思い出の一ページ

モヤモヤしていた気持ちをお互いに伝えあって、お互いが同じ気持ちだった私たちは、初めてのキスをした。頭も身体もふわふわしてしまう。

「マジで大丈夫?今日ぐらい送るよ」

「でもそれだと伏黒くんがバイク乗れないし」

「まぁいいよそれは。置いてく。知り合いの家に置かせて貰ってるだけだし、その…またあんたが倒れたらって思うとそっちのが俺的には困るっつーか…」

頬をポリポリ指でかきつつも、視線を逸らしている伏黒くん。もしかして、その仕草って照れてる時にやるのかな?
顔ごとそっぽ向いてる伏黒くんを下から見つめるとポスッて大きな手が私の頭に乗っかってわざと顔を背けさせた。

「今見んな」

「照れてる?」

「照れてねぇ」

私が見えないようにって横向きにされた頭から降りてきた伏黒くんの手が、不意に私の指とほんのり触れ合った。ドクンと心臓が脈打つ。一度離れた手と会話の消えた私たち。ドクドクと心音が爆音を鳴らしているのが分かる。
ここは廊下で教室に戻るまでのほんのわずかな2人きり。だから手を繋ぐことなんてないのに、

…ーー一度離れた指が、不意に触れ合って、伏黒くんの小指が私の小指と絡み合ったんだ。

こ、小指繋ぎ…!?なにこれ、ドキドキしすぎて口から心臓出そうっ!!
カァーって自分が真っ赤になっているのが分かる。顔が熱くて身体中の血液が集まっているんだって。でもそれは私だけじゃなくて伏黒くんも同じで。
逸らした顔は見えないけれど、横を向いた耳は真っ赤に染っている。

「あの角までだ」

「うん」

「それと、帰りは俺が迎えに行く。あんたは教室にいろよ」

「うん」

夢だった。
彼氏に教室まで迎えに来て貰うことが。そんなの誰にも話したことはないけれど、高校に入って彼氏ができたら、迎えに来てもらって一緒に帰る、そんな事をずっと夢見てた。

伏黒くんは、そんな私の小さな夢を沢山叶えてくれるんだと思うと嬉しくて堪らない。
ほんの少しの道のり。交わした言葉は少なかったけれど、私にとって素敵な思い出の一ページになった。

言われた通り廊下の角を曲がる寸前、伏黒くんの小指がそっと離れた。小指が熱を持っているみたいに熱くて胸がぎゅっと痛い。
クシャッと私の髪を撫でると、伏黒くんはそのまま自分のクラスに入って行った。
さっきまでの自分が嘘のように明るくなっていた。
私もルンルンでクラスに戻ると「名前〜大丈夫だった!?」野薔薇が抱きついてきた。

「野薔薇〜ありがとおっ!!」

「ちょっ、なんだよ?あ〜もしかして、伏黒と仲直りした?」

「喧嘩なんてしてないもん!ふふ、でも野薔薇のお陰、ありがとう!」

持つべきものは、信頼出来る友達。
放課後が楽しみで仕方なくなった。