ほんのひと時

相変わらず名前の企画課はいそがしかった。あのリヴァイ班である名前は毎日終電で帰ってきては、少し遅めに出社するのかと思いきや、いつも通りの時間に出て行く。これじゃ名前じゃなくとも身体を壊すよ。少なくともリヴァイ室長みたいな頑丈な身体じゃないのに。
だから僕だってめちゃくちゃ会いたいのにそれを名前の為に我慢しているっていうのに。

ポロンっと入ったLINEには2、3週間に一度名前から一言【会いたい】なんて可愛らしいメッセージが届く。それを見る度に僕がどんなに嬉しいか、名前は分かっていないんだろうと思うけど…僕は名前からのSOSに今のところちゃんと応えられているんだと思うとめちゃくちゃ嬉しいんだ。

社内で名前を見かけようと思えば見れるけど、名前に会いに行くってことは、リヴァイ室長もいるわけで、それはやっぱり見たくはない。
だから僕は仕事が終わったら今夜も名前の部屋まで行こうって思ってた。

「アルミン!」

聞こえた声に振り返ると名前が小走りでこっちに来ているのが目に入る。
大きく手を振って笑顔で僕の前で止まった名前は、勢い余って僕の腕にふわりと飛び込んできた。
慌てて抱きとめると、そのまま手首を掴まれてキョロキョロと辺りを見回すとちょうど使っていない第三会議室の中に入り込んだ。
ドアに背をつけてそのままギュッと僕に抱きつく名前から甘い金木犀の様な香りがして背中に腕を回して名前を受け止めた。

「聞いてよアルミン!来週大阪に出張だって。あの鬼室長と一緒に。最悪。行きたくないよアルミン。アルミンと一緒に居たいよぉ。」

うーって泣き真似する名前の髪を撫でると「アルミン…」そっと距離を作る。これが合図だって分かる名前のソレに答える以外の選択肢なんて僕にはない。

「誰かに見られてもいいの?」

小さく聞くと「アルミン不足だもん。知らない、そんなの!」可愛いなぁって思う。こんなに甘えたな名前を知っているのは後にも先にも僕だけでありたいなんて。
目を閉じる名前に顔を寄せて唇に触れると「ンッ、もっとちゃんと、」なんて胸がキュンと痛くなりそうな言葉をくれる。
名前から舌を絡める当たり、僕は男としてどうなんだ?と思うけれど、名前のキスに合わせるのは好きだった。気持ち良さげに緩く舌を絡める名前のキスは堪らない。どんどん深くなっていくキスに自然と僕らの息もあがる。
ダメだよこのままだと僕、キスだけじゃ終わらなくなっちゃうよ。
なんて思いながらもキスを止めない名前を強く抱きしめる。
だけどその時だった。

「オイ、苗字。たくどこに行きやがった。これから出張の打ち合わせだというのに。」

聞こえたのはリヴァイ室長の声。思わず離れる名前が何だか遠くにいってしまいそうに感じて、僕は声が近づいてくるにも関わらず名前を捕まえてまたキスを続ける。ちょっと吃驚したような名前が「ン、アルミン?」キスの合間に僕を呼ぶけど。

「…僕だって名前不足過ぎて寂しいよ。」

そう言うと名前が耳元で「アルミン可愛いすぎる。」嬉しそうな声色に変わった気がした。
例えこのドアを開けられたとしても僕は絶対にこのキスをやめるつもりはない。むしろ見せつけてやりたいぐらいだ。
でも残念ながらこのドアが開くことはなかった。それ以降リヴァイ室長の声も足音もしなかった。

そして名前は、満足気に僕に小さな鍵を渡してくれた。

「外で待つと寒いから部屋入ってて。ね?」
「いいの?」
「うん。合鍵まだ作ってないからちょっと待っててね!」

嬉しくて嬉しくて、僕は完全に舞い上がっていたんだ。