貴方に繋がるまわり道A

翌日から放課後、繁華街を見回りに行くことになった教師たち。
二人一組でペアを組んでの見回りだった。
特に誰かとは決められてなかったからゆき乃と一緒に行こうとしたら、「行くぞ奈々!」手を掴んだのは天元。


「まぁ、男女じゃなきゃいざって時に入れないからな、」


そう言う天元はどこか楽しそう。







「天元先生、あの…」

「なんだあ?」

「…あのあたし達って生徒がいないかの見回りというか、」

「ああ、そうだな!」


目の前にはバレンタインのチョコレート売り場。
わんさかと沢山いる女性たち。学生から大人までが数あるチョコを丁寧に物色していた。
高級ホテルやブランドチョコはパッと見でも目を引く物が多く、自分が食べたいと思う程だ。


「そうだな、じゃないですよ!ここに生徒がいたとしてもなんの意味もないんですけど。…もしかして、チョコが欲しいんですか?」

「アッカーマンに勝たねぇといけねぇからなぁ!」


そういや、先日の飲みでリヴァイ先生とそんな競い合いをしていたんだっけ?冨岡先生の本命云々で流れたと思っていたけど、まだ終わってなかったの?


「勿論、奈々は俺にくれんだろ?」


当たり前に言う天元がちょっとだけ可笑しい。他の人に渡す気はさらさらないけれど、そうやって当たり前に言ってくれた事は少し嬉しかった。
少なからずあたしが天元を特別視している事は伝わっていそうだ。


「本命…って事、ですよね?」

「当然!」

「でもね天元先生、今年のバレンタインって日曜日なんですよねぇ。一日前?それとも、一日遅れ?…そういやゆき乃ってば、学生の頃一日遅れでチョコ渡してたなぁ〜。当日はね、緊張しちゃって渡せなくて、翌日呼び出したんです駅の改札前に!それでも渡しに行けなくて、相手に階段降りて来て貰ってね。大きな柱の影であたし達が見守る中めちゃくちゃ勇気出して渡してたの!あの時のゆき乃の勇気は凄かったと思う!はぁ〜青春だったなぁ!」


つい昔を思い出して口端が緩んだあたしを呆れた顔で見下ろす天元。ちょっとだけ、面白くなさそうな顔で。


「正直俺にはどーでもいいが。でもそれ、不死川には教えてくれるなよ?たぶん派手に落ち込むぜ、」


ガハハハって笑う天元だけど、過去まで嫉妬してくれる不死川は女からしたら悪くないと思うんだよなぁ。誰だって過去があって今がある。そりゃ人に言いたくない過去だって一つや二つみんなあると思うの。でも好きな人の過去ごと愛されたら素敵だなって思うし、できればそうして欲しい。

結局ゆき乃の話をした事で本命の話が逸れて、その日はそれ以上突っ込むことはなかった。

その翌日、家庭科授業ではみんなの要望で、チョコレートを作る事になった。

みんなそれぞれ好きな梱包を用意してきて各自好きなチョコを作っていた。


「わぁ、いい匂い!」


たまたま通りがかったゆき乃が顔を出した。


「なになに?もしかしてバレンタイン用に?」

「そう!ゆき乃先生も作る?」

「えっ!?いいの!?」

「勿論!!」

「じゃあ作りたい!」


急遽合流したゆき乃はチョコを溶かしてただカップに移し返すという一番簡単な奴だけれど、それは楽しそうに作っていて。


「そういえば昨日実弥先生と見回りだったんだよね?」

「!!!!う、うん。」


なんかあったな。
明らかに動揺しているゆき乃に悪戯心が芽生える。


「なに?キスでもされた?」

「ま、まさかぁ!!」


あまりにゆき乃が大声で否定するから生徒たちが寄ってくる。


「あれー?ゆき乃ちゃん真っ赤!!なになに、恋バナ?聞きたい、聞きたい、大人の恋愛!!」

「お話できるような事はございません!!!」


ゆき乃の本気な返しにみんなが余計に突っ込んで聞いてきて。
だけど、奥のテーブルでそんなゆき乃に食いつくことなくひたすら真面目にチョコレートケーキを作っていたのは天元の事を好きだと追いかけている雛、まきを、須磨の3人だった。