LIKEとLOVEの違い
泣き出しそうだった空から漸く降り出した雨。
残業をするつもりもなかったけれど、何となく家に帰るのが億劫で。あんなにアルミンに会いたいと思っていたはずの心は、少しばかりザワついていた。
「名前、どうかした?」
「え?どうかって?」
「何となく元気がない。…よければ聞くけど?」
同期のミカサが私の顔を覗き込んで心配そうな顔。そういえばミカサと2人で話すこともリヴァイ班に来てからはほとんどなかったなと思う。前はよくアルミンとエレンも一緒に飲みにも行ってたのに。
「うんじゃあ、少しだけ。」
パソコンを消した私はミカサを連れ立って駅から少し歩いた所にある飲み屋に移動した。
「え、あのチビと!?そんなのアルミンのがいいに決まってる。選ぶ余地もない、名前。」
たはは。まぁミカサは絶対そう言うだろーと思ったけど。アルミンと身体の関係がある事と、リヴァイ室長とキスしたって肝心な所は言わずに、2人のことを少しだけ気になっている…なんて曖昧なニュアンスでミカサに伝えた。
アルミンと幼馴染だっていうミカサは当たり前にアルミンを押してきた。
だけれど、アルミンに対して、好きとか愛しいとかそういう気持ちがあるにはあるけれど、きっとこれはLikeだ。
友達として…人として、私はアルミンの事が好きだ。
でも、リヴァイ室長に関しては…
「あ、ごめんエレンからだ。」
ボーッとしていた私を前にスマホの着信にミカサはそっと席を外した。
飲み屋の外は雨がめちゃくちゃ降っていてそれをガラス越しに見ていた私はふと向かいに座る一人の男に目がいった。…いや、目が合ったんだ。
なんとなく、生理的に受け付けないタイプのその男は、私と目が合うとニヤリと口端を緩めた。
それはなんというか、ゾクッとするような感覚だった。
「ごめん名前。エレンが酔っ払ってて迎えに来いって。また埋め合わせする!ほんとにごめん!」
有無を言わさずエレンの元へ行くミカサはそう、エレンにLoveの感情を持っているんだと。私もあんな風に一人の人の言葉に一喜一憂する日が来るのだろうか。
ミカサのパワーに押されて手を振る私を、また向かいの男が見ていた。
仕方なく一人で飲み続けていたものの、チラチラと視線を向ける度に目が合うその男がこちらに出向いて来る事は無さそうだった。
とりあえずはホッとして帰ろうと思い、会計に向かった私の後を、まさか男も着いてきているとは思わず、外へ出た私の背後からお店のドアが開く音がして振り返ると、その男が私を見つけてまたニヤリと厭らしく笑うんだ。
途端に恐怖にかられて暗闇の中、駅までを歩く。
運良く人通りの多い道だったから一人になる事はなかったけれど、それでも私が立ち止まればその男も立ち止まり、歩き出せば同じように後ろを着いてきているのが分かった。
絶対につけられてる。なんで!?
急に怖くなって私はスマホの電話帳で目に入ったリヴァイ室長の名前で通話ボタンを押した。
お願い、出て…!!
数コールならしても出なくて、なんなら男がゆっくりとこちらに近づいてきたから慌てて電話を切ってもう一度かけ直す!
お願い、出て、出て、ーーーー
【どうした?】
聞こえた声に涙が溢れた。