東京卍會

責任重大な任務


「え?ソウヤくんを?」
「そ。頼まれてくんねぇかな〜?」
「いいけど、ナホヤくん…興味無いと思ってた、女子に」
「そんな訳ないっしょ!タケミっち見てると嫁居ていいな〜って思ってるヤツらいっぱいよ!」
「でもソウヤくんは、ナホヤくん一筋に見えるけどね」
「まぁねぇ〜。そこを名前ちゃんの手で、オトコにしてやってよ、ね?」

ポスッと頭を撫でられてドキッとする。ナホヤくんに頼まれ事されて断る女がいたら、見てみたい。
ーー私はあの笑顔に滅法弱いんだ。


その日、ナホヤくんは合コンに行くと言って放課後席を開けた。いつも金魚のフンみたいに双子の兄、ナホヤくんの後ろをちょこまかくっついて歩いてるのがこのソウヤくん。今私の隣で不機嫌丸出しでいじけているソウヤくん。元々笑う人じゃないのは知ってるけど、顔は全く一緒なのに表情が違うとやっぱり別人に見える。

「スマイリーどこに行ったか教えてよ」
「行先は聞いてないけど、合コンだって」

私の言葉にさぞ顔を顰めるソウヤくん。ただ合コンが何なのかは分かってなさそうで。
石ころを蹴っ飛ばして白線の上を歩く水色ヘアーなソウヤくんに私はニッコリ微笑んだ。

「暇。スマイリーいないと暇すぎて死ぬ。…なんか面白いことやってくれない?つーか合コンってなに?スマイリー何してんの!?」
「ソウヤくんは、ナホヤくんがいればいいの?」
「はぁ?当たり前でしょ。スマイリーよりかっこいい奴なんていないし。早くなんか面白い…こ、と、」

ふわりとソウヤくんの腕を掴んでそのままその中に身体を擦り込ませた。
思うんだけど、ナホヤくんだってソウヤくんの事めっちゃ大事に思ってる。ソウヤくんもナホヤくんのことめっちゃ大好きだし、二人の間に女の入る隙なんてないんだよね。実の所、ナホヤくんもソウヤくんも正直どっちもいいなぁと思っている私は、ここで一か八かで勝負に出てみようなんて…。
ド至近距離で私を見下ろすソウヤくんの大きな目は間違いなく私を捉えている。なんならちょっと眉間に皺が寄って、なんだよ?って感じに睨んでいる。

「面白い事はできないけど、気持ちいいことはできるよ」

ソウヤくんの頬に手を添えると、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。大きな目がそれでも少し不審気にこちらを見ていて…

「気持ちいいこと?」
「ん、ソウヤくん目閉じて?」
「なんで?」
「いいから」
「もう。仕方ないな」

その場で棒立ちしたまま素直に目を閉じたソウヤくんの頬に手を添えて背伸びをすると唇にちゅっと小さくキスを落とす。

「…全然気持ちよくないけど」

たはは、そりゃそーか。唇合わせるだけのキスなんて、「けど、」目を開けたソウヤくんはほんのり頬を紅く染めていて。私の髪をふわりと撫でると今度はソウヤくんのその手が私の頬を包む。
目の前にソウヤくんの瞳が降りてきて、真っ直ぐ私を見つめるソウヤくんに胸の奥がきゅんと音を立てる。

「なんか、変な気分」

吸い寄せられるみたいソウヤくんに近づく私に、ソウヤくんの方から唇を重ねてきた。まるでどこを触れさせれば気持ちよくなるのかを確かめているようだった。色んな箇所を唇で触れるソウヤくんに、私はほんのりと口を開けて舌を出す。一瞬怯んだもののソウヤくんはすぐに私の舌をハムッと甘く噛んでちゅるりと吸い上げた。

「んうっ、もっと」

小さく言うとソウヤくんの腕が私を掴んで公園の中にある大きなゾウの滑り台の下、空洞になっているそこに連れて行くと、その中でしゃがみこんで、間髪入れずにまた唇を塞ぐ。開いた口から入り込むソウヤくんの熱い舌が口内を激しく動き回る。それがあまりに情熱的過ぎて、一つのキスが終わる頃には私の脳内は蕩けそうで、ソウヤくんしか目に入らなくなっていた。

「確かに、気持ちいい。…正直このまま抜きたい、」

下半身に視線を移すソウヤくんに首を振る。いやソウヤくんの口からそんな言葉出ちゃダメでしょ!

