苦手なオトコ

「オイ、これチェックしたの誰だ!?」

できれば庶務とか総務とかその手の部署に配属されたかったんだけれど、残念ながら半年の研修期間を経て配属されたのは社の花形とも言われている企画課。
全ての企画がここで生まれてそれを社内コンペでお披露目して通れば営業がそれを持って色んな所に新規開拓にいくっていう超絶忙しい部署。
そしてこの超絶忙しい部署の責任者でもあるリヴァイ・アッカーマン室長が率いる通称リヴァイ班に何故か配属された私は、一日目から地獄のような日々を過ごしていた。定時で帰れた研修期間の事なんてもう忘れてたぐらいに毎日終電で帰る日々をここ1ヶ月繰り返していて、そりゃミスもするわって目の下に大きなクマを作りながらも仕方なく手を挙げた。

「リヴァイ室長、私です。」

あまりに小さな声だったのか、顔をこちらに向けたものの一瞬私を通り過ぎたリヴァイ室長の視線は次の瞬間確実に戻ってきて「クソガキ、またお前か。一体どこに目ぇつけてやがんだ。」怒りを吐き捨てる如くそう言い、チッとお決まりの舌打ちをすると「今すぐデータ俺に送れ!最初から全部目を通す!」なんて超面倒な事をそれでも引き受けてくれる。

「申し訳ありません!すぐに!!」

言いながらも手を動かしてデスクトップにあった資料をすぐ様メールでリヴァイ室長宛に添付して送り付けた。
思いっきり禁煙の社内でリヴァイ室長はデスクに置いてあった煙草を咥えると迷うことなくそれに火をつける。
ここでは室長が絶対の権限を持っているから誰も何も言えない。残念なことに私はリヴァイ室長をイラつかせる天才の様だ。こうして禁煙の社内で彼に煙草を咥えさせたのは一度や二度ではなかった。
確かにリヴァイ室長は頭が切れるし発想も豊かで、更には人の上に立つ実力も持っている。仕事は早いし正確だし、この人がミスをしているなんて事は一度もない。いつ睡眠とってるの?ってくらい会社にいるし、休日も出勤しているんだろうって思う。さすがに新社の私には休日出勤の声はかからないけれど、それももしかたしたら時間の問題なのかもしれない。
外見は小柄でとにかく目付きが悪い。いっちゃえば目が死んでる。それに口も悪いし昔は相当ヤンチャだったって過去もバレている。新人だろうが先輩だろうが誰に対しても偉そうで容赦がない。故に私はこのリヴァイ室長がすごぶる苦手だった。顔がずば抜けて美形だからか、女性社員からの人気は圧倒的でリヴァイ班ってだけでかなり羨ましがられるけれど、正直変わっていただきたい。

私は断然アルミンの方が好きだ。
可愛らしいアルミンの方が余っ程癒される。
てか最近御前様だからめっぽうアルミンに会えてない。
考えれば考える程自分の中はアルミンでいっぱいになっていて、デスクの上に置いてあったスマホのLINEを開くとアルミンとのトーク部屋に一言「会いたい」そう呟くとすぐ様既読になったんだ。

「オイガキよ、てめぇスマホ弄ってる余裕があると思ったら大間違いだぞ。今夜は徹夜だ!徹底的に教えこんでやる!」

何故か目の敵にされている可哀想な私。
みんなはリヴァイ室長に徹底マークされてる私を羨んで見ているけれど超絶迷惑であって、アルミンからきた返事を見る前に私はリヴァイ室長の元へと連れていかれてしまった。






「これで最後だ、やり直せ。」

ドサッと乱暴にデスクに書類を落とされた。時計の針はもうてっぺんを超えている。
夜ご飯もまだ食べておらず、なんなら睡魔のが勝ってしまいそうだ。
「はい、」とリヴァイ室長から最後の書類を受け取ると私はデスクに向かって訂正箇所を直していく。
確かにリヴァイ室長にチェックして貰ったこの書類は完璧だ。私ごときには到底作れない。

「なんだ、もう眠いのか?」

目を擦っている私を見たのかリヴァイ室長がボソッと呟いた。ここんとこずっと残業続きだったせいもあって、アルミン不足のせいもあって、私はかなり弱気だった。

「眠いです。リヴァイ室長は化け物ですか?体内の血が緑とかじゃないですよね?」
「あ?てめぇ俺を馬鹿にしてんのか?」
「いえ。すいません、冗談です。」
「オイオイオイ、冗談が過ぎんだろ。」

ボーッと遠くで聞こえるリヴァイ室長の声。私は椅子ごとくるりと振り返ると、思いの外近い距離にリヴァイ室長がいて、危うく触れ合いそうになった。
たぶん私以外の女ならば、こんな展開顔が熱くなってリヴァイ室長を意識するのかもしれない。
けれど私の脳内に現時点でリヴァイ室長は欠片もいない。このド至近距離を避ける事もしないリヴァイ室長を見つめたまま、「終わりました。」小さく言って席を立つ。

「もう帰ってもいいですか?」
「…チッ、送る。さすがにもう電車も動いてねぇし。さっさと行くぞ。」

舌打ちされる意味が分からない…そう思いながらも大股で歩いていくリヴァイ室長の後ろを小走りで追いかけた。