好きが止まらない

三ツ谷くんの嫁と周りに言われるようになった私は、毎日三ツ谷くんを好きになっていくのが分かって、それが恥ずかしくも嬉しいんだ。
昨日よりも今日のが好き。今日よりも明日のが好き。そうやってずーっとこの気持ちが大きくなり続けていけばいいと思っている。
そしてできるのなら、三ツ谷くんも私と同じ気持ちでいてくれたらいいな…なんて思わずにはいられなかった。
授業中、教科書を机に立ててその下でちくちくと裁縫をしている三ツ谷くんの姿を見るのはとても楽しく、誰かに言わせるなら目からハートが出ているとすら思える。頬杖をついた先、三ツ谷くんが首をコキッと鳴らして肩を回す仕草すら愛おしくて堪らない。
そして、「なんだよ」目が合った三ツ谷くんは、口パクで私にそう言うとクシャッと笑うんだ。その笑顔が堪らなく好き。私は首を横に振って「なんでもない」って口パクで言うとジーッと見つめた三ツ谷くんが「かわいい」って口パクで言ってくる。だから途端に真っ赤になって俯く私を見て、さも楽しそうに笑っている。
ねぇ神様、両想いってこんなに素敵なの?
三ツ谷くんに愛されるって、こんなにも幸せなんだと緩む頬を無理くり隠した。

放課後。
今日は部活もなく、トーマンの集まりもないって事で、学校が終わると三ツ谷くんが「うち来る?」って誘ってくれた。付き合ってからは初めての三ツ谷くん家に私は腕に絡みついて「うん!」笑顔で答えた。
いつも通りバイクの後部座席に私を抱き上げて乗せてくれた三ツ谷くんは、私専用のピンク色のメットを被せてくれて走り出す。
こうして三ツ谷くんの後ろに乗っていても、誰からも追いかけられたりしないのがやっぱり嬉しくて、私はぎゅうぎゅう三ツ谷くんに抱きついていた。
家に着いて、バイクから下ろして貰い、ヘルメットも外す。三ツ谷くんは私を見て苦笑い。

「名前〜あんま煽んないでな」

ポンポンって三ツ谷くんの手が優しく頭を撫でる。キョトンとした顔で三ツ谷くんを見上げる私に、更に眉毛を下げて三ツ谷くんは息を吐き出した。大きな背中を追いかけて三ツ谷邸に入る。

「なんか飲みもん持ってくから先部屋行ってて」
「うん、ありがとう」

三ツ谷くんの部屋はカーテンで仕切られていて、奥の妹二人の部屋と繋がっている。ベランダへ続く大きな窓の所に存在をこれでもかというくらい主張しているソレがでかでかと掛けられていてドキッと視線を向ける。
東京卍會の特攻服。左腕には弐番隊隊長の刺繍も入っていて、三ツ谷くん専用の特攻服。
不良三ツ谷くんを散々見てきて、最初は狙われてばっかりで嫌になる事もあったけれど、今は守ってくれたトーマンに憧れている。そっと特攻服に触れると三ツ谷くんの香りがして、気づくと私はそれを手に鏡の前で自分に合わせていた。ちょっと着てみたい…なんて思いながらも三ツ谷くんの足音が聞こえて慌ててハンガーを窓枠にかけた。数秒後に部屋に入ってくる三ツ谷くんになんて事ない笑顔で駆け寄った。

「わ、ケーキ!美味しそう」
「パティシエ三ツ谷の手作りだ、惚れ薬入りだぜこれ」

ケーキの乗ったお皿をお盆からテーブルに移動させる三ツ谷くん。苺柄のコップにアップルジュースというアンバランスさもまた三ツ谷くんらしい。

「結構惚れてるけど、まだ足りない感じ?」
「クッ、足りねぇな!上限ねぇからもっと惚れろよな」

そーいう台詞、サラりと言っちゃうのってちょっと狡いよね。その言葉にまた三ツ谷くんへの好き度が上がる。
苺ののったショートケーキを口にすると、程よく甘い生クリームと柔らかいスポンジが蕩けそうで思わず頬に手を添える。

「美味い?」
「うん!めっちゃ!!」
「ならいっぱい食えよ」

つい三ツ谷くんにのせられて、食べていると「名前」不意に名前を呼ばれた。顔を上げて三ツ谷くんを見ると、え、…頬を三ツ谷くんの舌がペロリと舐める。真っ赤になって舐められた頬を手で隠す。

「生クリーム付けてんぞ。たく、可愛い奴…」

そう言うと三ツ谷くんは私の後ろに回って開いた足の間に私を挟むように胡座をかいて座った。後ろからギュッと三ツ谷くんの腕がウエストに回されてドキンと胸が脈打つ。さらに追い打ちをかけるかのよう、三ツ谷くんの顎が私の肩に乗っかって、熱い吐息が頬を掠める。

「食べられないよぉ、ドキドキして」
「食わしてやるよ、ほら、あーん」

右手で握ったフォークでカットしたスポンジを私の口元に持ってくる三ツ谷くんに、首を振るも「いいから」なんて急かされてそれを口にする。緊張して味なんてもう分からない。三ツ谷くんの触れている背中も肩もお腹もどれもかもが熱くて火が出そうだ。

「名前」

ほんのり声質の変わった三ツ谷くん。振り返った先に何があるのかすら分かってしまう。だって頬に触れる三ツ谷くんの手が優しく触れていてツーって唇をなぞるから私も我慢できなくなる。くるりと振り返って三ツ谷くんと向かい合わせになる私に優しく微笑んだ三ツ谷くんは、肩に手を置いて迷うことなく唇を重ねる。小さく触れ合う唇に、心臓が爆音を鳴らしている。

