令和二年春から都立K学園にインターナショナルコースができた。
生徒数も増やして、専属の先生たちも補充して、ようやくそれが慣れてきた二月一日。
世間一般では二週間後にバレンタインを迎える。
なんとなく、校内がザワついているのを教師たちも感じていた。
学生にとってのバレンタインというのはわりと特別で。女性から男性に愛を伝えても良い日とされて、告白と同時にチョコレートを送る習慣がここ日本では行事付られていた。
バレンタインをキッカケにカップルになる子達も増えるだろうって。
勿論、先生たちにとっては単なる義理チョコに過ぎないけれど、それでも気になる相手がいるというのは、多少なりとも気合いが入る、そんな日であろう。
「今年は、誰が一番多いんだろうね?バレンタインのチョコ!」
「そんなの、え、誰!?宇隨先生?いや、リヴァイ先生多そうな気が…」
定例の飲み会という名のガールズトーク。
K学の女性教諭たちは年齢も近く仲も良くて、こうして仕事終わりにはよくよく皆で飲みに来ていた。
所詮は駅前の居酒屋、男性教諭達と被る事もしばしばだけれど、今日はそんな気配微塵もなかった。
いつもの掘りごたつ席にいつもの四人で座っての雑談。皆言っちゃえば三十路前後の結婚適齢期であって、そろそろ自分たちの幸せを一番に考えてもいいと思える頃だった。
先生…ときくと、わりと職場恋愛も多く、この四人も満更ではなかった。
「確かにー!!リヴァイ先生の人気はここ数年稀を見ないかも。」
頬杖をついてボーッとリヴァイを思い浮かべる英語教師のゆき乃の隣に座っている家庭科教師の奈々がそんなゆき乃の腕を小突いた。
「どーするの?生徒に取られちゃったら!」
「そーですよ、ゆき乃せんぱぁい!でもでも、リヴァイ先生と噂になんてなったら、実弥せんせー絶対おこですよぉ!!」
一つ歳下の簿記教師の美月が最近切ったばかりのおカッパヘアを揺らしてニヤリと笑った。
その隣で枝豆をパクついてる古文のハルが美月の言葉にニンマリと微笑んだ。
「別に実弥先生とは何も、」
ほんのり頬を赤らめているのはお酒のせいだけではなく、ここにいる三人は当然の事ながらゆき乃の気持ちも知っている。
奈々に関しては学生の頃からの親友という事で、ゆき乃の恋愛事情なんてお手の物だった。
「はいはい、照れない照れない、ゆき乃は昔っから素直じゃないんだから。あたし達の前では素直になりなさい!ね?」
ポカンと奈々に腕を優しく殴られた瞬間、「ご新規8名様ご来店でーす!」と、店員の元気な声にそちらに視線を移した。