空白のエロス


長崎でのLIVEの後、メンバーみんなと私達スタッフも一緒に食事に行った。地方ともなると美味しいご飯とお酒の席もたまに設けられて今夜はそんな日だった。

成人したメンバーはみんなお酒も飲みつつ色んな話を繰り出している。

それでも明日は黎弥の地元福岡でリリースイベントを控えているからメンバーはみんなセーブして飲んでいる。

私も…そのはずだったんだけど、多忙のせいか妙に酒の周りが早くて、気づいた時にはウトウトと夢の世界へ入る寸前。


「雪乃ちゃん、大丈夫?」


リーダーせっちゃんが壁に寄りかかっている私に気づいて声をかけてくれるも、今にも目がくっつきそうで、それでも微笑んで「平気。」なんて言ってみる。


「いや全然大丈夫じゃないじゃん!全くお酒弱いくせに何やってんだよ、」


もう1人のリーダー大樹も言っちゃえば私なんかよりもしっかりしていて腕を持ってふわりと後ろから立ち上がらせてくれるも、足元がふにゃふにゃでペタンって床に戻ってしまう。


「あれ、おかしい。足がおかしい。絶対ぶっ壊れた。」
「あーこれ俺じゃ無理だ、勇征部屋まで運んでやって。」
「分かりました!」


そんな美声の後、ふわりと身体が宙に浮いた―――ような感覚だった。

まるで空でも飛んでるみたいに心地よくてコテっと首を曲げると「…寝ちゃった?」微かに聞こえた声に薄らと微笑んだ。


ギシって音と柔らかいふわふわな雲の上に身体を優しく降ろされたようで、目を閉じたまま口端だけ緩めると、頬に触れる大きな手?


「無防備だなぁ。俺が覚醒したらどーすんの?」


頬をふんわり包む手が心地よくてその手が離れてしまいそうになった瞬間、勢いよく目を開けて離れそうな腕を掴む。

ボヤけた視界にいるのは、勇征?それとも異国の王子様?はたまたスーパーサイヤ人?なんでもいいや。


「もっと、」


よく分かんない言葉を発した私はそのままその腕を胸に抱い引き寄せた。途端にむちゅって人間の温もりが落ちる。


「あのちょっ、ちょっ、雪乃さんっ!?起きてるっ!?」


パチっと目を開けるとやっぱり勇征によく似た異国のサイヤ人が真っ赤な顔して見ていて、そのすべすべな頬に手を添えて顔を近づける。

ちゅ…小さなリップ音と共に触れた唇が、思いの外柔らかくてもっと欲しくなる。だから首に腕を回して「もっと、」そう言うと深い溜息の後、生温い舌が絡まった。


「んッ、気持ちッ、」
「その声反則、止まんなくなる…、」


遠のく意識の中、甘い異国のサイヤ人のキスに酔いしれた。



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やけにリアルな夢を見た。

てか、夢でキスせがむとか、どんだけ欲求不満なんだろ私ってば。絶対にこんなの誰にも知られちゃいかん。

二日酔いの身体から酒抜かなきゃって、熱いシャワーを浴びた。


「おはよー。」


ホテルの朝食をメンバーの部屋に持っていく。

ボーカル部屋は加湿器ガンガンたいていて二人ともお肌もつるつる。


「颯太、勇征、起きて。」


身体を揺らす私に目を見開いた勇征は真っ赤な顔で「あ、雪乃さん、えっと、あの俺、」もごもご言葉を濁していて。


「おはよ。よく眠れた?」


ニッコリ微笑む私に珍しく目の下にクマができている。あれ?眠れなかった?スッと手を伸ばしてクマに触れると「!!!ト、トイレ!」…慌ててトイレに駆け込んだ。


「何今の?」


颯太を見るとちょっとムスっとした顔で「やっぱり昨日なんかあったんかな?勇征くんずっと悶々しとんねんで、」なんとも分からない言葉を返された。

記憶を辿っても何も思い出せない。

しばらくしてトイレから出てきた勇征は、颯太と仲良くご飯を食べてる私と同じ椅子に座って無言で食べる。


((え、なに?お尻くっついてるけど、))