変わらぬ友情

「そうだ!思い出した〜!ビニールテープの買い出し後からめっちゃイチャイチャし始めたんだよねぇ、ゆきみと実弥!」

「ふふ。でも付き合ってないよ、まだ。あの日は死ぬ程ドキドキしてたけどねぇ。もうあんなにドキドキする事ってないんだろうなぁ」

「確かに。今のドキドキとあの頃のドキドキじゃ度合いが違うよね」

「ドキドキしたい〜あの頃みたいに!」

テーブルにゴロンと身を乗り出すゆきみを微笑ましく見つめる奈々。
10年の時を経ても尚、二人の友情は変わらない。
恋人を変えても、二人の友情は何一つ変わらない。
学生ならではのトキメキは歳を重ねるごとに薄くなってしまうものかもしれないけれど、こうして二人が顔を合わせれば、そこにはいつだってあの頃の二人が残っている。

「実弥はさぁ、わりと最初からゆきみの事好きだったじゃん!けどあたしなんて天元はしょっちゅう違う女と一緒に居てさぁ…それなのに、好きになっちゃったんだよねぇ〜」

確かに宇髄天元は異様に女にモテた。同学年からだけに留まらずそれは先輩でも後輩でも。派手好きな天元はやる事も諸々派手であった為目立っていたし、それを誇りにすら思っていたであろう。
けれどこの奈々も、そんな天元に負けず劣らず人気だったのは、容姿の可愛さだけではないはずだ。

「まぁでもあれは仕方なく無い?わたしが奈々でも惚れたよ。天元って普段がめちゃくちゃチャラい分、真剣マジになった時とのギャップが半端ないというか。もうあの日はさ、額に入れて閉まっておきたいぐらいかっこよかったよねぇ」

頬を緩ませて話すのは奈々だけではない。ゆきみもまた、あの日の2人を思い浮かべて口端を緩めた。
熱くなる身体を冷ますようにテーブルのピーチティーを一口飲めば、それもまた思い出の味であろう。

「わたし思うんだけどさ、杏寿郎ってやっぱり奈々の事好きだったんじゃないかな?」

「え?まさか!」

「正義感強くてみんなに優しかったけど、それでも人一倍杏寿郎は奈々を気にしていたような気がするなぁ。最も天元がいたからそんな事言葉にした事なんてないけどさぁ。もし今再会して杏寿郎に付き合おう!って言われたらどーする?」

パチクリと二重にマスカラを付けた睫毛をしばたかせて奈々をニンマリと見つめるゆきみ。長めに引いてるアイラインがゆきみの目をより一層大きく見せている。一つ瞬きをすれば10年前にはなかった色気をまとうゆきみが、頬杖をついてニッコリと微笑んだ。

「杏寿郎…かあ…。そんな風に見た事なかったけど、嫌いじゃない。いや好きは好き。でもそれがLOVEかLIKEかなんて分からないし、今の杏寿郎次第じゃないかなぁ」

思ったより真面目に答える奈々に、ゆきみはクスリと鼻を鳴らす。

「結構前向きじゃん!」

「だって杏寿郎でしょ。特段文句のつけ所はないよね」

「まぁそうか」

「ゆきみこそ、義勇にキスされた事あったよね?」

ギクリと心臓が音を立てた。嫌なこと思い出されたという顔で苦笑いを零すゆきみは、その顔の如く「思い出さなくていいよーそれ」…時に、閉まっておきたい思い出もあったであろう。けれど今となってはそれも淡い思い出だ。

「あたしと天元はめちゃくちゃ楽しんでたけどね」

「こらぁ!!人の恋愛を楽しむな!」

「ふふごめーん。でも思うんだけど、義勇は今でもゆきみを好きな気がする」

それなんの根拠よ、そう続けるゆきみは、視線を逸らして義勇の顔を思い浮かべてはかぶりを振った。