君と恋がしたい@

2月4日、木曜日。
週休二日制の土日休み。恋人がいるのといないのでは全然違うなぁって。
哲也と別れてから早3年。…私ってば3年もまともな恋愛してなかったんだ…なんてしんみり。

前回の女子会に乱入してきた先生たちはそれは飲んで食ってどんちゃん騒いだものの、全部あちら側で私たちが最初に飲み食いしていた分までも支払いをしてくれた。
割り勘で!って言ったら宇隨先生に「身体で払ってくれんなら受け取るぞ!」なんて言われて皆苦笑い。なんなら奈々先輩に纏めて支払いをお願いしようかと思ったほど。
今まで浮ついた話もなかった訳じゃないけど、この前の飲みで確かに動いているのが分かった。
ハルも、奈々先輩も、ゆき乃先輩も。


「なんだよさっきから溜息ばっかつきやがって。悩みかァ?」


数学準備室の一角を借りて簿記の授業の残骸を片付けていた私に、いつの間にかそこにいたのか不死川先生が話しかけてきた。
先生同士の中でも不死川先生とはわりとよく喋る方だった。残念ながら冨岡先生とよりも。そんな事本人に伝わったら「俺で悪かったなァ、」なんて舌打ちされるだろうけど。


「悩みに見えますかね?」

「見えるから聞いてんだァ。ちげーなら構わねぇが。」


かなり強面の顔面だけど、不死川先生は実はめちゃくちゃ優しくて、情に熱いって嫌でも知っている。
いざって時は頼りになるし、あれ、ゆき乃先輩!!!これリヴァイ先生より不死川先生のがいんじゃないの!?なんて秘かに思う。


「いや、バレンタインですね、校舎内は。と、思って。」


私の言葉に一瞬目を丸くした後、フッて顔を逸らした。


「冨岡誘ったらどーだ?あのバカはハッキリ言わねぇと気づかねぇぞォ。」

「…不死川先生でも分かるのに、なんで伝わらないんですかね、冨岡先生には。」

「だからそれは美月が言えばいいだろがァ。」

「でもね、不死川先生。やっぱり女って生き物はいつなんどきも好きな人から好きだって言われたい生き物なんです。私に限らず、ゆき乃先輩も。」


話をすり替えた私にチッて舌打ちが届く。
数日前の飲みの席でこの人は完全にリヴァイ先生に負けてた。負けって言葉が大嫌いそうに見えるけど、あの日の勝利は残念ながら不死川先生ではなくリヴァイ先生。だってゆき乃先輩の嬉しそうな顔。あんな顔されちゃ不死川先生だって何も言えないよね。



「面倒くせぇな、どいつもこいつも。」

「ダメですよ不死川先生!忠告してあげます!リヴァイ先生はもうゆき乃先輩の唇奪ってますから!悔しかったらゆき乃先輩のキス、奪い返してください!」


さすがに不死川先生も今の言葉に呆気をとられて口をポカンと開けている。そりゃそーだよ。だってゆき乃先輩は本当に少し前までは、不死川先生に一途だったもん。見ている限りでは。

でもだから私もわかった。
うかうかしていたら誰かにとられちゃうって。悔しいけど冨岡先生を誰かに取られたくはない。
そそくさと片付けを終えた私は、眉間に皺を寄せて黒板に背をつけていた不死川先生を見ると、目が合って。


「おい美月。その、ゆき乃はもうアッカーマンの事が、」

「弱気な不死川先生なんてらしくない!惚れてんのはこっちなんだから仕方ないッスよ!ほら、悩んでる暇があるならゆき乃先輩探してかっさらっちゃって下さい!」


バシンって不死川先生の腕を叩くと私は自分にも喝を入れる為にパシンと頬を叩いた。
善は急げで、「お疲れ様ですっ!」…困惑している不死川先生を背に数学準備室を出た。