仮面を外して
◆捏造設定あり
◆マイキー生誕祭記念
東京卍會初代総長佐野万次郎生誕祭のその日、ここらの界隈でどデカい暴走が執行される。
普段男しか入れない東京卍會に、その日だけ一輪の花が咲き乱れる…そんな噂で専ら世間は賑わっていた。
「ねぇ〜変じゃない?ねぇマイキー!」
「あー?別に変じゃねぇよ。十分べっぴんだ。胸張ってろ」
タカちゃんが刺繍をしてくれた真っ白の特攻服。
背中に一輪の百合の花と、【初代総長我命】の文字を背負って今日私はこの暴走の中心を走る。
毎年恋人であるマイキーこと万次郎の生誕を祝う暴走だけに参加できる唯一の特権だった。
胸に巻いたサラシの上に特攻服を羽織ってマイキーのバイクの後ろに乗る私を一目見ようと、今日もまたギャラリー達が道を囲んでいる。
「だ、誰っすか、あの美人!?」
そんな声が聞こえて振り返ると金髪リーゼントの少年がキラキラした目でこっちを見ている。それに気づいたマイキーが「タケミっち、こっち来い」金髪の彼を手巻きして呼び寄せた。すると彼はすぐ様こちらに走ってくる。マイキーは私の肩を抱き寄せるとニッコリ微笑んでその薄い唇を開いた。
「タケミっち、俺の嫁の名前。顔覚えといて」
「マイキーくんの嫁!?はっ、初めましてっ!花垣武道っす」
そういやマイキーに聞いていた、面白い奴を見つけたって、もしかしてこの子かな…
「こんばんは、名前です。宜しくね、タケミっち」
スっと彼に向かって手を出すと当たり前に伸びてきた手と触れ合う寸前、マイキーがタケミっちの手を払い除けて、私を後ろに隠す。
「気安く触んじゃねぇぞ、タケミっち」
「うわ、すいませんっ!!」
「もう、握手ぐらいいいでしょ?」
「は?ダメに決まってんだろ。タケミっちが名前に惚れたら困る!」
「マイキーくん俺、一応ヒナがいるんすけど…」
「うるせぇよタケミっち、名前に惚れる要素はねぇって言いたいの?」
「いやそんな事言ってないっす!めちゃくちゃ綺麗っすし、そりゃあ…」
「腐った目で名前を見てんじゃねぇ、タケミっち!」
…なんだろうこのやり取り。マイキーもマイキーだけど、タケミっちもガキなんじゃないかと思えた。
呆れた顔で息を吐き出した私は、とりあえずみんなに挨拶しに行かなきゃと、堅ちゃんの所へ移動した。
「堅ちゃん、今日は宜しくね」
「名前!おう、年一だもんなぁお前。その刺繍三ツ谷が?」
背中の刺繍を見て惚れ惚れ言う堅ちゃんに頷く。「相変わらず器用だなぁ三ツ谷」なんて笑いながら捩れていたらしい襟をスッと直してくれた。
「堅ちゃんまた背伸びた?なんか見る度にデカくなってるきがする」
「まぁなあ!成長期だからたまに関節が痛てぇの。マイキーは全然伸びてねぇけどな」
ガハハハって笑う堅ちゃんに私もクスリと笑った。中学男児の成長は早く、少し見ないだけで一気に幼さも消えていたりする。別に自分だけが取り残されたという訳でもないけど、それぐらいに周りが変わっていくのが良いのか悪いのかは分からない。でもみんな、中身はとても熱いものを持っていて、それさえ変わらずにいてくれたらいい…なんて思うんだ。
「堅ちゃんはさ、ずっとマイキーの傍にいてあげてね?これからもずーっと」
「…どうした?急に。それは構わねぇが、名前こそ、俺らじゃどうにもできねぇ時マイキーの心の支えになっててやれよ、ずっとさ」
「うん、勿論。私はマイキー以外のオトコには興味無いもん。マイキーが生きてる限りマイキーの傍にいるよ」
「惚気かよ」
堅ちゃんがクシャっと前髪を撫でると、マイキーが「ケンちん、名前!」見ると、傘下の総長達と各隊の隊長、副隊長たちが集まっていた。
「合流地点の最終確認だ、行くぞ名前」
かなりの大掛かりな暴走が故、警察もこの日は気合いを入れて捕まえに来る。それから逃げつつも暴走を楽しむには各隊の協力が必要だ。
「スマイリーの肆番隊は3号線からの合流を頼む」
「はいよ〜」
「三ツ谷たち弐番隊は、最初の道を切り開いて俺らを援護だ」
「了解」
バイクの運転が上手いタカちゃん達弐番隊は毎度特攻として暴走の先頭を走って大通りに差し掛かると信号ブッチで他の車を止めて暴走を誘導するお役目だ。これは信用がないとできなくて、それを毎回かって出るタカちゃんはある意味凄い。一番危険で、一番捕まる可能性が高い。それでも毎回逃げ切る弐番隊は、我が東京卍會の中でも特別だった。地図を囲むみんなの顔が楽しそうで、マイキーの生まれた日をこうしてみんなで祝ってくれるのは私にとっても嬉しかった。
そんなこんなで、合流地点の確認が終わると神社にトーマンが集まった。堅ちゃんの呼び掛けでみんなが一斉にこちらを向く。
