何だか右手が温かい…。
パチっと目を開けると視界に入る天井。
どうしたんだっけ?私…ーー投げ出された右手を辿れば、ギュッと握っている「伏黒くん…」俯いていた顔を起こした。
小さく息を吐き出すと「大丈夫か?」心配そうな顔。
そんな顔も、するんだね。
「もしかして、倒れた?」
「あぁ。体育の前。釘崎が大慌てで俺の教室に飛び込んできて、…ぶん殴られた、」
苦笑いする伏黒くんは、口端がほんの少し赤くなっている。まさか本気で殴るなんて、野薔薇らしいというかなんというか。
「悪かった」
だからそう続いた伏黒くんの言葉に、野薔薇が私の気持ちを代弁してくれたんだというのが分かった。
伏し目がちだった伏黒くんは、無言の私にまた小さく聞く。
「怒ってんだろ?」
「………」
一週間ぶりの彼氏。ちゃんと話したいのになんだかうまく言葉が出てこなくて、ただ首を横にフルしかできずにいる。あんなに逢いたいと思っていたのに、いざ本人目の前にすると、こんなにも言葉が出てきてくれないなんて。てゆうか、なんか声を出したら泣いてしまいそうだった。だから代わりに包み込まれている手で伏黒くんのそれに指を絡めた。
本当はこうして手を繋ぎたかったの。
「一緒に帰れないっつったのは、その、校則違反でバイク乗ってるから。バレたらお前に迷惑かかると思って。…んでなんか俺も女と付き合った事ねぇし、どーすりゃいいのか分からなくて。LINEの返事も来ねぇしマジ嫌われたんだって思って、なんもできなかった」
目の前で耳まで赤くして胸の内を吐き出すこの人は本当に伏黒恵なんだろうか?
そして、そんな顔を見せてまで私に気持ちを伝えてくれた伏黒くんに、私は黙ったままでいいのだろうか?きっとここで何も言わなかったら今度は私が野薔薇に殴られるよね。せっかく野薔薇が2人で話すチャンスを作ってくれたのに、これを無駄にする程馬鹿じゃない。
もう泣いたっていい、自分の気持ちを伝える!!
「私こそ、嫌われてるのかなって思って。一緒に帰れない理由を聞くことも怖くて。本当は伏黒くん、私の事好きでもないのに無理に付き合ってくれてるから、あんまり目立つことはしたくないのかなとか、色々よくない方にしか考えられなくて…ーーでも何か言ったらもっと嫌われる、別れようって言われる…って、そう思って…でも、イヤ。もっと伏黒くんと2人で色々したいよ、私」
ポロリと頬を涙がつたう。それを見て伏黒くんがほんのり眉毛を下げた。
「嫌わねぇし、別れねぇよ。それと、無理に付き合ってもねぇから」
嬉しくて、嬉しくて、結局また涙が溢れてしまう。