悔しさが嬉しさに変わる時

だから止めないとって私も追いかけた。後ろから野薔薇と虎杖くんも一緒に着いてきてくれてーー

ドッカン!!!!
なんとも言えぬ音と共に廊下に吹っ飛んできた2年の金髪。
馬乗りになって伏黒くんが一発殴りつけると口端が切れたのか、血が吹き出した。返り血を浴びた伏黒くんが、金髪の髪を掴んで顔を寄せる。

「二度と俺の女に文句垂れんじゃねぇぞ。次言ったら殺すからな」

ダンって叩きつけるように髪を離した。
静まり返った廊下に伏黒くんが私に気づくけどそのままスッと横を通り過ぎていく。

「大丈夫、俺に任せて」

虎杖くんがそう言ってくれたけど、どうしたらいいのか分からなくて。
私なんかのせいで伏黒くんが退学になったらどうしよう?って思うと、胸が痛くて涙が溢れそうになってしまう。

「ふは、やるじゃん伏黒!」

「野薔薇ぁ…笑い事じゃないよぉ。伏黒くんが退学になったらどーしよう」

「は?なる訳ねぇだろ。悪いのは2年なんだから。安心しろ、あたしも援護してやるから!」

そう言うけど、全然笑えないし安心もできなくて。
しばらくして五条先生に呼ばれた私はなんとか伏黒くんを退学にしないで下さい!って何度も何度もお願いした。


「ま〜理由が理由だけに、3日間の謹慎処分で手を打ったよ。よかったね、彼氏がかっこよくて」

五条先生がニッコリと笑ってそう言ってくれたから泣いて喜んだんだ。

「若いっていいね〜」

笑顔で手を振る五条先生を背に、保健室で手当を受けてるっていう伏黒くんの所まで走った。途中で七海先生に「廊下を走らないように」って怒られたけど、「ごめんなさぁーい!」って叫んで走り抜けた。

ガラリとドアを開けると伏黒くんが目に入る。
てゆうか伏黒くんしかそこに居なくて…
無言で私に背中を向ける伏黒くんに、後ろからそっと抱きついた。

「なん、だよ」

ぶっきらぼうな彼の声に私は更に強く伏黒くんのウエストに腕を回す。

「無茶苦茶だよ伏黒くん…ーーでも嬉しかった。すごく嬉しかったよぉ」

だって悔しかった。大したことねぇなんて言われて。そりゃ野薔薇みたいな美人じゃないし、誰もが振り向く可愛い子でもない。でもそれでもそんな私を伏黒くんは選んでくれたのに、あんな風に言われて悔しかったんだ。

「ったりめぇだろ。てゆうかちゃんと言って俺に。またなんか言われたりしたら。さすがにもう殴りはしねぇけど、名前を傷つける奴は俺が絶対に許さねぇから」

そっと私の手に伏黒くんの手が重なった。だから急にドキッとして、「顔が見たい」そんな事言われてくるりと反転する伏黒くん。私の腰に腕を回して閉じ込められるような格好でピタっとおデコをくっつけた。

「伏黒くん…」

「誰がなんて言おうと、俺は名前が一番だから」

モヤモヤしていた心がスーッと消えてゆく。
ゆっくりと近づく伏黒くんが、触れる寸前で一度止まった。だから目を開けると目が合って…

「オープンスケベ上等だ」

思わず笑った私の口に甘ったるい舌を絡ませたーー
初めての大人キスにやっぱり腰が抜けそうになるなんて。