ジンクス
「実弥のハチマキ欲しいなぁ…」
代々引き継がれているキメツ学園のジンクスの一つに、ハチマキ交換があった。それは、体育祭が終わった後ハチマキを交換した男女はカップルになれるというもの。
寄って、各チームの団長のハチマキは代々めちゃくちゃ人気が高い。この年の体育祭は、生徒会である2年が引っ張っていることもあり、各チームの団長も2年から選出されていた。そして何を隠そうこの役員男子がそのまま団長と化して各チームの先陣を切っているのであった。
赤組団長、煉獄杏寿郎。青組団長、冨岡義勇。白組団長、宇髄天元。そして、緑組団長、不死川実弥。
加えて奈々は杏寿郎と同じ赤組で、ゆきみは義勇と同じ青組だった。
「体育祭、実弥と同じチームになれないからせめてハチマキ欲しいなぁって思うの」
相変わらず弱気なゆきみに奈々はクスッと笑う。だからゆきみが寝そべったまま「なによぉ」他人事だと思ってと続けるも笑うしかない。
「だってどう見てもゆきみと不死川くん両想いだと思うよ。不死川くんが優しくする女なんてゆきみだけじゃん」
途端にパァーっと顔を輝かせるゆきみに対して奈々はあくまで冷静に笑っている。
今週は中間テスト前なので、授業もお昼までだった。勿論生徒会室は使えないから休み時間にこうして奈々のクラスに顔を出しているゆきみ。
「そ、かな、えへへ」
「てゆうか、今日2人で勉強するんでしょ?ねぇ大丈夫?」
ジッと見つめる奈々はビジュアル系ロックバンドの下敷きを団扇変わりにして扇いでいて、それをゆきみの耳に寄せて隙間からこう続けた。
「キスとかされちゃうんじゃないの?不死川くんに!」
バッと顔を真っ赤にさせるゆきみ。でも奈々は今日の夜にゆきみから、実弥にキスされた!なんてLINEがくるんじゃないかと思えて仕方がない。
「どうした新城!」
恥ずかしくて思いっきり後ろに尻餅をつくゆきみを、たまたま後ろにいた杏寿郎の脚が支えた。振り返ったゆきみに手を差し出してくれる優男、杏寿郎。
「う、なんでもない。アリガトゴザイマス」
何故かカタコトの日本語で杏寿郎の手を取るゆきみに奈々はまた笑う。だけど次の瞬間、不意に肩に触れた温もりにドキンと奈々の心臓が脈打った。
振り返ると天元がそこにいて、隣の席の机にドカッと座る。
「奈々、俺らも勉強会しよーぜ。帰りに迎えに来るから待っとけよ」
思わぬ天元からの誘いに奈々はトクンと胸をときめかせる。付き合っている事になっている奈々と天元。だからなのか、天元は奈々の髪をサラりと撫でている。ほんの少しゆきみが羨ましいと思っていた奈々だから、何気ないこの天元の誘いが単純に嬉しかったんだ。
「天元、言っとくけどちゃんと勉強してよ?くれぐれも奈々に迫らないでよ〜」
「おい心外だな。お前らこそ大丈夫なのか?俺よりよっぽど不死川のが危なくねぇか?なぁ煉獄」
「それに関しては同意見だ。俺は宇髄を信じてる」
「サンキューサンキュー!裏切らねぇように頑張るぜぇ!」
パシパシと天元に背中を無駄に叩かれた杏寿郎は、らしくない誰にも聞こえない声で小さく言った。
「本当に頼むぞ宇髄…」
誰に届くことも無い杏寿郎の独り言が、果たして奈々と天元に通じるのだろうか…。