どーする、どーする?ええいもう、目閉じちゃえっ!近づく慧人くんの真剣な瞳に吸い込まれそうになりながらも私はそっと目を閉じた。息遣いを肌で感じて心臓吐きそう!
「なーんて、うそだよ!もーゆき乃ちゃん隙あり過ぎ!一応俺もオトコなんだからさぁ、警戒ぐらいしなって。マジ大樹先輩に手出されないようにさ…」
…死ぬ程ドキドキしたのに、いつも慧人くんはそうやって私のことからかって楽しんでるんだから。自分だけが本気で、やり場の無い気持ちが溢れて泣きそうだった。
「…え、ゆき乃ちゃん?」
驚いた慧人くんの声に顔をあげると、視界がクリアになった。それと同時に頬に流れた涙に慌てて目を逸らす。バカみたい、1人で舞い上がっちゃって。
「慧人くんなんて、嫌いだよ」
悔し紛れにそう言って、私はこの土砂降り大雨の中、ずぶ濡れ覚悟で走り出した。
「はっ!冗談だろっ!待てよゆき乃ちゃんっ!風邪引くって!」
追いかけてきた慧人くんに腕を掴まれて足が止まる。既に二人ともバカみたいにずぶ濡れ。プールに落ちたか、服のままシャワー浴びたかみたいな。
「離してっ、慧人くんに振り回されるのはもううんざりっ!私のこと好きでもなんでもないならほっといてよっ!」
手を振り払って走った。困惑した慧人くんの顔が頭から離れない。あんな悲しそうな顔、初めて見た。…私が悪いの?素直になれない私が悪いの?もう、何もかも忘れたい。慧人くんのことも、慧人くんを好きになったことも全部、全部。