ずるい人
翌日、朝一で着替えを取りに車で送ってもらった。
「足りないものは買えばいい。帰りに買い物付き合ってやるから」
ポンと、リヴァイ室長の温かい手が私の頭を撫でるからまた甘えてコクリと頷いた。
素直な私を見て満足気に表情を明るくするリヴァイ室長にすら、胸の奥がトクンと脈打つ。
元々早く出社していた為、朝早くリヴァイ室長と一緒に出社しても特段誰かに見られる事はなかった。
その日は一日中リヴァイ室長の機嫌がいいってリヴァイ班のみんなが言ってた事は聞き流して無心で仕事をした。
「名前、そろそろ帰るか」
ポンと肩に手を置かれて振り返ると、既にスーツの上着を羽織った室長がいて、時計の針を見ると定時を少し過ぎただけだった。こんなに早く室長が帰ることなんて今までただの一度もない。だからみんなが吃驚している。ついでに言うなら私の所にこうして来ているリヴァイ室長に対しても何やら無言の視線が飛ばされている。…気がする。
「早すぎませんか?」そう言いかけた私に「買い物に付き合え、」と一言。
そう言うが、私の腕を取って立ち上がらせると、そのまま肩に腕を回して「行くぞ」有無を言わさずリヴァイ室長に連れ出された。
「室長って、見かけに寄らず、大胆ですね」
「あぁ?嫌、だったか?」
「違う。本気で私の事守ってくれるんだって、嬉しいです」
「男に二言はねぇからな」
どうしよう…。この人はきっと本気だ。このまま甘えていていいのだろうか?というか、このまま一緒にいたら未来は見えてしまいそうで、それでもこの温もりを離したくないなんて思っている時点で私の脳内はリヴァイ室長のものになってしまうのだろうか。
◆
「…あの下着とか買ってもいいですか?」
「構わねぇ。一緒に入るか?」
「なっ!!入りませんよ」
「はっ。ならそこで待ってる。ゆっくり選べよ。ちなみに俺の好みは、」
「聞いてません!!もうっ、」
なんだかペースを乱されていない?
少し離れた場所にある備え付けのソファーに移動したリヴァイ室長は、大股開いてそこに座ると何をするでもなくただ静かに黙ってそこで待っててくれている。
あのまま自分の家に帰ったら、あの恐怖を思い出してとてもじゃないけど一人ではいられないと思う。たかが男の人に後をつけられただけかもしれない。それでもそんな体験した事もなかった私はやっぱりまだ恐怖は消えない。安全だと思えない。でもそこにリヴァイ室長がいてくれると分かっているなら、やっぱり安心できてしまう。
いとろりどりの下着を見て先程のリヴァイ室長の言葉を思い出す。それと同時にアルミンは下着に手をかける時必ず「可愛いね、名前に良く似合ってる」なんて甘ったるい台詞を口にしていた。
あの時、どうして自分がアルミンではなくリヴァイ室長に電話をかけたのだろうか。
確かにたまたま開いた所にあったのはリヴァイ室長の名前で、考える事すらせずに私は通話ボタンを押していた。恋人に一番近い距離にいるのは紛れもなくアルミンの方だというのに。
こんな時、アルミンだったらどうやって守ってくれたのだろう?考えても仕方のない事ばかりが頭に浮かぶ。
「オイ名前。大丈夫か?」
「え?室長?」
ハッとして聞こえた声に我に返る。試着室で一人ずっと考え込んでいた私を心配してか、急に扉の向こうから聞こえたリヴァイ室長の声にドキンと胸が高鳴る。
「開けるぞ、」
「え、ちょっと!」
「大丈夫だ、俺しかいねぇ」
「いやそーいう問題じゃ、」
ガチャッと扉を開けて何故か中に入ってきたリヴァイ室長。
狭い試着室の中、リヴァイ室長がブラジャー姿の私をまじまじと見ている。なに、この展開!
「ほう、悪くねぇ。特別に教えてやる。俺の好みは白だ。今お前がつけている、白だ」
耳元で囁くように言うからリヴァイ室長の吐息がかかって身体が疼く。
「可愛いじゃねぇか。」
肩紐をパンッて摘むリヴァイ室長は、指で紐を軽くズラすと、そこに小さくキスを落とす。途端に私の体は電気が走ったみたいに反応をして「ンッ、」危うく口を継いで出た声に手で口を押さえた。
「そうだ。声を出すとバレちまうから黙ってろ」
ツーっと舌で肩を緩く舐めたリヴァイ室長は、ゆっくりとブラをズラして見え隠れする私の胸の突起を舌でひと舐めする。
「ンンンッ、だめ、」
顔を埋めるように胸元に舌を絡ませるリヴァイ室長に足がガクガクと震える。倒れそうになる私を左手一本で支えるリヴァイ室長は、数秒かけて私の胸をピンク色に染め上げた。
「名前…」
甘く名前を呼ばれて視線を絡ませると、リヴァイ室長の熱い炎を纏った瞳と目が合う。自然と私の腕はリヴァイ室長の肩を通って首の後ろで交差する。
「ずるい人…」
狭い試着室の中、耳に入るのはリヴァイ室長の熱い吐息と、私たち二人の舌が絡まり合う甘い音だけーー…
NEXT〜