A O T

Missing you


「リヴァイさんのバカぁ。リヴァイさんのアホぉ。リヴァイさんなんてリヴァイさんなんて…ーーうぅ、好き。なんでこんなに好きなのよぉ、もうっ」

さて。人間は体内に酒を入れると大体がハイになる。まぁ変わらないって人も多いけど。よく聞くのが、泣き上戸、笑い上戸…的な。
そしてこの子、苗字名前は、たぶんだれど泣き上戸。まぁ90%泣き上戸。
付き合って1ヶ月経つという恋人、リヴァイ・アッカーマンはとにかく忙しい人だった。
仕事の上でも部長という役職についている為、会議や打ち合わせ、来客に外出。そのまま帰宅し時には直行。元々仕事人間だったリヴァイの生活に、名前の入り込む隙がなかなかなく、今日の飲み会に至った。

「ナナバさぁん。リヴァイさんより素敵な人どこかにいませんかあ?そしたらあたし、乗り換えるぅ」

完全に酔っ払っている名前がリヴァイの同期でもあるナナバの肩に頭をコテンと乗せてギュッとくっついてそう言った。なんなら名前の目は閉じられていて、もう眠いのだろうか?
ビール片手にナナバは宙を見回した結果ニヤリと口端を緩めた。

「一人いるなぁ、リヴァイよりずっと良い奴が、乗り換えるか?」

「えっ!?ほんとに!?リヴァイさんより素敵な人なんて、本当にこの世にいますか?あたし見た事ない。だってリヴァイさんはかっこいいのに仕事もできて、目付きは悪いけど実は優しくて。言葉使いも悪いけど声はイケボでしょお。身長は低いけど身体能力めっちゃ高いし、腹筋シックスパックなんですう。いつも怒ってるように見えるけど、本当はみんなが自立できるようにって密かにフォローしてくれてたりするんです。目に見える所だけじゃなくてね、あたしはリヴァイさんのそーいう内面も大好きなんですう。分かる?分かりますか?それにあたしにはめちゃくちゃ甘いんです、リヴァイさんって。甘やかされてるんです、これでも…たぶん。だって2人の時はなんでもしてくれるしなんでも聞いてくれる。我儘女になっちゃうよ?って言ったら、構わねぇ!って言ってくれたんです。凄くないですか!?女の我儘なんて屁でもないんです、リヴァイさんにとっては。…うっ、逢いたいよお、今すぐリヴァイさんに逢いたいよおおおおおっ、」

座敷の畳に身を投げて転がる名前を足元に捉えたのは紛れもなくリヴァイで。
スーツのネクタイを片手で緩めるとチッと舌打ちをかました。
ジロリとその場にいる全員を一瞥する。

「誰だ、コイツにこんなに飲ませた奴は」

一瞬でシーンとなったお座敷の中、名前はパッと顔を上げてリヴァイの姿を確認する。
途端にシャンと背筋を伸ばして「リヴァイ部長、お疲れ様です!」ぺこりと頭を下げたら途端に酔いが回ってその場によろけた。

「リヴァイが遅いから名前が寂しがってたぞぅ」

ハンジがまぁまぁってリヴァイを宥めるように言うと、リヴァイが膝を着いて名前を支えた。

「気持ち悪くねぇか?」

「うん。ちょっとフラフラするけど」

「なら寝てろ、帰りは連れて帰るから安心しろ」

横にならせた名前の後頭部を自分の太腿の上に乗せたリヴァイは、そのままスーツの上着を脱いで名前の身体に掛けてあげる。

「やっと食事にたどり着けた。腹が減ってるから適当に頼むぞ。おいエルヴィン、今日はてめぇの奢りでいいんだよな?」

全くもってそんな話は出ていなかったけれど、リヴァイの一言で向かい側に座っていたエルヴィンは仕方なく「あぁ、好きに頼め」なんて言った。



「なあリヴァイ、さっきの名前の、全部聞こえてたんだろ?」

ニヤついた顔でハンジがリヴァイのグラスにビールを注ぐ。
確かにタイミングよく現れたリヴァイに対してハンジだけではなく、この場にいたエルヴィン、ナナバ、ミケもそう思っていたであろう。
煙草を咥えたリヴァイは、灰皿にそれを置くと漬物をポリポリと頬張った。

