階段キス


彼女はいつも同じ男とよくよくあの階段で躊躇いも恥じらいもなくキスをしているんだ。学校のど真ん中だっていうのに…

単純にそのキス顔が俺の性癖に刺さったってだけ。そのキス顔、俺ならもっと可愛くさせてあげられる…なんて思ってる。


「未来、今日も踊りに行く?」


放課後、いつもの様にダンス仲間のマサヒロが階段の下から俺を見上げていて「あー行く! 」そう一歩踏み出した時だった、彼女、ユヅキがマサヒロの横からこっちに向かって上がってきたのは。

いつも隣にいる神谷はそこにはいなくて、なんなら一人でつまんなさそうにしていて、思わず頬が緩んだ。


「マサヒロ悪い、急用あった。俺今日パス!」
「了解!」


あっさりと向きを変えたマサヒロなんてもう見てなくって、視線は俺を通り過ぎようとするユヅキ。

階段の踊り場でその細い腕を不意に掴んだんだ。

驚きもせず俺をジロっと見るその目もそそる。


「今日は一人なの?ユヅキ先輩!」
「…深堀、くん?」
「へぇ、知ってんだ?」
「だって目立つもん。その赤い髪。」


手を出すわけでもなくそれでもジッと見つめるその大きめの瞳にトクンと心臓がうごめく。


「ユヅキ先輩も、ここでいっつもキスしてるから知らない奴なんていねぇよ。」
「…うん、」
「今日は彼氏、いないの?」


短い髪の毛先を指でくるりとすると、色落ちした金髪が見え隠れしている。


「…い、ない。」
「ラッキー。んじゃ俺とどっか行かない?バイクで来てる。」


鍵をチャリっとチラつかせるとユヅキの表情がパァーっと紅くなる。これは、いけるんじゃないか?って思うわけで。

口端を緩めてニコッと笑ったユヅキは「うん!」素直に頷いた。

腰に腕を回して誘導すると立ち止まった俺を見上げるその首に腕をかけて顔を寄せた。

ほんの一瞬「え?」って顔をしたものの、声を出される前にその唇を塞いだんだーーー


その瞬間スローモーションでユヅキが瞬きするのが分かって、小さく囁いた。


「ユヅキの全部が俺の性癖にささってる。」


それだけ言うとほんのり開いた唇を舌でなぞってそのまま中に入れこんだ。腕に絡まって舌を絡めるユヅキの髪を撫でると目をトロつかせて身体を寄せた。だからそのままもう一度頬に手を添えて何度もその柔らかい唇を奪った。



「未来くん、」
「俺んち来る?」
「うんっ!」


翌日まんまと神谷に呼び出されるハメになるんだろうけど、俺はニヤリと笑ってユヅキの手を引いた。



階段のど真ん中できみの心も奪ってやる