そんなに遠くはないからって、駅まで歩いて行く事にした。バスは駅に行く人が沢山乗るだろうし、変に冷やかされるぐらいならって。それに、2人でなんか話とかしたいし…なんて思ってたんだけど。
「………」
「………」
え、やばい、沈黙。
こーゆー時なに話せばいいの!?分かんない…。
沈黙が怖くて何か話題を見つけようと脳内を目一杯活発にさせていたら、「危ねぇ!」伏黒くんに腕を引き寄せられた。
え?…サーッと横を車が通り過ぎて行く。
「よそ見してんなよ、危ねぇ」
「ご、ごめん!なんか静かになっちゃったから何話そう?って話題探してたら…」
つい本音を口にしてしまったものの、途中からめちゃくちゃ恥ずかしくなって、語尾はほとんど消えていた。
だけどそんな私を見て伏黒くんはフッて笑うと、掴んでいた手をキュッと握る。それからおもむろに指を間に絡めて繋ぎ直す。
「これなら安心だな」
「…うん」
「…あんたも駅からバス乗ってんの?」
「え?あ、うん。毎日ぎゅうぎゅう」
「じゃあ明日から俺迎えに行くよ。裏道走ってくから、乗るよな?」
「乗ったことないんだけど、すぐ乗れるもんなの?」
「たぶん。言っとくが、女乗せんの初めてだからな!」
「初めての、女?」
チラリと視線を向けると、バッて顔を背けられる。耳がほんのり赤く染まっているから照れてるんだって分かった。
「馬鹿か、」
「伏黒くんが言ったんだよ〜。でも嬉しいな、初めてが私で」
できれば、最初で最後の…なんて思ったけどさすがに恥ずかしくてそれは言えなかった。
言えなかったけど、伏黒くんを見上げると目が合って、「ばーか」ってまたそっぽを向かれた。
もしかして、同じこと思ってくれたのかな?なんてちょっとだけ自惚れたくなったなんて。
「でもさ、バイクって校則違反だよね?バレたら、停学?さすがに退学にはならないよねぇ」
「バレねぇ、安心しろ」
なんだその自信は!って笑う私を見て、伏黒くんも優しく微笑んでいる。
その笑顔、額に入れてしまっておきたい、なぁんて。
気まずくなりそうだった空気も伏黒くんのお陰で全然大丈夫で、お店に着くまで2人で話す時間はめちゃくちゃ楽しかった。
「着いた。ここ」
色とりどりのヘルメットが沢山並んでいる棚に着くと伏黒くんは私の顔をまじまじと見つめる。ヘルメットと合わせているんだろうけど、そうやって見られるとただ恥ずかしくて…無言になった私を見て「気に入らねぇ?」なんて言葉が飛んできた。
「まさか!あ、これ可愛い」
指差したのはピンク色のヘルメット。花の模様が入っていてお洒落。伏黒くんはそれを手に取ると、私にスポッと被せた。
「…まぁ似合ってる。これにする?」
「うん」
「了解。んじゃちょっと待ってろ」
それだけ持つと伏黒くんはレジに歩いていく。その後ろ姿を見ていると、今更ながらヘルメットを被せられた時のドキドキが蘇ってくるなんて。