モヤモヤの正体

女に不自由したことは一度もなかった。
最も手に入れたいと思う程のそれに出会った事もただの一度もない。適当に付き合って別れてを繰り返しているうちに、女との付き合いなんてこんなものだと頭の中で決め込んでいた。そこに感情なんてなくて、このままこーゆう付き合いを繰り返すんだと思っていたんだ、アイツに出逢うまでは。



「もう泣くな、」

そう言って腕に閉じ込めたコイツをさも愛おしく思えるなんて、俺は一体どうしちまったんだろうか。顔をぐしゃぐしゃに崩して化粧で目の周りが真っ黒になっても尚、苦しそうに泣きじゃくるコイツを、それでもどうにかしてやりたくてずっとこの腕に抱きしめていた。

「あまっ、かっ、なっで、」

いや、何言ってるか分かんねぇし。言葉を発してるつもりだろーが、涙で混ざってなんつってるのかさっぱり分からねぇ。でも、不謹慎ながらもそんなコイツが今の俺にはどーしようもなく可愛く見えちまってる。ポンポンと、子供をあやすように背中を叩くと「うー、」ってまた苦しそうな声をあげた。

「お前、そんなに悩んでたのか?」

少し落ち着いてきた頃を見計らって小さく聞くとバシンと胸元を力いっぱい叩かれる。まぁ、んなもん痛くも痒くもねぇが。
真っ赤な顔で、真っ赤な目で「当たり前です!!」漸く言葉を話せるようになったコイツの頬を指で撫でると、余計に愛おしさが込み上げた。距離が近いことをいい事に、スッと近づいてその塩っぱめの唇に自分のを押し付けると「バカぁ、」なんて言いながらも、拒否はされなくて。無言でキスを深める俺に答えるように舌を絡ませると、「ンッ、」小さく吐息を漏らしてギュッとスーツの袖にしがみついてきた。秘かに、堪んねぇなぁなんて思いながらも名前を強く抱きしめて舌を存分に絡めると「ンっ、リヴァイ室長ォッ、待って、」弱々しく胸を叩くけど、んなこた気にしねぇで更に唇をハムッて舌を出し入れすると、なんとも言えねぇ声が名前から溢れた。

「…待ってよ、室長、ズルいです、キスするの。」

真っ赤な潤んだ目でんなこと言われてもなぁ。余計に煽ってるって言ってやりてぇが、さすがにこれ以上抱きしめてっと、ここでヤルはめになりそうだからいったん名前を解放してやった。
肩を大きく揺らしてジロッと俺を睨むが、そんなの怖くもなんともなくて。

「好きだろ、俺にキスされんの。」

そう言うと、余計に睨まれてる。

「そういう問題じゃないです。リヴァイ室長は誰にでもキスするんですか?」
「する訳ねぇだろ、クソが。」
「じゃあなんで私にはするの?」
「…してぇと思ったからだ。隙だらけだぞお前。そんなんじゃ俺以外からもされんぞ?」
「そんな事ないもん!!リヴァイ室長しかしないもん!!」
「ほう。」
「もう!そうやってはぐらかさないで下さいよ。リヴァイ室長、どうして?答えてください、」

ぎゅっと俺のスーツをやっぱり握りしめてる名前は残念なくらいに可愛い。そして、できるのなら答えを言ってやりてぇが、正直なところ、俺自身もよく分かってねぇんだ。このモヤモヤしたもんに名前をつけるとしたら、…「アルミンと別れろよ、んで俺んとこ来い。」…恋、なんだと思う。