放課後。
今日も見回りだった。
なんとなく天元と一緒に行きたくなくて不死川と一緒にいた。ゆき乃はリヴァイ先生と見回りって言ってた。
美月は安定の冨岡先生とで、ハルは煉獄先生。なんだか自分だけが余り物みたいに気持ちになってしまう。
あたしと天元だってただ仲がいいってだけで、不死川とゆき乃のように想いあっているなんて事実なんてもんはなく、付かず離れずな距離を保っていた。
「あァ、お前も溜め息か?」
別に溜め息なんてついた記憶はないけど、あたしの顔を見て面倒そうに口を開く不死川。
「実弥先生さ、ゆき乃にキスした?」
「!!!!!」
明らかに動揺する不死川が今だけはちょっと可愛く見えた。いつもは強面の顔なのにゆき乃の事になると当然のごとく顔色が変わる。この人は素直な人だ。
手の平を額に当てて俯いた不死川は、小さく言った。
「ゆき乃、なんか言ってたか?」
キスしたていで話を進めた不死川に内心爆笑したくなったけど、さすがに悩んでそうな本人を目の前にして爆笑はできまい。まさかゆき乃より先に不死川の気持ちを聞くはめになるなんて思いもしなかったけど。
「気持ちが不安定って言ってたけど。」
「…それって、0じゃねぇってことだよな?」
「うーん。そうだね。今のゆき乃を見ていても、かなり揺れてるように見えるかな。」
「ならいい。俺が0じゃなきゃまだやる事はある。まぁ可能性が0でも俺はアイツ以外には興味もわかねぇがなァ。奈々、お前はどうなんだ?俺から見たら宇髄も冨岡と変わらねぇぞ。ちゃんと言葉にして話してんのか?」
まさかそんな事を不死川に言われるなんて思ってもみなく。だいぶ出だしが遅い分、直球になっている不死川を笑うことなんてできそうもない。
あたしだって、天元の恋人になりたい。
ちゃんとした、天元の恋人に。
「おい、話は後だァ。ちょっと黙って着いてこい」
グイッと肩を抱かれて不死川はあたしをラブホテルの中に誘い込んだ。
真っ直ぐ前を向く不死川の視線の先にはうちの生徒だろうか?制服を着た男女がいて、入口で部屋を選ぶとすぐにエレベーターに乗った。
「すいません、自分達K学の教師ですが、今入った制服の二人組のルームキー貸して貰えませんか?うちの生徒かもしれねぇんで、」
「お兄さん、制服貸し出しかい?最近増えててのぉ、制服プレーが。あっちに色々あるから選びんさい!」
受付のおばあちゃんにそう言われてキョトンと見つめ合うあたしと不死川。
「ちげーよ、ばあさん!俺らはK学の教師だっつってんだァ!さっさと鍵よこせよ!」
「はっ!?制服の前に部屋を選んでくれよ、お兄さん!」
耳が遠いこともだし、完全にあたしと不死川をお客だと勘違いしているおばあちゃん。
なんだかちょっと可笑しくて。相手がゆき乃だったらもうこのまま入ってやろうか!なんて言い出すんだろうけど、生憎あたしだから必死におばあちゃんに鍵を出せ!って訴えていて。
「てめぇ、何笑ってやがる!一緒に説明しろォ!」
ガシッと腕を掴まれて不死川の前に差し出されたあたしはK学園のIDカードを出して説明した。
ようやく分かってくれたんだろうおばあちゃんから鍵を受け取った時には15分ぐらい過ぎていて…。
「もう始まってたらどーするんですか?」
そう問いかけたあたしの言葉に明らかに面倒そうな顔を見せた不死川。
一瞬考えて小さくため息をつくと、「フロントから電話借りるか、」さすがに鍵を開けて中に入ってK学園の生徒ではなかったらそれもまた問題で。似ている制服なんて沢山あって、確かな証拠はなかった。
不死川と二人、エレベーターからフロントに戻った時だった。
「天元先生、この部屋がいいです!」
聞きなれた名前と姿に後ろの不死川があたしに激突したけど、動くことが出来なかった。