始まりのキス


ダンッてカウンターにお酒を置いた。自分でも結構酔ってるのは分かってる。分かってるけど、世の中飲まなきゃやってらんないことも多いんだよっ!!!


「あーあー荒れとっと?」


そんな声と同時に姿を見せたのは同期の日高竜太。その後ろ、九州組を引き連れて私を迎えに来てくれたんだろう。

隣でひたすらずーっと私の相手をしてくれていた利樹ちゃんがホッとした表情に変わったのが分かった。


事の発端は、いやそもそも単なる私の片想いが呆気なく終わりを迎えただけで。

憧れの青山くんに彼女がいる事が発覚したってだけ。

まぁ、それだけ。はたから見たらそれだけ。―――だけど、私にとっては重要で、一大事、で。

その日一日ショックで仕事って仕事ができなかったんだ。だから帰り際に利樹ちゃんを連れて飲みに行ったものの、このザマ。

酔っ払った女程醜いものはない。しょぼぼぼぼ。


「遅いよ、イケメン!はい、ここ座って!」


宮崎出身の北ちゃんと、福岡出身のいっちゃんを両サイドに座らせて更にお酒を注文。

2人とも極上の笑みで優しく私の髪を撫でてくれるからなんかもう涙が止まんなくて。


「まぁ男なんて、陸さん以外にも腐る程いるしさ。」
「そうそう。イケメンもここにいるし!」


自分をイケメン呼びするメンズなんて北ちゃん以外許せないけど、ニッコリ微笑んで頬を指でなぞる北ちゃんに胸がキュンとした。


「北ちゃーん!寂しいっ、ギューして!」


調子にのって腕を伸ばすも、そんなのお手の物って顔で北ちゃんが抱きしめてくれる。だからそのままそっと目を閉じると、ふわりと誰かに抱き上げられたような、気がしたんだ。


パチっと目が覚めると知らない部屋だった。大きなベッドの上、隣に誰かいる感覚で振り返ると「日高!!」残念ながら綺麗な顔で眠っていて。

私の叫び声に目を瞑ったままグイッて私の事をわざとなのか?引き寄せた。


「…起きてるの?」
「いーから寝とけ。こうしててやるから。」
「…ン、」
「俺はお前がいい女だって知っとーよ。陸は忘れて俺にせぇ。」


え?え?え?待って、どーいう???


「告った?それともただの慰め?」


日高がギュウって抱きしめるから顔があげられなくて、籠った声でそう聞くと「どっちでも?ユヅキの好きにとればいいよ。」…そう言われても。

同期だったから特段意識なんてしてなかったし、ましてやオスとしてなんて見てなかったんだけど、抱きしめるこの温もりは捨てがたい。

思いの外、暑い胸板と、守ってくれるんだろう力強い腕。


「日高…」
「なん?」
「私の事、好きなの?」
「好きだよ。ユヅキが陸を想うよりずっとな。」


そこは、好きにとればいい…じゃないんだ。

モゾモゾと日高の腕の中からやっと抜け出す。

暗闇で目が合った日高は、大きな瞳をぱっちり開けていて。あれ?あれれ?ちょっと待って、日高ってこんな可愛かったっけ?

思わず伸びた手が日高の頬に触れるとその瞳が大きく揺らぐのが分かった。


「こら。惚れてる女と同じベッドで寝てて一応クソ我慢してんの、分かる?」


…それってアッチの我慢てこと、だよね?途端に日高が可愛く見えて、固まってる日高の頬にちゅって私からキスをした。


「…いや、聞いてた?」
「聞いてた。我慢してるって!」
「…楽しんどると?」
「うん。日高がさっきから可愛く見えてたまんなっ、 」


キャッて、急に私を跨いで上に乗っかるから。トンって耳の横に手を着いて私を見下ろす日高が優しく言ったんだ。


「ユヅキのがずっと可愛い…」


そう言うが、そのまま迷うことなく私の唇をハムッとくわえた。久々のキスの感触にちょっとテンションがあがる。


「んう、もっとちゃんとして、」
「煽んなや、バカヤロ。」


嬉しそうな日高の顔と声。――――と、熱い唇。私の頬に手を添えて何度となく甘く舌を絡ませる。

日高の首に腕を回してぎゅうっと抱きつく私に「ほんま可愛い奴。」首に顔を埋めた日高はペロっと首筋を舐める。


「ンッ、もっと、」


煽る私を夢の世界へと導いてくれるんだと。



「ブラも早くとってぇ。」
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