待ちわびたキス


元々の距離が近過ぎて最後の一歩が踏み出せずにいるのは、私もキミも同じなのかもしれない?

毎日好きが溢れてしまうんだ。


社会人2年目。
幼馴染の嘉が一人暮らしを始めた最初の土曜日、足りないものがあるからって買い物に付き合わされて…


「あーお腹いっぱい!美味しかったー!」


お礼にって嘉がお昼をご馳走してくれた。なんだかんだでさほど買ってないけど、いいのかな?


「他に足りないものないの?」
「んーだいたい揃ってるからまぁ大丈夫。」


若干歯切れが悪く見えるけど?


「なんか隠してる?」
「えっ!?べ、つに、なにも。」


慌てて目を逸らす嘉が嘘をついている事ぐらいは分かってしまう。だってほら、耳がほんのり紅くなっている。嘘つく時の嘉の癖。


「嘘!何年一緒にいると思ってんのー?嘉が嘘つく癖ぐらいお見通しなんだから!」


お会計を済ませて駐車場に向かいながらもそんな会話。ひょいって私の腕から買い物袋を奪い取って苦笑いの嘉。


「なんも隠してねぇよ。ただなんていうかその、」


そこまで言った時だった。駐車場の向こう側、「ヨッシー先輩!?」聞こえた声に顔を向ける。ちょうど車のキーを嘉に渡したところでそれをチャリッと嘉が受け取った。


「最悪。」


そう呟いた嘉の元へ赤い髪の彼氏にひっついたショートの女の子が嬉しそうに近寄ってきて。


「わー噂の彼女だ!!てかヨッシー先輩より大人っぽい、きれーい!」
「立花、それは、な!」


嘉がたじたじしているものの、ショートの彼女は私を爛々を見つめていて。隣の彼氏はちょっとだけ呆れ顔。


「もう告白したの?」
「おい!だから、その、まだだから…」


真っ赤になってる嘉にドキンと心臓が高鳴った。


「告白?嘉?」
「ユヅキ、いやちょっと待って。未来、立花どうにかして。」


おでこを抑える嘉に「すいません。朝海空気読もうね。んじゃ嘉さんまた。」なんだかよく分からないまま彼女を無理やり連れ出す彼氏。

振り返った嘉は真っ赤な顔で車内を指差す。


「中で、話す。」
「…うん。」


2人になった途端に心臓バクバクで、バタンと助手席に座ると真っ直ぐに嘉の視線が飛んでくる。


「…さっきのは会社の後輩達で、この土日でユヅキに想いを伝えるって…、」


想いを伝える?え?


「嘉?」
「小さい時からずっとユヅキが好きだった。付き合って欲しい…。」
「うん。」
「えっ!?いいの?」
「うん。だって私待ってたもん、嘉が好きって言うの。」


分かりやすい嘉の性格だから、私たちが想い合っている事ぐらい分かっていて、それでも女は男に「好きだ」と言わせたい生き物なんじゃないだろうか?


「てか、私が断ると思ってたの?」
「いや、幼馴染以上に見られてないかもーって思ったりもしたから、」
「そんなわけない。嘉より好きな男なんてこの世にいない。」
「ユヅキ…、」


照れくさそうに恥ずかしそうに私に手を伸ばす嘉に思わず笑う。だってこんな展開ちょっと可笑しい。ずーっと幼馴染って関係を貫いてきた私たちに今更こんな展開。


「笑うなよ、俺も緊張してる。」


頬に手を添える嘉はやっぱり真っ赤で。そんな嘉の前、目を閉じるとゆっくりと嘉の唇が重なるーーーーー

小さく離れてまた吸い寄せられるように重なって…

ぎゅっと抱きしめられる。嘉の温もりに目を閉じると耳元にハスキーな声が届いた。


「好きだよ。」



あのさ、今日うち泊まらない?