最初に声をあげたのは入口付近にいたハルだった。身体半分乗り出すようにして「あ、煉獄先生たち、」なんて言う。それに続いて隣の美月がハルに乗っかる勢いで入口を見ると「わお、全員揃ってる!」笑顔でゆき乃と奈々に目配せをする。
「全員?」
そんなゆき乃の声と同時、目の前を通過していく店員。その少し後ろ、我がK学の先生たちが一斉に入ってきた。
「おー奈々!お前らも来てたのか!?」
派手好きな美術教師の宇髄天元が奈々に気づいて軽く手を挙げて足を止めた。後ろに続くハルの好きな歴史教師の煉獄杏寿郎と、美月の好きな体育教師の冨岡義勇。その二人から少し離れてゆき乃と噂のある数学教師の不死川実弥が歩いて来た。
不死川のすぐ後に、インターナショナルなリヴァイ、エルヴィン、ミケ、ファーランと続いたそれは、店員の通された部屋ではなく、この4人がけの掘りごたつ席に迷うことなく乗り込んできた。
「あーネェちゃんネェちゃん、俺らここでいいかな?こいつら知り合いで!」
振り返って誰もいない事に気づいた店員が慌ててこちらに駆け寄って来たところで宇隨がそう伝える。
生憎隣は「ご予約席」とご丁寧に書かれたプレートが貼ってあって、それを見た店員が「では、奥のお座敷に皆様でお移りください。」そう言われ、ゆき乃達は重たい腰を上げてそれぞれの荷物を手に取った。
「ゆき乃貸せ、持ってやる。後、俺に捕まれ。」
言ったのはインターナショナルコースの体育教師、リヴァイ・アッカーマン。近年稀に見る人気もので、生徒からも莫大な人気を得ている。
その実態はクールなのか、ちょっと変わっているのか、ゆき乃ですら知らずにいる。
「リヴァイ先生、大丈夫ですよ。わたしそんなに酔ってないと思うの。」
ゆき乃が持っていかれたバッグに手を伸ばすと、その手をリヴァイに取られてグイっと引き寄せられる。
「顔が赤い。お前はすぐ顔にでるからな。念の為だ。」
ふわりとリヴァイの手がゆき乃を掴んで下駄箱から迷うことなくゆき乃のパンプスを出すとそれを足元に置いてくれた。
「すげーな、リヴァイ先生!ゆき乃先輩のパンプスまでチェック入ってる!あんな事されたらさすがにゆき乃先輩も落ちる?」
チラリと不死川に視線を移した美月に、リヴァイの行動をしっかり見ていたであろう不死川が小さく舌打ちをした。
リヴァイに捕まって、というよりかは、リヴァイの腕がゆき乃の腰に回っていてガッチリ抱き留めて歩くリヴァイは、不死川よりずっと小柄なのになんでか大きくみえるのはその態度と口の悪さだろうか。
ここにいるインターナショナルの先生たちはそれは流暢な日本語を話す。どこでそのイントネーション覚えたの?というくらいに。
このリヴァイもそれは例外ではなく、髪も黒く一見日本人に見えなくもないが、その身体にはやはり海外特有の紳士的な血が流れているのかもしれない。
「おい奈々。ゆき乃とアッカーマンはその、どんな関係だァ?」
早々に宇隨と一緒に大部屋に移動していたゆき乃の親友奈々の細い腕を掴むと、不死川が血走った目で奈々に小さく聞いた。
勿論ながら奈々は微笑んで「実弥先生、気になるなら自分で聞きなよ!ふふふ」なんて笑ってみせる。
別に意地悪している訳でない。現にゆき乃からリヴァイの事を何か聞いてる訳ではなかった。
ゆき乃って人は昔から自分の心根を話すのが苦手な性格で、恋愛事情も知っているとはいえ、本当の本音まではもしかしたら誰にも話してこなかったのではないかと思えるほどに。
まぁそうはいっても親友を名乗るほどの仲の良さ、見ていれば分かるものだけれど。
「聞けるかよ、こんな事…」
小さく呟いた実弥の独り言はゆき乃にも誰にも届かない。