A O T

小さなヤキモチ


ガチャガチャって玄関の鍵が解除された音の後、ドタバタとした足音が聞こえてリヴァイはそちらに視線を向けた。
買い物に行っていた恋人が戻ってきたんだろうって、荷物でも取りに行ってやるかとソファーから立ち上がって廊下に出るとびしょ濡れの名前がそこにいた。

「雨か?」

「リヴァイ〜!タオル欲しい!急に降ってきて走ったんだけど間に合わなくて」

「そのまま風呂に入ってこい、荷物は俺がやっておくから」

不器用でぶっきらぼうで余計なことは口にしないけれど、無口な訳ではないこのリヴァイは、見かけによらず愛情深い人だった。みんなには誤解されがちだけれど、そーいう芯の部分は名前だけが知っていればいい、なんて思っている。

「ありがと!あ、リヴァイも一緒に入る?」

あくまで冗談でそう言った名前は、断るだろうって前提で言ったわけで、そのままリヴァイの返事を聞くことなく洗面所へと歩いた。
きちんと揃っているタオル。並んだ歯ブラシ。潔癖症なリヴァイは水周りもいつもピカピカに磨かれていて、ちょっと汚しても翌日には元通りになっている。
本来なら女の名前の仕事なのだろうけど、こればっかりはリヴァイに口出しはできなかった。なんせ、名前がやるより余っ程手際が良くて上手だから。

間もなく桜の季節を迎える春だけれど、夜の雨はまだ肌寒く、濡れたせいで肩は冷えきっていた。だからリヴァイの言葉に甘えて名前はとりあえずシャワーで全身を濯いでから湯船に浸かった。

「気持ちい〜生き返るなぁ〜」

目を閉じて鼻歌を歌う名前の耳に、不意に聞こえたガチャンって音。目を開けると、目の前に全裸のリヴァイの姿があって思いっきり目を見開いた。

「え、リヴァイ?」

「お前が一緒に入りたいって言ったからな」

ニヤリと口端を緩めたリヴァイは、名前と同じようにシャワーで全身濯ぐと、バスタブの中に入って来た。
二人で入っても狭くはない大きなバスタブだから全然窮屈ではないものの、こんな明るい場所で生まれたての姿をご披露するものとは思ってもみず、名前を後ろから抱きしめるリヴァイの腕が擽ったくて身を捩った。
肩口にちゅと小さなキスを繰り返すリヴァイに、名前もだんだん身体が反応してしまいそうで。

「リヴァイ…だめ、」

「嘘をつくな。ここは正直だぞ」

吐息混じりのリヴァイの顎が肩に乗っかると、そのままギュッと名前を抱きしめる。ゆっくりと手を動かして名前の太腿をなぞって躊躇しているそこに少し強引に指を入れ込むと途端に名前が甘い声をあげた。

「まだキスもしてねぇのに、どうなってんだ?あぁ?」

「耳元で喋らないでッ、」

わざと耳朶を後ろからカプッて加えたリヴァイは、そのまま舌をニュルりと入れ込んでちゅうっと吸い上げた。音が遮断されてリヴァイの舌が動く音と、熱い吐息。湯船の中で指が動くと名前の身体がビクビクと震える。
もう限界って顔で名前がくるりと振り返ると、リヴァイのクッて楽しそうな顔と目が合う。

「その気になっちゃったよ、もう」

「あぁそうさせた」

リヴァイの上に向かい合わせで座ると首に腕をかける。名前の背中を押して自分に擦り付けるリヴァイが潤った名前の唇を塞いだーー






鏡に映った名前の首元にはリヴァイの物だって印が一つ色濃く刻まれている。
風呂内での交わりはかなりの体力を消費する気がした。
なんせ逆上せる。
でも、「リヴァイ」涼しい顔で紅茶を飲んでいるリヴァイは小柄だけれど体力もあるし、全くと言っていい程疲れていない。なんならこの後も確実に名前を抱く気なんだろうって思える。

「なんだ?」

「今日会社で受付の子に声掛けられてたよね?」

「あぁ?」

「たまたま見ちゃって」

「ちゃんと断ったが」

「うん分かってる」

「なんだ?不安か?」

ガチャっとカップを置いたリヴァイが、ソファーの上で膝を抱えている名前の隣に移動した。そのままふわりと肩を抱く。

リヴァイがモテるのは今に始まった事ではなかった。そもそも名前って恋人がいようがいまいがリヴァイは関係なしにモテる。でもそれって逆を言うのなら…ーー

「私とリヴァイって、やっぱり似合ってないのかな?」

「は?」

「だから恋人の私がいてもリヴァイを取ろうとしてくるのかね、」

「おい、名前、こっち向け」

「やだ。今すっごい不細工だから、」

「構わねぇ、こっち見ろ」

…構わねぇはないだろ、なんて内心名前は思いながらも仕方なく顔を上げてリヴァイを見た。三白眼の瞳の中に映っているのは紛れもなく名前ただ一人。リヴァイに見つめられているのも、名前一人。

「いいか、よく聞け。俺はお前以外に興味はねぇ。この先他の女がどれ程俺に近づこうが、近づかまいが、お前以外に興味はねぇよ。お前はもっと自覚しろ、俺に愛されてると。毎晩愛されてるのはお前だけだと。分かったな?」

「リヴァイって、ある意味素直だよね。そーやってちゃんと私が欲しい言葉をくれるところ、すごく好き…」

「なら俺だけ見てろ。他の奴なんか目に入れるな、男だろーが女だろーが、俺以外を見る事は許さねぇ」

「ふふ、分かった。リヴァイの事だけ見てる」

「いい子だ。でもとりあえずお前のその身体にもっと刻みつけてやる、俺だけのもんだって証を」

そう言うがリヴァイは名前を横抱きにして軽々と持ち上げると、そのまま迷うことなく寝室のベッドへと連れて行く。
真っ白のシーツの上に優しく押し倒されて、触れる手も唇も何もかもが優しいリヴァイにギュッと抱きつくと、身体全部で抱き締め返してくれる。
名前を組み敷いてその柔らかな髪を指で掬って口付けるリヴァイは、小さいながらもヤキモチを妬く名前が、どうしようもなく可愛いと思えて口端を緩めたなんて。



-fin-