精一杯の愛してる
鏡を見ると、アルミンに愛された痕が首に着いていた。でもそれを気づかないフリをしてみる。そしてこの首を明日はリヴァイ室長に見せつけてやろうなんて思っていた。そんなの見せたところでリヴァイ室長が妬くはずなんてないというのに…。
「名前、こっちおいで。」
お風呂場でシた後、アルミンの作ったご飯を食べて、今はベッドの中。明日の為にって今日は早く寝ようってアルミンが私をギュッと抱きしめている。
会社で頭使って、アルミンと体力使って、かなり疲れているせいか既にもう眠くて、すぐにでも眠れそう。
ふわりとアルミンの方を向くと優しいブルーアイが見つめている。無言でアルミンを見返していると「一つだけ、言わせてくれる?」そんなアルミンの言葉。
眠くて眠くて、声も出さずにコクリと頷いた私をアルミンは一度ギュッと抱きしめると、ゆっくりと距離を作って視線が合うようにした。
ウトウトしながらもアルミンを見つめる私に、小さくでもハッキリと言ったんだ。
「名前が好きだよ僕。誰にも渡したくない、誰にも。名前はさ、僕が童貞の可哀想な奴…って思ってあの日誘ってくれたのかもしれないけど、僕は名前が好きだったから誘いに答えた。どうしても名前と繋がりたかったんだ。…最低だって分かってる。汚いよね、僕。でもどんな手を使ってでも僕は名前を手に入れたかった。好きだから。…こんな関係になっておいて今更だけど、どうしても名前を誰にも渡したくない。僕だけの名前になって欲しいんだ。…ダメかな?」
トクンと胸が脈打つ。眠気がちょっと覚めたじゃん。
え、これって告白?本気?…見るにアルミンが冗談を言っているようには見えなくて。そもそもアルミンがこんな冗談を言うわけがなかった。…てことは。
「えっと、それって、本気だよね?アルミンは私と付き合いたいって事だよね?今のセフレみたいな状態じゃなくて恋人として、」
「うん、そう。僕は名前の恋人になりたい。名前に僕を好きになって欲しい。…分かってるよ、名前が僕を好きでこうしてる訳じゃないって。今すぐにも無理だって分かってる。けど僕のこと、考えて欲しいし、僕以外の男とは、二人で会わせたくなくて。」
なんとなく、アルミンの言う他の男が、リヴァイ室長の事のような気がした。初めてリヴァイ室長に車で送って貰ったあの日のアルミンはちょっと甘えたで。2回目にリヴァイ室長に送って貰ったあのキスの後、アルミンはなんとなく私の目を見なくて…
「アルミン、もしかしてリヴァイ室長にキスされたの、見てた?」
私の言葉にアルミンの目が大きく動揺を見せた。だからああそうかと。確かにあんな場面を見せられたら誰でも焦るよな。
それならアルミンがこうして行動に移している意味が分かる。もしも自分がアルミンの立ち位置だったのなら私もきっと同じように想いを伝えるんだろうと。
ーーそれぐらい、リヴァイ室長は危険だと判断したんだろうと。
「うん、ごめん。名前は、リヴァイ室長のこと、その、気になっているの?」
遠慮がちなアルミンの問いかけ。
なんて答えればいいのだろう?気になっているとも言えない。でも、関係ないとも言いきれない。
「住む世界が違うよ、リヴァイ室長と私たちは。アルミン私、アルミンの事もっと知ってアルミンを好きになる。だから待ってて欲しい。それじゃダメかな?」
「ううううん、全然いいよ!むしろ、勿体ないくらいだよ。僕名前に好きになって貰えるように頑張るから、だからそれまでこーいう事はもうしない。今夜が最後にする。名前が僕を受け入れてくれる時がきたら、その時は思いっきり愛してあげる。」
本音じゃない訳じゃない。でも今はこれが精一杯だと思った。アルミンの精一杯の気持ちをこれ以上無碍になんてできやしない。
「好きだよ、名前。…愛してる。」
甘く小さなキスを落とすアルミンは、翌朝起きたらもう私の部屋にはいなかった。
朝食だけがきちんと作られてあって、そこにアルミンがいた形跡が全部無くなっていて、無性に寂しくなったなんて。
この寂しさ、耐えられるのだろうか?