旧友の呼び出し

「義勇って顔だけは良かったから修学旅行とか他校の女子からめっちゃモテてたよねぇ」

「あー確かに。電車でLINEのIDよく聞かれてたらしいよねぇ」

ふふふと、また二人で笑い合う。
さり気なく話題を反らせた事にゆきみは内心ホッとしていた。この事実はまだ誰にも明かせない…と胸に仕舞い込む。

「ねぇ杏寿郎に連絡してみる?」

「え?今…」

「うん、今!なう!」

ゆきみがスマホを片手にLINEを開く。もう何年もメッセージ等送っていないし機種変だってしているからトーク部屋自体にメッセージは何も残ってはいない。けれども部屋は変わらずそこにあった。それは奈々も同じで。頬を緩ませてトーク部屋を開いたゆきみは、奈々の返事も待たずに【げんき?】一言そう送ったんだ。

「まぁすぐには既読にはならないよねぇ」

ピーチティーをストローで吸い上げて最後まで飲み干すとゆきみは「おかわり入れてくる」そう言ってコップを持って立ち上がるとドリンクバーのある場所へと歩いて行った。
金曜日のアフターだから店内は混みあっていて、食事待ちのお客で入口のソファーは埋まっていた。早くしろと言わんばかりの冷たい視線を背中に感じながらも、奈々との時間を早々邪魔されてたまるかとピーチティーをコップに注ぐとそそくさと個室席へと戻った。

「すげー混んでたよ」

「金曜日だもんねぇ今日」

「返事きた?」

ふとテーブルの上のLINEを見るとタイミングよく杏寿郎からの着信がバイブ音で伝える。二人は顔を見合わせて笑うとすぐに通話ボタンを押す。

「杏寿郎?」
【あぁゆきみか、久しぶりだな。ちょうど今から帰ろうと思っていたから電話したのだが、今外か?】

久しぶりに聞く杏寿郎の声にゆきみは微笑む。相変わらずのお堅い喋り方に笑いが込上げる。

「今奈々とご飯食べてて。昔話に花が咲いたから杏寿郎元気かな?と思って。ねぇ今からこっち来ない?」
【おお、良いのか?二人の時間を邪魔しても】
「うんいいよ。奈々とは月2で会ってるし!」
【ならば、今から合流しよう。場所は何処だ?】

杏寿郎の言葉に場所を説明すると奈々が目を大きく見開いた。身を乗り出して「来るって?」と聞くからゆきみはコクコクと頷く。

「凄い、普通に杏寿郎だった」

電話を切って笑うゆきみに奈々もつられて笑顔になる。久々に会う旧友との再会に心を踊らせたのは言うまでもなかった。

「こんなザワついたお店の中だけど、電話口の杏寿郎の声、あたしにも聞こえたもん」

10年経った彼は、どうなっているのだろう。
Facebookの情報だと結婚はしていなさそうだ。それでも自分たちは結婚を考えてもおかしくない年頃であって、決まった人はいるだろうと思えた。

「煉獄家だからさ、許嫁とかいそうだよね」

「いそう!ザ日本人っていうような人が」

ふふふって二人はまた顔を見合わせて笑う。