無意味な抵抗

「リヴァイ室長、訂正終わりました。チェックお願いします。」

先程言われた事に加えて自分で気になった所も少し訂正を入れた書類を渡すとリヴァイ室長はその場でそれに目を通す。パーッと流して見ただけでもこの人はきっと頭に入っているんだろうなぁと思う。一度見た事は覚えるような、そんな頭脳を持ち合わせている。
だから仕事においてこの人は完璧を求めているけど、恋愛はその分下手くそなんだろうって勝手に思ってる。
確かに顔は申し分ないぐらいに美しくて品もある。おまけに仕事もできるとなれば女が寄ってこないわけが無い。自分がどれだけ人気があるかも分かってそうだしそれについても否定はしなさそう。
でもきっとこんな完璧なオトコと付き合える女は疲れてしまうんじゃないだろうか。彼に合わせようと頑張りすぎて…ーーそう思うと、私にさえ合わせてくれるんであろうアルミンは相当可愛い。だからと言って、童貞捨てたかっただけのアルミンと今は無駄にセフレしちゃってるけど、アルミンの為を思うならもうこんなのは止めた方がいいのかもしれない。
でも、私にギュッとしがみつくアルミンはたまらなく可愛くて、なかなか手放しがたい。結局のところ、アルミンに対して本気で好きなわけでもないのに、自分の手の届く場所に置いておきたいなんて私って最低。

「イ、オイ、名前!!てめぇボケッとしてんじゃねぇぞ!どこ見てやがる!」
「あ、すいません。ちょっと考え事を。」
「どーせくだらねぇことだろ。」

むぅ。
半分はリヴァイ室長のこと考えてたのに、その言い草にほんの少しイラっとする。だからジロっとリヴァイ室長を睨むと、眉間に皺を寄せた室長に睨み返された。

「ガキが、調子にのりやがって。また塞ぐぞ?」

秒でなんの事か分かったのは、その事について考えていたからで。目を見開く私を見てリヴァイ室長はフッて笑うんだ。怒ったり笑ったり表情自体はさほど動いてないというのに、この人の感情が動くのが手に取るように分かった。

「セ、セクハラですよ!!」

悔しいからそう言ってやると、余裕の表情のリヴァイ室長は椅子の背もたれから身体を前に倒して私を覗き込むようにして顔を寄せた。ドクドク心臓が蠢いているのが分かる。身体中の血液が顔に集中していくようだ。
そしてリヴァイ室長は私の髪の毛の先を指先でもて遊ぶようにくるりとすると、静かに言ったんだ。

「キスに答えたくせに無意味なこと言ってんな、ガキが。」

ニヤリと口端を緩めたリヴァイ室長は、触れそうで触れないその距離で私を真っ直ぐに見つめると「今日はもう上がれ。明日遅刻すんなよ!」ポンポンって、さっきアルミンがしたくれたように頭を軽く撫でるとスッと音もなく立ち上がった。
その後ろ姿を見つめる私の心臓は自分でも笑えるくらいに爆音を鳴らしているなんて。

同時に聞こえる危険音。
この人は危険だと脳が全身に司令を出している。
こんな大人のオトコに捕まったら二度とアルミンじゃ満足できなくなってしまうと。
そんな事、絶対に許されないと。

明日から二人きりで出張だから余裕なのか、はたまた仕事は仕事でやるから特段何も考えていないのか、それとも…心の奥を隠しているのか、私には何も分からなかった。