ユとピンクムーン


ヤバいなぁ、絶対ヤバいよ、うん。

ここんとこずーっともう脳内が勇征で埋め尽くされていて、自分でもどうしていいのか分からなかった。かと言ってこんなこと相談出来る人もいなく。

一応のところ、LDHのタレント内での恋愛は禁止されている。ただ、タレントとスタッフの恋愛は暗黙の了解であって、隠れて付き合っているカップルは、確実にいるわけで。


「はぁ…、」


ごすっとデスクに頭を突っ伏している私に「え、雪乃さん?」ちょっと困惑した声が届いた。


「なんでしょうー、」


振り返りもせず、その体制のまま覇気のない声で答えると「雨雲背負ってるじゃないですかぁ!」聞き覚えのある声に漸く顔を上げて振り返った。


「なんだ、寧々か。」
「もっと喜んでくださいよ?」


後輩の寧々はRAMPAGE付きで、ここ数年はツアーだったりで全国飛んでて忙しそうだったからまともに話したりしてなかったけど、


「男できた?」


なんかキラキラしてない?いや元々綺麗な子だったけど、話すとキャピキャピもしてたけど、なんかちょっと落ち着いた?


「え?なんですか、急に。」


そして目を泳がせる寧々の腕をガシッと掴んだ。


「見つけた!!お願い、助けて!」


泣きそうな顔で後輩に縋る先輩でも何でもいい。どうしたらいいのかわかんない。もう迷ってらんない。

一歩後ずさるどころか、寧々はニヤリと口端を緩めてニッコリ微笑んだんだ。





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「えっ!?ゆせく、モガッ!」


慌てて寧々の口を手で塞ぐ。思いっきり顔面を近づけると苦笑いで頭を下げた。


「シー!!名前はダメ。」
「すいません。あまりに想定外だったので。てっきりしぇんぱいは直人さんと、かと?」
「相手にされてないよ、直人さんになんて。それよりなんかもう自分が怖い。ゆうせ、…ユって呼ぶわ。ユってあんなオスだったの?なんかキスとか普通にしてくるんだよ。私、嫌じゃないし、なんかもっとしたくなっちゃうし、ユに言うと喜ぶし、なんかもう、どうしようっ!?」


思いの丈を吐き出した私に向かって寧々が一言「しぇんぱい、惚気?」キラキラ笑顔で言うんだ。思いっきり首を横に振って「どこが惚気なの?こんなに悩んでるのに!!」そう私は困ってる。

彼らのマネージャーである私がメンバーの一人とできてるなんて、お話にならない。こんな事、絶対に許されない。ファンもみんなも。


「え、だってユもしぇんぱいのこと好きとしか思えないし、しぇんぱいもユのこと好きって事でしょ?同意の上でキスしたんでしょ?」


寧々の言葉にパチっと瞬きを繰り返す。


「そうなの?え?そうなの、私。」
「…自覚なし!?」


爆笑する寧々の細い手首にはゴールドのブレスが着いていて、あれどっかで見たことあんなぁーなんてボヤっと思ったものの、すぐに脳内が勇征で埋め尽くされる。


「でもしぇんぱい、付き合ってないのにキスするのはちょっとマイナスじゃないですか?ちゃんと確かめた方がいいですよ?ね?」


うーんって腕を組む寧々はやっぱりキラキラ見えて。微かに香る香水も男物?

黙り込む私にニヤっと笑うと「いい事教えてあげますね!」そう言って耳元でとんでもない事を放った―――――。



―――今夜は平成最後の満月で、ピンクムーンって言うんですって。ゆせくん誘ったらどうですか?狼に変身するかもね、―――




((狼っ!?てか誘うって、私から!?って、寧々の男誰よっ!?))
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