「乗って」
ピンク色の可愛いヘルメットをスポっと私の頭に被せる勇征くん。掲示板に載せられた私と颯ちゃんの謹慎文章を見て、慧人くんはどう思ったんだろうか?不良って、バカな女って、そう思うよね?
進学コースのくせに謹慎なんてあり得ないって、きっとみんな私を厄介者として扱うかもしれない。高校三年間、今までわりと真面目に生きてきたけれど、そういうのもう疲れちゃった。このまま勇征くんとどこか誰もいない場所へ行きたい。慧人くんのいない世界にいきたい…―――
カキーンっと聞こえた音にハッと我に返った。
バイクはすでに停まっていて、何ならメットも外されている。勇征くんがふわりと私を抱き上げて地面におろしてくれた。でも、なんで…
「学校…だよ、ここ」
「そ。慧人のこと、もうやめる?」
そう言いながらも、ここから見えるのはちょうど慧人くん。利き腕の右手には痛々しい包帯が巻かれている。それを庇うようにサポーターが巻かれていて…
「颯太も心配してた。俺思うんだけど、素直に好きだって言うのってそんな難しいかな?ゆき乃ちゃん俺に対してはすげぇ素直なとこあるのに、慧人の前だとちょっとお姉さんぶってるっていうかさ…。まぁ慧人こそ、素直にならねぇとダメだと思うんだけど。…俺がマジで言っても靡かなかったゆき乃ちゃんが、颯太とラブホ入ろうとするなんてそうとうのことあったんだろ?…いいの、このままで?今ここで諦めたら俺なら絶対後悔すると思うから…」
ポンって背中を押してくれる勇征くん。その優しさ、結構くるなぁ。ただかっこいいだけの男じゃないってよくよく分かった。見つめる先の慧人くんは右手を庇いながらだからストレートがうまく投げられなくて。いつも以上に汗を流しながら一生懸命投げ込んでいた。
「勇征くん私…諦められない!」
「そうしろ、そうしろ!」
目を細めて微笑む勇征くんに私は慧人くんのLINEを開いた。部活が終わってから練習付き合いたい!ってことを入れた。
「勇征くん一つだけお願いがあるの」
「いいよ、一つでも二つでも…」
微笑む勇征くんと一緒にバイクに戻った私は大きな公園に連れて行って貰った。
「本当に俺も一緒じゃなくていいの?」
「うん。これは私の希望だから。本当にありがとう」
「分かったよ」
ポスっと頭に手を乗せる勇征くんはそのまま振り向くことなく爆音を立ててここからいなくなった。
「よしっ、気合いっ!」
慧人くんの為に絶対に見つけるからね。