それぞれの恋愛事情B

「リヴァイ先生は心配性ですね。」

「ゆき乃にだけな。」


クシャッと小柄なリヴァイにしては大きな手がゆき乃を優しく撫でて大部屋の隅、当たり前のように自分の隣に座らせた。
そんなリヴァイ達を見てエルヴィンとファーラン、続いてミケは内心笑いながらも口に出した。


「リヴァイが珍しく本気だな。」

「そうだな。てか初めてかも、俺の知る限り。」

「そりゃ見物だ。」


実の所、ゆき乃の心は上がっていた。確かにそれまでは実弥に向かっていたであろうゆき乃の気持ち。周りから見たらくっつくのは時間の問題だとすら思われていたかもしれない。けれど、お互いに恋に慎重になっているせいか、同じ職場という事もあり、今一歩踏み出せずにいた。そんな時にこのインターナショナル開設でリヴァイがやって来た。
先生たちは皆日本語を話す事も多いけれど、英語教師のゆき乃はよくよく英語で話しかけていた。それで話す機会も増え、インターナショナルの先生たちと飲みに行ったのがキッカケだった。
話し込んでいるうちにいつしかリヴァイの心にゆき乃への熱い想いが芽生えたのはそれほど時間がかからなかった。

そして、クリスマスに二人でデートをした事もまだここの女性陣たちは知らずにいるけれど。
リヴァイの中ではゆき乃は完全に自分の女であって、それを隠す事すらしていなかった。
そんな二人でも、これといった言葉が届いている訳ではなかった。だからゆき乃はその言葉を秘かに待っていたんだ。

実弥への恋心もまだ消えてはいないのかすら、自分でも不明な曖昧な中。

皆がそれぞれ席についてビールも届き改めてカンパイ!


「よぉアッカーマン!今年は俺とチョコの数競走すっか?」


どうやら生徒たちの噂も宇隨の耳に入っているらしい。
ここにいる先生たちは皆、ほどよく生徒から人気もあって毎年バレンタインには数え切れないチョコを貰っていた。中でも宇隨天元の数は半端なくて、他の三人に圧勝であった。
今年はリヴァイの登場により生徒たちがかなりリヴァイに対して好意を持っている事を知り、そんな戦いを投げ打ったんであろうけれど。

宇随の言葉に「あぁ?競走だと?」ド低いリヴァイの声に奈々がくすくす笑っている。



「負けず嫌いだなぁ、天元先生は。」

「派手に差つけて勝ってやろうじゃねぇか!言っとくが俺は本命しか受け取らねぇからな!」



ニカッと宇隨の白い歯が見えた。その隣、奈々は軽く微笑んではいたけれど、その胸の内は奈々しか分からない。ゆき乃と不死川が時間の問題であったのならば、この奈々と宇隨だってそうだと思いたいくらいに仲が良かった。けれどそれが本物なのかは二人にしか分からず、このもどかしい関係にそろそろ終止符を打ってしまいたいと思うのは奈々の方だけなのだろうか。


「本命しか受け取らないならあたしの義理チョコはいらない?」

「あ?受け取るに決まってんだろ、奈々の本命チョコ!おいおい妬くな妬くな、俺がモテ男だって認めろよ、いい加減。な?」


ポスッと宇隨の手が奈々の肩に回される。まだビール一杯しか飲んでいないのにもう酔った?肩に置かれた手にそっと自分の手を重ねると、宇隨の視線が当たり前に飛んでくる。


「その他大勢と一緒にされたくなけりゃ、本命チョコ持ってこいよな。」


耳元でそう囁く宇隨に、言われずとも奈々の胸はトクンと高鳴ったであろう。

これは、本命チョコならその先があると思っていいのだろうか?