真っ直ぐな真実

HR終了の鐘が鳴ると生徒たちは一斉にそれぞれの場所に散らばった。
野薔薇はバイトがあるって颯爽と帰って行ったから私はここでゆっくりと帰り支度をしながら伏黒くんを待っている。
妙に落ち着きがなくソワソワしてしまう。制服は着崩してないか、スカートの皺は曲がってないか、手鏡片手に色付きのリップを塗り終えて鞄に仕舞うと「おい、」真横で止まった伏黒くん。いつの間にか教室に入ってきていたらしい。

「わ、吃驚した」

「具合はどうだ?」

「あ、うん。もう平気」

「んじゃ行くぞ」

「うん」

このクラスに似つかわしくない伏黒くんの姿に、まだ教室に残っていた数名が目をまん丸くして見ている。あの二人、付き合ってんの?え?嘘でしょ?…なんて、小声で言ってるつもりかもしれないけど聞こえてしまって。たまたま伏黒くんと目が合う。
すぐに逸らされるけど、それでも長身で足の長い伏黒くんは、私の歩くペースに合わせてゆっくりと歩いてくれていた。めちゃくちゃ無愛想な顔してるのに、なんだか可笑しい。ついフフフって笑うとすぐに視線が飛んでくる。

「なんだよ?」

不機嫌そうな声に、また笑う。

「伏黒くんって、顔に似合わず優しいよね」

「は?どういう意味?」

「色々。…クラスの子に見られちゃったから明日には噂になってるのかなぁ」

女子というのは噂好きな生き物だ。今日見た事は、明日には尾ビレがついて出回ってそうだなと。

「嘘じゃないから構わない。誰にどう言われても俺は相手があんたならそれでいい」

そこまで言うと足を止めて振り返った。よく見ると、こちらに左手を差し出している。ここは廊下で人数は少ない。少ないからと言ってゼロではない。各教室にはまだ残っている生徒もいる。
こんな所で繋いでいいの?そんな私の考えを打ち消すように、自分の横にブランとしていた私の右手を迎えに来てくれる。
大きな温かい手に包まれてまた全神経、全血液が顔に集まってくるみたいに熱かった。
キュッと力を込めて握ると心無しか、伏黒くんも握り返してくれた。

「伏黒くん…好き」

なんの前触れもなく、自然と口を継いで出てきた言葉だった。感情が溢れて好きと声にしてしまった事に驚きはしたけれど、嘘はない。
言われた伏黒くんは、ほんの一瞬目を見開いた後、安定の赤面。耳まで真っ赤になって顔ごと逸らすけど、小さく呟いたんだ。

「あんたの口からやっと聞けた」

…私ってば肝心な言葉伝えてなかったかも。さっき保健室でキスをした時に伏黒くんは言ってくれて死ぬ程嬉しかったのをまだ覚えている。同じように喜んでくれているんだと思うとやっぱり嬉しくて恥ずかしくて、なんとも言えない気持ちになった。