブルから少し離れた所、常連の政治家エルヴィンと、大学病院の教授であるハンジのテーブルに席を置いた。二人の間に挟まれるように座ると「レイラ〜逢いたかったよ〜!」ハンジの腕が肩に伸びてきて頬にンチュってキスをされた。この人はたぶんどっちもいけちゃう人なのかもしれないと、内心思いつつ、私も逢いたかったです!と、微笑んでおく。
「賑わっているねレイラ。3号店の話は聞いたよ。私も微力ながら協力させて貰おう」
そしてこちらから頼みたい事もしっかりと相手から言ってくれちゃうエルヴィンは、キングオブ紳士だと思う。なかなかの高級シャンパンがテーブルには置かれていてとりあえず3人で乾杯をした。
「そうだレイラ!さっき藍沢にはコソッと教えたんだけど、マリアに入ってきた新人ちゃんが、凄い勢いで売上上げてるみたいで、ヒストリア付きのユミルがすんげー怒っててねぇ。なんか知ってる?」
先程同じことをヤミにも言われ、ハンジからも言われるって事は、相当のやり手なんだろうか。
マドラーで酒をくるりと混ぜる手が止まり、私は
「実は他の方からも軽く聞きまして。写真を見ましたけど私はヒストリアの方が好みです。でもそれなのに売上あげるなんて…」
「リヴァイから江戸川組の事は聞いたかい?」
「あ、はい。昨日お聞きしました。まさかそれと関連が?」
エルヴィンは、首を横に振って分からないが…と答えるも、なんとなく空気が重たくなった。
「実はこの後リヴァイの所に呼ばれていて…よかったらレイラも一緒にどうかな?」
トクンと胸が脈打つ。
リヴァイの所に?私も?…行きたいような、行きたくないような…マフィアのアジトに入ったら生きて帰って来れるのだろうか?
「ハハハハ、そんな不安そうな顔しないでよ〜レイラ!大丈夫だって、とって食いはしないから!ね?私も一緒だし!」
「ふふ、そうですね。一応五条にも伝えさせて貰っても良いですか?」
「いや。五条も一緒に来てもらった方が話が早い。私とアフターという事でどうかな?」
エルヴィンの申し出に私は頷く。たしか今日は五条オーナーはマリアの方に顔を出している。どの道閉店したら私の送りでこっちにも来るだろうし、後でLINEしておけばいいやと、この話はそれで終わった。
その後は何故かリヴァイの話になって…聞き流していいものか、受け止めた方がいいものか迷っている私は相当目が泳いでいたのか、エルヴィンが「そう悩むな」って言ってくれた。
それからまたヤミの所に戻って他の常連客の相手もして、気づけば今日もたんまり酒を食らってお店の閉店時間を迎えた。
「七海、私今日はエルヴィンさんとアフターに行ってそのままリヴァイさんの所に行く事になっているの。勿論五条オーナーも一緒に。だから悪いんだけど、藍沢の事マンションまで送り届けてくれない?リンの送りはジャンに頼んでおいたから!心配だからそのまま泊まって行って欲しいの、心配だから!私が帰れればいいけど、酒好きな人に囲まれて帰れる自信はないし。ね?」
ハルはすっかり眠り込んでしまった様で、まだ起きては来なかった。疲れも寝不足もあったのだろう。昼夜逆転した生活はわりと疲れる。
私が何も知らないと思っているんだろう七海は、スーツのネクタイを緩めながらも「承知しました」と律儀に頭を下げた。