「甘めぇな唇…」

生クリームとか苺とか色んな味の混ざった私の舌を器用に絡ませる三ツ谷くんに、やっぱり私は彼の制服の裾を掴む事しかできない。

「やべ、止まんねぇ…」

そんな焦った三ツ谷くんの声にほんのり目を開けると、目を閉じて私にキスを繰り返す三ツ谷くんの高揚した表情が見えて一気に身体がカッと熱くなる。

「みつや、く、」
「ん〜」
「まって、」

三ツ谷くんとお揃いのニットの中に手を差し込まれてビクンと肩を透かせる。トントンって胸を叩く私に三ツ谷くんはハッとしたように私から身体を離した。降参のポーズでちょっとだけ息を荒くしている。
垂れ目を更に下げて「悪い、ぶっ飛んでた」そう言うと立ち上がった彼は一つ息を吐き出すとこう続けた。

「悪い、ちょっと風呂洗ってくるわ。ちょっとだけ一人で待ってて」

コクリと頷く私の頭をポンと撫でると苦笑いを零して三ツ谷くんは部屋から出て行った。
そーゆー事する覚悟ができてないわけじゃない。けれど今日の今する勇気も本当はなくて。三ツ谷くんがどれだけ私を大事にしてくれているかも分かっているから覚悟はいつでも持っているつもりだけれど、やっぱりいざそうなると、動揺してしまうんだと思えた。

「はぁ〜緊張したぁ」

膝を抱えて蹲るも、深呼吸をしようと顔を上げるとまたあの特攻服が目に入った。
トクンと脈打つ胸に手を当てて立ち上がると私はハンガーにかかったそれを手にとる。きっとすぐには戻ってこないだろう三ツ谷くんに、着るなら今しかない!と思い、制服の上からその特攻服を着てみた。
当然の如く脚も腕も何もかもがブカブカの特攻服。左腕に入っている弐番隊隊長の文字に鏡越しに頬が緩む。

「めっちゃ似合わない!」
「ぶっ、何してんだ名前!」

え?聞こえた声に振り返ると、まじまじとこっちを見ている三ツ谷くん。お風呂洗うの早すぎませんか!?なんて問いかけすら声にならない。吃驚しすぎて声も出ない私に三ツ谷くんは手をスッと出して掌をヒラヒラと揺らした。

「え?」
「スマホ貸せよ。撮ってやる」
「!!!いいよ、そーゆうつもりじゃ」
「いーからいーから、記念に撮っとこーぜ」

ニカッて笑う三ツ谷くんに私の手は勝手に彼にスマホを預けてしまう。裾という裾を折り曲げて形を整えてくれる三ツ谷くんにドキドキしながら突っ立っているだけの私。顎に手を当ててジーッと見つめられて「うん、悪くねぇ」そう言うとスマホを構えてカシャっと数枚撮った。そのまま三ツ谷くんはスマホを置くとその場でギュッと私を抱きしめた。

「三ツ谷くん?」
「名前さ…正直俺、もう我慢がきかねぇ…。こうやって抱きしめりゃ触れたくなるし、触れたらその先もってすげぇ思ってる。けど、今俺らが自分らの気持ちだけでそーしてさ、もしもの事になったらまだ責任の取れる歳でもねぇの。けどいつかの約束ぐらいはできる覚悟持ってお前に触れる。だから…俺に合わせなくていいから何でも言ってな。嫌なら嫌で名前を嫌いになるなんて絶対ぇねぇから。安心して何でも言えよ、な!」

ポスッと髪を撫でる三ツ谷くんの手が心地よくて胸が熱い。思ってる事ちゃんと言葉にしてくれる三ツ谷くんが、堪らなく好き。

「じゃあ一つお願いがある」
「うん?」
「またこれ着てもいい?」

手を広げる私を見てクシャッと笑った三ツ谷くん。
ポンと頭に手を乗せてほんのり屈んで目線を合わせられる。

「あぁ、いつでも着ていい」
「やった!」
「その変わり、脱がせっけどな、俺が」
「う、え、」

スっと腕を引っ張られて三ツ谷くんの腕がドンって壁を背に手を着く。

「か、壁ドン…」

あまりに恥ずかしくてはぐらかした私を見透かしたのか三ツ谷くんはゆっくりと隙間を埋めてくる。真剣な三ツ谷くんの瞳に見つめられて息をすることも忘れそうなぐらいな私を腕の中に閉じ込めるように唇を甘くパクつく。

「抵抗しねぇなら続けるよ」

…抵抗なんてしないよ、だって私だって三ツ谷くんがめちゃくちゃ好き。

「うん…」
「え、マジでいいの?」
「うん」
「いやちょっと待って、心の準備が、」
「三ツ谷くん、覚悟持ってるんじゃ?」
「持ってる持ってる、持ってるよ、」

完全に焦ってる三ツ谷くんが可愛い。私が否定すると思っていたんだろうけど、拒否らない私に焦ってる。キュッと三ツ谷くんの細い身体に腕を回してくっ付くと、ゴキュッて喉を鳴らした。

「調子狂うなぁ今日は…でも、ゆっくりいこーや」

ギュッと三ツ谷くんの特攻服を着た私ごと抱きしめる三ツ谷くんにコクリと小さく頷いた。
私たちの時間はまだ始まったばかりだ。
これからたくさんの事を二人で乗り越えてゆきたい。


-fin-



SPECIAL THANKS LOVE RukA♡