「あぁ、聞いてた。どれも当たってるな。よく俺を理解している、名前は」

左手で何度も名前の髪を撫でているリヴァイにみんなは気づいていて、それすらも正直リアリティがない。今までのリヴァイの女との付き合い方が悪すぎて、名前を愛するように愛された女なんていやしない。この同期が知る限り。
スヤスヤと心地良さげに安心した表情で眠っている名前を、さも愛おしそうに見つめるリヴァイの優しい顔は、名前と付き合うようになって初めて見たとも言えるが。

「そもそもナナバ、俺よりいい男なんてこの世にいるわけねぇだろ?てめぇ誰を言おうとしてたんだ?」

「そんなの、あたしだよ。リヴァイよりずっと女心が分かってるからな。あんまり名前を放っておくと、奪い取ってやるぞ?」

ユニセックスなナナバとハンジは、性別は女であるが、男ととれなくもない。そして男とか女とかではなく、ナナバでありハンジである以外の事でもなかった。
ギョッと目を見開いたリヴァイは、ちょっとだけ自嘲的に笑うと「それは、危ねぇな。こいつはなにかにつけてナナバを頼る傾向があるから…」珍しく認めている。
それが可笑しくてナナバはガハハハハ!って大口開けて笑った。

ふわりと名前の髪を優しく撫でながらリヴァイは心の中で「すまない」と呟く。
自分が忙しいという事も承知の上で、それでも名前の恋人でありたいと思うリヴァイだって、名前の事が大好きだ。
言葉にするのは苦手だし、たいした言葉も言ってあげられないけれど、それでもリヴァイの心はいつでも名前でいっぱいなんだ。






「あれ?リヴァイさん?」

目を開けるとそこは一度だけ来たことのあるリヴァイの部屋だった。
時計の針はもうてっぺんを超えていて、起き上がった名前はズキズキ痛む頭を抱えた。

「今水を持ってきてやる」

そう言ったリヴァイは冷蔵庫からペットボトルの水を持ってきてくれ、蓋を開けた状態で名前に手渡した。素直に受け取って水を体内に入れると、ほんの少し頭痛が和らいだ。

「ここ、リヴァイさんのお部屋?」

「そうだ。全く起きなかったぞ」

「あの…すいません、悪酔いして」

「あぁ。分かってるならいい。もう二度とアイツらの前では飲むな!特にナナバの前ではな!」

「うん。リヴァイさんにやっと逢えた」

「まぁ悪くねぇな」

フッと笑ったリヴァイはペットボトルの水を口に含むと、そのまま名前に口移しで飲ませた。

「ンッ、リヴァイさんッ、」

「水は飲んどけ。全部飲ましてやるから」

「うん」

これまた素直に頷く名前の頬は既にほんのり薄くピンク色に色付いている。そんな名前を見てゴクリと水を飲み込んでしまったリヴァイは、そのままペットボトルをテーブルに置くと、名前の上に覆いかぶさった。

「悪かったな寂しくさせて」

頬を優しく撫でて小さくそこに口付ける。名前は嬉しそうに目を細めて「うん」そう笑う。

「名前が俺をどう思ってるのかは、散々聞かせて貰ったから、素直に受け取っておく。あぁそうだ、ナナバの言ってた奴は存在しねぇから安心しろ。俺以外目には入れてくれるな、」

独占欲剥き出しなリヴァイが堪らなくて、名前は腕を伸ばしてリヴァイにギュッと抱きついた。

「リヴァイさんしかいらない」

「それでいい」

目を閉じる名前に、ゆっくりとリヴァイの温もりが落ちていったーー



-fin-