真っ赤になって一人踊っている勇征をカメラマンの後ろから見ていた。
FANTASTICSのみでTRIBEコールをやったものの、結果はかなりのグダグダ。なかなかの下手さに私たちマネージャーもちょっとヒヤヒヤしている。
のっけから、眠いのだの、ここは家じゃないだの、おデコ光ってるだの、突っ込まれていた勇征は、楽屋ではどんな感じなのか?って質問で弄られキャラを存分に生かして1人で身体張って頑張っていた。
何度となく真っ赤になって顔を伏せる勇征を見ている私の心臓はほんのり色付いているのだろうか?
ここ数日で勇征との距離が確実に狭まったように思えている。
思いの外リーダー世界に話をフラれて、普段テレビの前でもあまり喋らない勇征も、今回はわりと言葉を発していた。
「それではまた、FANTASTICSでした、ばいばーい!」
カメラに向かって手を振ってやっとこさ、TRIBEコールを終えた。大樹は何度か経験していて慣れているんだろうのに、それでも進行を世界に任せる所は徹底していて、文句一つ言わない。さすがだと思った。
「大樹、お疲れ様!」
「雪乃ちゃん爆笑しまくってたじゃん。」
「んー。勇征可愛くて。」
ポロッと零れた言葉に大樹はほんのり目を見開いた後、私の肩に腕をかけた。
「なに?そーいう事?俺協力しようか?」
ニタァって笑う大樹に苦笑いで首を横に振る。絶対勘違いしてる!って思うんだけど、「雪乃さん!」不意に後ろから名前を呼ばれて大樹と2人振り返るとそこには勇征が立っている。だからか、大樹が思いっきり笑顔になって「あっちはそーいう事なんじゃん!」なんて言って私の背中をポンッと一つ押したんだ。
その勢いであわわとバランスを崩した私を勇征は簡単に捕まえて受け止める。
「勇征、なに?」
「俺の南京錠の鍵、知らない?」
「え?鍵?」
真っ赤なシャツの上、首から下げられた金の南京錠。時々鍵らしきものを一緒にかけているのを見たこともあるけど、
「取れなくって、これ。」
「…知らないけど、無くしたの?」
「…かなぁ。一緒に探して?ダメ?」
「いいよ。」
勇征の腕を掴んでスタジオに戻るもそこには誰もいなくて。
勇征が座っていたソファーの周りを見るけどそれっぽいのなんて何も無い。
「鍵ないと取れないんだよね?」
ソファーの後ろ、死角になっているそこに膝をついて体制を低くすると、「雪乃さん。」振り返った私の前、勇征が鍵をプランとさせた。
「あ、あった?やっぱり落ちてたのか!よかったね!」
立ち上がろうとする私の腕を掴んだ瞬間、スタジオの電気が消えた。見つめる先の勇征の顔は高揚しているようで…
「ゆ、せ…?」
「雪乃さんに持ってて欲しい、鍵。」
…心臓がバクバク高鳴った。言葉を発せようと口を開くも、勇征の指がそっと唇に触れる。
「あの夜からずっと、雪乃さんのキスが忘れられないの。…責任とってよ?」
唇の指を頬に触れさせて視線を合わせると、勇征の綺麗な顔が素早く降りてきた。
待って、とか、ダメだよ、とか、いくらでも拒否する言葉は浮かぶのに、柔らかい唇の感触が心地よくて、ぼんやりと勇征の言うあの夜が私の脳内に流れ込んでくるようだった。
ひとしきりキスを終えると勇征は真っ赤な顔で真っ直ぐに私を見ていて、
「あの夜雪乃さん俺になんて言ったかわかる?」
たぶんこう言ったんだろうなぁーって言葉が口から飛び出す。
勇征の首に腕にかけてほんのり引き寄せる。
「…もっと、」
私の言葉にニンマリほくそ笑んだ勇征はアヒル口をまた私にくっつけた。滑らかに舌が絡み合う音に紛れて、私と勇征の甘い吐息も漏れる。触れる唇が熱くて甘くて…溶けそうだ。
南京錠の鍵どころじゃない。
私はこの男の全てが欲しい…
((あ、思い出した!異国のサイヤ人だ!))