宣戦布告
一人暮らしの名前の部屋は、どれ程掃除をしても一週間も経つと元通りの名前の部屋に戻っていた。
掃除が苦手な名前。というよりかは家事全般が苦手なんだと思う。名前に借りた鍵で部屋の中に入るとどうやったらこんなに散らかるのか?ってぐらい部屋がとっ散らかっていて、僕は気合を入れて掃除をした。どの道名前が戻ってくるのはまだ先だろうって。
今日は温かいお風呂に一緒につかれたらいいなぁなんて入浴剤まで買ってきた僕は、久々の名前との交わりに嬉しさが込み上げていたんだ。
一通り掃除を終えて、なんなら名前と一緒に食べようって夕飯まで作って名前からの連絡を今か今かと待っていたんだ。
一息ついて少しすると、名前からのLINEで【間もなく到着〜】可愛いスタンプと共にポロンと僕のスマホにメッセージが届いた。
居てもたってもいられなくて僕は逸る気持ちを押さえて玄関のドアを開けてしまった。
見えたのはまたいつかと同じ黒の四駆。これは、リヴァイ室長の車だ。コーポの前に止まっていて、中の状態まではよく見えない。でもどうしてか名前はまだ出てこなくて、不安なのか怒りなのかよく分からない感情が僕の中を渦巻いている。
「なんだよ、早く返せよ、」
そんな僕の苛立った声は冷たい空に消えていくだけだ。ジッと目を凝らして車の中を覗こうとした瞬間、名前が助手席から出て来た。
「ありがとうございましたリヴァイ室長。また明日。」
ペコッと頭を下げて車を見送る名前を横にベンツは音もなく数メートル進んでも名前は動かなくて。角を曲がるまでずっと見ていた。たかがそれだけの事なのに僕の胸はチクリと痛くて。それでも名前がくるりと向きを変えてこちらに歩いて来ようと一歩踏み出した瞬間、「オイ!」そんな声と共にベンツがどうしてか、戻ってきたんだ。
秒で名前が僕を見つけるはずだったのに、名前の顔はベンツに向かっていて。
「忘れてんぞ、大事なもん!」
わざわざ運転席を降りたリヴァイ室長は名前が車に忘れたであろうスマホを持って階段の前まで来た。
「すいません!アルミンにLINEしてそのまま落っこっちちゃったのかなぁ。やだな私ってば。」
「そそっかしいな。俺には信じられんが。」
「酷いー室長!室長だって忘れ物ぐらいしますよね?」
「俺を誰だと思ってる?そんな事あるわけねぇだろ。」
「えー絶対ありますよぉ!ほら思い出して?ね?」
「いや、一度もねぇ。」
「もー頑固なんだからぁ!でも私の前だとリヴァイ室長も普通って事、みんなに言いふらしてやりたいです!」
「てめぇ、何度も言ってんだろ、調子にのるなと。」
…なんなんだ、これは。この緩い会話のやり取りは。そもそもリヴァイ室長ってあんなに女と喋るの?仕事の指示を飛ばしてる事はあるんだろうけど、こんな風に楽しそうに喋るなんて。いや違う…相手が名前だから、なのか?
これ以上二人を一緒にさせたくない。
そう強く思った僕は階段の上まで歩み寄った。こちらに背を向けている名前は僕には気づいていない。でもほんの一瞬リヴァイ室長は僕を見た。その視線が僕を捉えたんだーー
「名前ッ、」
呼んだのは僕ではなくリヴァイ室長で。
「…え?リヴァイ室長?今名前で呼びました?」
「悪いな。」
「へ?なにが?」
「!!!!!ッ」
名前の手首を掴んだリヴァイ室長は、まるでそれが僕への宣戦布告かのよう、名前を引き寄せてその綺麗な顔を寄せたんだ。
飲み会で何も答えなかった癖に、今頃答えるなんてルール違反だろ。
NEXT〜