レコーディングを始めて早4時間、まだまだ終わる気配無し。とことん歌と向き合って一番いいのが出るまでは絶対に辞めないっていうのは、他のグループも同じで、まだまだ新人の2人は今もブースの向こうで頑張っている。
今日は大雨で夕方になって雷も鳴りはじめていた。みんな足早に帰路を急ぐ中、哲也さんのアメコに顔を出した私は、ボーカル2人の分の珈琲も注文して事務所に戻った。
出てきた時と変わらないブースの中。コンコンとドアを叩いて、ブースの外のソファーテーブルに珈琲を置いた。
私を見て嬉しそうに微笑む勇征と、笑顔で頭を下げる颯太。
「まだ終わらなさそうだなぁ、」
ボソッと呟いたものの、休憩なのか珈琲に向かって2人が歩いて来た。
「雪乃さーん!無事終わりました。むっちゃええのん、出ましたー!」
颯太がニコニコしながらチョコモーモーを一口飲むとフゥーって小さく息を吐き出した。
「お疲れ様。随分長かったねぇ、今日は。もう外大雨だよ。雷まで鳴ってる!」
「えっ、マジでっ!?」
颯太の後ろ、安定のブラックを一口飲んだ勇征が若干の苦笑い。そんな勇征に向かって「勇征くん、雷苦手でしたっけ?」…可愛い弱点を口にした。
「…いや、別に。」
ムゥってアヒル口でそっぽを向く勇征だけど、颯太はニンマリしていて。
「じゃあ私も帰ろうかな。今夜は寒いからポトフでも作ろうかなぁー!」
「えーむっちゃ食いたい!僕も行ってええ?」
颯太が私に着いてこようとして、「あ、颯太。なっちゃんと約束は?」…勇征の言葉に眉毛を下げて「忘れとったわー。しゃあない行ってきます。勇征くん、雪乃さん、お疲れ様でしたー!」ペコッと頭を下げて軽快にここから出て行った。
それを確認して勇征がソファーに座る。そのままトントンって隣に私を呼びつける。
「本当は怖いの?雷。なんかの媒体で言ってたような?」
「…怖いんじゃなくて、苦手なの。」
アヒル口で私をチラ見しつつまた珈琲を飲む。ここはまだ隔離されているから外の光は入ってはこないけど、ドアを一歩出たら雨の音も雷の光も分かるわけで。
「じゃあ仕方ないから手繋いであげるー!」
スッと勇征の大きな手に指を絡めると「足りない。」片手で私を自分の太腿に乗せて後ろからギュっと抱きしめられた。
「勇征…なんか、照れる。」
「なんで?」
「だって顔見えないのに、」
「お尻触るな?って、」
「ンッ、」
ダメだよ、こんなところで、なんて思うものの勇征の温もりは心地よくて。つい誘惑に負けそうになる。
「癒される…。雪乃こっち向いて?」
「そっち向いたらキスする?」
「うん。だから早く、」
「もう甘えん坊!」
「いーじゃん、雪乃にだけだもん。」
くるりと反転して勇征の膝の上、ラッコ座り。首に腕をかけて見つめ合うと迷うことなく腰を引き寄せて唇をハムって食べられる。舌で勇征の赤みを帯びた唇をなぞるとクスって笑われた。
「えっちだなぁ雪乃。唇舐められたの初めてなんだけど?」
「勇征だって舐めるじゃん。」
「え?ほんとに?舐めてる、俺?」
「ン。無意識なのずるい。」
もう一度舐めようとしたら同じように舌を出す勇征のとぶつかって、パクッて舌を甘く吸い込まれる。これも無意識?ずるい人だなぁ…なんて思いながら勇征と舌を絡め合っていたら、閉まっていたはずのドアがガチャッと開く音がした。
咄嗟の事で降りる暇もなくそのまま2人で振り返ると、思いっきり目を見開いた颯太。
目が合った颯太は、「ごめんなさいっ!」そう叫んでドアを閉めた。
「…わ、目あった。」
「俺から言っとくから、雪乃は気にしないで。」
「…うん、でも、」
「んじゃ、家で続きしよ?」
ニッコリ微笑む勇征はマイペースすぎるんじゃないか?って思うんだけど、それも勇征のいい所なんだって思うと悪くない気がした。
((はっ!?てか雷すごいんだけどっ!!え、タクシー使おうよ、俺こんなの無理!!…))