お礼にアイス

「伏黒くん、アイス食べて行かない?ヘルメットのお礼にぜひ奢らせて欲しいなぁなんて」

本当はまだ帰りたくないって理由だけど、そんな事恥ずかしくて言えないからそう言うと私を見下ろして「じゃあ」スッと指を絡めた。
繋がれた指が熱くて、そこから私のドキドキが伝わっちゃうんじゃないかって思う。こんな風に伏黒くんから手を繋いでくれるのはすごく嬉しい。それに、あまりそんなイメージのない伏黒くんが、思いの外こうしてベタベタしてくれるのは、それまたギャップ萌えして毎度腰が砕けそうになるなんて。

ショッピングモールのサーティワンアイスクリームの前、「何がいい?」ガラスの中のアイスを指さしてそう聞く。

「あんま食べねぇしなんでもいい。あんたが好きなので選んでいい。俺は一口貰えれば満足だよ」

ポンって頭を撫でられた。

「やっぱりあんま食べないのかぁ。でもねこれ美味しいの、だから一口あげるね!」

カップにしようかコーンにしようか迷ってワッフルコーンにした。どうしてもコーンが食べたい気分だったし。
店員さんから受け取って外にあった椅子に先に座って待っていた伏黒くんの所へかけて行く。

「すげー色」

プッて笑う伏黒くんにムゥっとしながら私は一口それを食べた。ベリーベリーストロベリータルトと、チョップドチョコレートのスモールダブル。
口の中に冷たさとストロベリーの甘さが広がって思わず頬っぺたを手で包むと伏黒くんがまた笑ったんだ。

「幸せそ」

「だって美味しいもん!一口食べて」

スプーンでチョコレートアイスを掬って伏黒くんの口の前で止めた。ギョッと目を見開いた後、照れくさそうに顔を逸らした伏黒くん。数秒後に私の手首を掴まれてそれを自分の口に運んだ。
人生初のあーんは不発に終わったけど、人前だと恥じらいを持ってる伏黒くんは、それなりに可愛いなんて思えてしまう。
ここに2人きりだったら素直にあーんさせてくれたのか?と思うと、リベンジしたい訳で。

「甘っ…けどまぁ、うまい。たまにはいいな」

「でしょ!私と一緒なら食べられるでしょ?」

「あぁ。また来ようぜ」

「うん!」

食べ終えた私たちは駅へと向かった。
時間が経つのがこんなにも早いなんて…。
行き交う人混みの中、駅の改札前で大きな柱に背をつけて話す私と伏黒くん。
あー離れたくないな、もっと一緒にいたいな…
そう言いたいけど勇気がなくて。
伏黒くんの私を握る手にキュッと力がこもる。

「遅くなると危ねぇから」

そう言って手を離すとポンッて髪を撫でる。

「うん。今日はありがと。凄く楽しかった」

「俺もだ。着いたら連絡くれ、心配だから」

「ん」

そっと背中を押されて一歩前に出る。サラリーマンやOLに紛れて伏黒くんに手を降って駅の改札へと入ったんだ。