運命の相手

「今お茶入れるから待っててね。」


コクッと頷く俺にニッコリ微笑んだ苗字先生は、お茶っ葉を給湯器に注ぎ込んだ。
てゆうかこんな素敵な部屋があったなんて。高校生活の半分以上は損してるじゃん!!


「あ、珈琲のがよかった?紅茶もあるけど、」
「な、なんでもいいです!」
「じゃあわたしと同じ紅茶にするね!」
「はい。」


トクン、トクンと胸が脈打つ。ふかふかのソファーに座って待っていると、すぐにティーカップに紅茶を注いだ先生がこっちにやって来た。


「お砂糖とミルクは?」
「じゃあ一つづつ。」
「りょーかい。」


ポトっと砂糖とミルクを落とした先生は、銀のスプーンで優しく掻き混ぜて俺の前に差し出した。
甘い香りと紅茶の濃厚な香りに頭がクラクラする。


「我妻善逸くんだよね。初めまして、苗字名前です。わたしのお部屋に来てくれてありがとう!」


その場でぺこりと頭を下げる苗字先生を見つめる俺にふわりと微笑んだ。


「あの先生!なんで俺の名前?」


見つめる先の苗字先生は真っ白なティーカップに口をつけて紅茶を可愛く啜って飲んだ。その美しさに思わず俺はゴクリと生唾を飲み込む。
顔を見た時から思ってたけど…この人めちゃくちゃ可愛い!美人だけど笑うと幼く見えてめちゃくちゃ可愛い。
こんだけの逸材なら不死川が好きになるのも分かるかも。


「さてなんででしょう?」


質問返しされて狼狽える。でももう聞こえちゃったんだよね、運命の鐘の音が。
リンゴーン♪って揺れる大きな鐘の下で純白のウェディングドレスを纏った苗字先生と、その隣でタキシードに身を包んだ俺の姿が。
これはもう、一つしかない!!


「俺の事好きだから!!!お、俺と結婚してください!!!」


ガバッと頭を下げてそう叫んだ俺に、クスクスって笑い声が聞こえた。でもそれはいつもの馬鹿にしたような感じじゃなくて、もっと好意的な音。


「善逸くんってば、それ会う人会う人に言ってない?…わたしは、わたしの事だけ見てくれる人じゃないと結婚したくないの。」
「それは、昨日までの俺!今日からの俺は苗字先生一筋だよ!信じてよ!俺、苗字先生と出会う為にこの学校に来たんだって、今分かったよ!」


興奮気味にパシッと先生の手を取ると、なんてゆうかめちゃくちゃ柔らかくてしなやかで、こ、これが女の人の手なんだって思ったら鼻血が出そうになった。
同級生や同じ年代の女の子達は、そんな俺をいつも気持ち悪がって見てくるけど、苗字先生は違う。
この人は、そーいう目で俺を見てはいない。


「ふふ。分かったわ。じゃあわたしが我妻くんの事を本気で好きになったら、その時はお付き合いしようか。今日出会ったばっかりで我妻くんの事、見た目でしか判断できてないから、あなたの事、いっぱい教えてくれる?」
「もっ、もっちろんです!!!!…ちなみに見た目はどうですか?何点?苗字先生は、一億点です!」


勢い余ってガツンとテーブルの足に膝をぶつけるけどそんなのどーでもよくて。
だって俺の前で俺を見て楽しそうに笑ってくれてるんだもん、苗字先生が。


「一億もくれるの?嬉しいなぁ。我妻くんは、100点!中身磨いてまたここにおいで。ね?」


ふわりと苗字先生が俺の髪に触れた。
雷に打たれてこの色に変わっちゃった俺の髪。地毛なんだ、染めてないんだ。先生たちは誰も信じちゃくれないけど。


「これ、地毛なんです。本当に染めてなくて。」
「わたしは好きよ、この色。我妻くんによく似合ってて。髪の色なんて本当はどうでもいいのにね。校則に縛られて学校に来たくなくなるぐらいなら、もっと自由にしてあげたらいいのに…って思っちゃうなぁわたしは。」


初めてだった、この髪を褒められたのは。
冨岡先生に毎日のように殴られるからちょっとトラウマになってたのも嘘みたいに消え去った。


「苗字先生…うううん、名前先生!!俺、名前先生をお嫁さんにする為に頑張るから、見ててね!」


口をつけていなかった紅茶を一口飲むと、まるで名前先生みたいな上品な味だった。