慟哭交じりの口説き文句*2
全身筋肉痛の様な痛みと激しく腰が重たくて目が覚めた。身体にまとわりつく体温高めの肌が心地好くて起き上がれない。疲れてるし忙しいのは分かっている。それでも私の寂しいって気持ちに寄り添ってくれる勝己が好きで好きで堪らない。「かっちゃん好き」
そう言葉にすれば、無意識なのか私を抱く腕に力が込められた。それだけでキュンとして子宮が疼いてしまう。
昨夜あんなに激しく抱かれたはずなのに今この瞬間、勝己の愛が欲しいと思えた。ほんのり目を開けて勝己の大人しく萎んでいるそれに手を触れさせる。軽く上下に擦ると勝己の目がバチッと開いた。
「ンだァ、朝から」
「かっちゃんはそのままでいいよ」
「あ?」
「私がするから」
「………」
納得したのか身体の力を抜いた勝己の下半身の方にもぞもぞと移動してまだしょんぼりとしているソレを口に咥えた。朝から何やってんだって思うけど、朝はわりと貴重な時間で。夜早く寝がちな勝己は比較的朝が強かった。
「たまには朝もいいでしょ?」
「あー…ッ、」
気持ちがいいのか視線だけこちらを向く勝己のソレはもう既に角度をつけて硬くなってきていて…
「名前、」
名前を呼ばれて顔をあげると「こっち来い」…
どうしたの?もしかして勝己もなかなか触れ合えなくて寂しかった?腕を伸ばしている勝己を掴むと強引に引き上げられた。と同時に立場逆転、勝己がくるりと私の上に乗っかって、間髪入れず舌を絡め取られる。素っ裸のまま寝たから、邪魔なものは何も着いていない。脱がす必要もない。ただ脚を開くだけで満たされる。濃厚なキスをしながらも勝己の手はスルスルと脚の方へと伸びていき、閉じた脚の間に手を添えて、中指をツプと腟内に入れ込んだ。
「ンッ、かっちゃん…」
「てめ、濡れ濡れじゃねぇか。エロ女め」
「んーだって…ずっとかっちゃんに抱かれてなかったから寂しかった…キスだっていつしたか忘れちゃってたよ昨日まで、」
「…悪かった」
一言そう言うと、勝己の指が心地よい最奥を突く。そのまま指を二本に増やして中を卑猥な水音を立ててかき混ぜるから私はビクリと肩を震わせる。そんな私の胸の突起を口に含んで愛撫しながら、指を執拗に動かす勝己に、絶頂なんて当たり前にすぐくる。
「かっちゃんっ、イッちゃっ…」
私の喘ぎ声に勝己の指がいっそう速さを増す。出し入れする度に響く水音が鼓膜を刺激して頭が真っ白になる。胸の先端をちゅるりと吸い上げられてピンと勃ったそれにほんのりと歯を立てられたら全身ビクビクビクッと快感に包まれて脱落する。
「ハァッ、かっちゃんお願い、キスして」
私の願いに無言で勝己は顔の横に手を着くと強引に口内を犯す。吐き出す息が熱く頬を掠めるだけでゾクリと感じてしまう。はちきれそうな勝己のそそり立つそれを手で上下に扱くと、勝己の力が抜けて身体をベタりと私にくっつけた。
「クッ、」
眉間に皺を寄せて目を細める勝己は、額からポタッと汗を落とした。汗ばんだ勝己の体温が最高に心地よくて、私は勝己の喉仏を舌でペロリと舐めると、ビクンと身体を捩らせた。
「てめェ、」
「くすぐったかった?気持ちよかった?どっち?」
「…どっちもだ、馬鹿がァ」
ちゃんと答える勝己が可愛くて、私はもう一度喉仏の周りを舌でチロチロと舐めると、ハァッ…と、普段あまり聞かない甘ったるい声を出した。
基本的にセックスでも主導権を握りたいタイプだと思う、勝己って。常に私を組み伏せる事が好きなんだと思う。でもたまにはこんな勝己もいいよね。私の手と舌で喘ぐ勝己は貴重で、朝の名物にしたいなんて願望が生まれてしまう。
「かっちゃん好きよ」
「…あぁ」
「大好き」
「もう黙れよ」
結局私を組み敷いてゆるゆるな私の腟内に挿入してくる勝己の頬は紅く高揚している。汗ばんだ身体と、熱い吐息。甘ったるい感触に酔いしれる。こんな時ぐらい甘い言葉を囁いてもいいと思うけど、言葉で何か言う事はない。それでも勝己の気持ち全部で私の身体を愛撫してくれるこの時間がとてもとても愛おしく、勝己への愛がいっそう深まったーーーーはずだった。
◆
「えーっと、今日はどうしたん?」
ナホヤくんの顔が苦笑いに変わったのは気にしないようにしよう。
あれから一週間。仕事人間の勝己は、毎日午前様に帰ってくるなりシャワーを浴びて、私が起きる頃には爆睡していた。疲れているだろうって起こしたら可哀想だからそのまま仕事に行くけど、毎日その繰り返しだからほとんど顔を合わせる事のないまま今日に至る。
まるであの日の行為が嵐の前の静けさだったかのようにすら思えてしまう。
ラーメン屋【双悪】のカウンターで肘をついて盛大な溜め息を漏らす私に、ナホヤくんがお水を出してくれた。
「ナホヤくんって休み無しでずーっと仕事してるじゃん。嫌になったりしない?たまには休んで遊びに行きたいとか思わないの?」
カウンター越しに麺を茹でているナホヤくんにそう聞くと、ナホヤくんはクッと笑った。
「名前ちゃんって寂しがりだよな。俺はこの店気に入ってっから。会いてぇ奴らはだいたい俺がそう思うと、あっちから店にやって来たりするもんだし。な、ソウヤ!」
「え?うん」
何か言いたげなソウヤくんは私を見ると直ぐに目を逸らした。確かにこのお店はナホヤくんソウヤくんの昔の馴染みの人も多い。よくよく楽しそうに雑談している姿を見て、友達多いなぁなんて思っていた。
「ナホヤくんは、悩みとかないの?」
別になんてことの無いただの質問だった。掘り下げる事もないんじゃないかと思っての質問だった。だっていつもニコニコ笑顔のナホヤくんに、悩みがありそうには見えない。なんて口にしたら怒られそうだけれど。
湯切りをしていたナホヤくんは、一つ息を吐き出すと、麺をどんぶりに流すように入れた後視線を私に移した。
「一個だけある」
「えっ!?」
あるの?と顔を上げた私の頬に手を添えると、続けてこう言ったんだ。
「好きな女がぜんっぜん俺の気持ちに気づかねぇの、可哀想でしょ、俺」
頬の手は一瞬でナホヤくんの方に戻っていくけれど、もう触れられてもいないそこは、燃えるように熱いんだ。
トクンと、ナホヤくん相手に初めて私の胸が音を立てた。