「ここではダメだし、さすがにそれは」
「なんで?名前ちゃんが誘ったんだよ、責任取ってくれないの」
「それは、そうなんだけど…」
「スマイリーが好きなの?」
「へ?」
「…知ってた、ずっと俺じゃなくてスマイリーの事見てたでしょ」

まさかソウヤくんに気づかれていたなんて思ってもみない。というか、色恋事情をソウヤくんの口から聞く日が来るなんて思いもしない。ソウヤくんの脳内はナホヤくんと東卍の事しかないと思っていたから。
でも私はソウヤくんとナホヤくんどっちの方が好きか分からなくてーー…

「ソウヤくんのキスで、今ソウヤくんの方が気になってるって言ったら?」
「もっとキスする」

もっと俺で満たして…なんて、ソウヤくんらしからぬ台詞を言われ、現金なヤツだと自分でも思うけど、ソウヤくんの気持ちが私に向いている事はきっと間違いないと思うの。いつも笑っているけど何考えてるか分からないナホヤくんではなく、いつも怒った表情だけど心の中はとても温かいソウヤくんが、今この瞬間好きだって思う。
時に、女なんて単純で。
自分に好意を寄せているオトコが目の前に現れたら流されてもいいんじゃないかって。
ソウヤくんのキスは、初めてなのかも定かじゃないくらいに強引で激しくて、それでいてちゅって名残惜しく舌を抜くのが余計にきゅんとくる。
狭い空間の中で、ソウヤくんの熱い吐息をモロに感じて身体が自然と熱くなっていく。キスの合間で目が合うと、照れたように視線を逸らすソウヤくんが可愛くて堪らない。ナホヤくんみたいにニコリともしないけれど、ソウヤくんの気持ちは充分に伝わっている。

「ソウヤくん、」
「なに」
「好きだよ」
「…うん。俺も」
「ほんと?」
「ん、ほんと」

やっぱりその顔はめちゃくちゃ照れていて可愛い。スカイブルーのふわふわの髪に手を差し込むとソウヤくんの視線が飛んできて両頬を包まれる。トクンと胸がまた一つ大きな音を立てる。

「名前ちゃんのせいで、スマイリーが頭からいなくなった。…やっぱ責任取ってよね」
「どう責任取ればいいの?」
「俺の嫁にする」

嫁=オンナって事だよね?だから私は「うんっ!」大きく頷いたらまたソウヤくんの唇が重なった。




「どーなってんの?名前ちゃんアングリーに何してくれちゃった?」

後日、ナホヤくんに呼び出された私にニコニコしながらもめっちゃ圧をかけてくるナホヤくん。キョトンとナホヤくんを見つめて小首を傾げる私にナホヤくんはニコニコ笑顔で壁に追い込んでくる。

「何って、あ!…えーっと…まぁうん」

途中で気づいた私はアハハハと、頬を指でポリポリと掻きながらも視線を逸らす。

「あいつずーっと名前、名前、うるせえの!」

笑顔で睨んでくるナホヤくんに「キスしただけだよ」そう伝えると、ギョッと目を大きく見開いた。笑顔の下、眉間がピクピクと揺れ動いていて。

「ナホヤくんも、合コン楽しかったんじゃないの?」
「あ?空振ってんだよ、こっちはよぉ。なのにてめぇら俺の先行きやがって!!くっそお!!!!」

怒り奮闘、ナホヤくんが手前にいたソウヤくんに掴みかかるのを見て私は苦笑いでナホヤくんの後ろ姿に小さく「ごめん」と謝った。


-fin-