涼しい顔したマイキーが一歩前に出ると隣にいた私も同じように一歩前に出た。マイキーと手を繋いだままに。
「嫁の名前だ。今夜だけ一緒に走る。いいかお前ら…誰一人捕まんじゃねぇぞ!!!それが今夜お前らの成し遂げるべき事だ!」
マイキーの一声でみんなの気持ちが一つになった様だった。バイクの置いてある倉庫では暴走が始まるのを今か今かとみんなが待っている。
タカちゃんが先頭でバイクをブォンブォン吹かしている。中央でマイキーのバイクの後部座席に乗った私は右手を挙げてくるりと一回円を描くように回すとタカちゃんの音が先頭を切って走り出す。それに続いてみんなが一斉に走り出した。
8月20日23時ジャスト。
東京卍會初代総長佐野万次郎生誕祭の暴走が幕を開けた。
走り始めて30分。
全部の傘下が合流して街道はトーマンで埋め尽くされた。総長マイキーを囲むように壱番隊が常に周りを囲んでいて、マイキーの後ろに乗っている私の右側には幼馴染の場地くんが、左側には千冬がしっかりとくっ付いている。
ギャラリーにはトーマンに憧れる輩と、トーマンの面子に憧れてる女たちが、私とマイキーに手を振っている。それを横目に軽く手を振り返すと、バイクの爆音に紛れてキャーキャー黄色い歓声があがった。
「まるでカリスマだな、名前も」
場地くんが片眉あげてニヤリと笑う。照れ臭いからマイキーの背中に顔をグリグリと押し付けると「擽ってぇし!場地、妬いてんじゃねぇよ」なんていつものやり取りを聞きながらも、約一時間の暴走を終えて、倉庫に戻って来た。これで全隊が無事に戻ってくればマイキーの生誕祭暴走は終わる。
「三ツ谷達はまだか、ケンちん?」
危険なコースを走っているタカちゃん達弐番隊だけまだ戻っていなかった。
「もしかして、他のチームの妨害とか?」
マイキーに寄りかかってそう聞くも、首を横に振る。
「それならまだいい。三ツ谷がいれば負ける事はねぇし。問題はサツだ。サツに捕まったら逃げらんねぇからなぁ〜。ケンちん、連絡きてる?」
「いやまだなんも来てねぇ。つかマイキー、後は俺に任せて名前と過ごせよ」
この後私は、好きなだけマイキーに抱き潰される。それがマイキーの誕生日ってやつだ。
マイキーは少し考えるように視線を泳がすと、立ち上がって私の手をとる。まさか、本当に行く気?ギュッとマイキーの手を強く握ると「ケンちん後は任せた。なんかあれば連絡して。行くよ名前」スタスタと歩き出す。
「待ってよマイキー!タカちゃん達が心配じゃないの?」
「大丈夫だ、三ツ谷達は。絶対に全員で戻ってくる、それがトーマンだ」
ニカッと屈託なく笑うマイキーに何も言えなくなった。そんなに信用しきってるのもある意味凄いと思ったけど、マイキー達には女の私には分からない絆とか信頼とかそーゆーもんが吃驚する程存在しているんだと思えた。そして、マイキーが言うその言葉を、私は信じている。
「ん、分かった。じゃあ名前とマイキーの時間だね、ここからは」
「だな」
マイキーのバイクで彼の家に到着すると、部屋に入るや否や、すぐにベッドに押し倒された。
真っ白な特効服を脱がされて胸のサラシをぐるぐると解いていく。
「ちょっと巻きすぎじゃない?これぇ」
「え、分かんない。タカちゃんに巻いて貰ったから、」
「は?」
「あ、」
「どゆこと?」
「な、わけないじゃん!自分で巻いたよ〜」
エヘって笑って見せるも途端に不機嫌になって私に背を向けるマイキー。ベッドの壁側を向いて完全にへそを曲げているのが空気で分かる。でもそんなマイキーなんてお手の物だし、素直で可愛いなんて思って、マイキーの背中に後ろからギュッと巻きついた。
「んだよお」
「怒ってる?」
「怒るよ、そりゃ」
「機嫌直して。マイキーの為に今夜は綺麗に咲き乱れるんだから私」
「………」
くるりと反転したマイキーと目が合う。大きな目で私を見つめるマイキーがゆっくりと近づいてくる。
目を閉じるとマイキーの唇が触れる。すぐに唇をこじ開けられて生温い舌が絡みつくと、身体が一瞬で熱くなる。二人きりになるとマイキーは東京卍會初代総長の仮面を外して、ただのオトコ佐野万次郎に変わる。その顔は私だけが見れる私だけのマイキーの顔で、私はこの顔がたまらなく好き。
「万次郎くん、好き」
「俺のが好き」
「名前のが好き」
「いや俺のが好き」
「もう、負けず嫌い」
「どっちがだよ」
「ふふ。そんな万次郎くんも好き」
「ちゅーして、名前ちゃん。俺を満たして」
甘えん坊の万次郎の上に乗っかって、ゆっくりと腰を落とした。途中までだったサラシをゆっくりと外していって素肌が見えると、私の下で万次郎くんがニヤリと笑った。
