「よし、完璧!」
夏の花火大会。大学のみんなと行く約束をしていて、私は気合を入れてお気に入りの浴衣に袖を通した。
入学してからずっと大好きな北ちゃんに可愛いって思って貰えたら嬉しいなーなんて。鏡に向かって笑顔を作るとぽこんとLINEが鳴る。
【もちろん浴衣だよね?】
北ちゃんからのLINEで、思わず頬が緩む。【もちろん浴衣だよ!】そう送信すると【早く見てー】って返事。それだけでなんかドキドキしちゃって、【そろそろ出ます!】流行る気持ちを抑えてドアを開けた瞬間、目の前に浴衣を着た北ちゃんがいて。
「えっ!?どうしてっ!?」
「だって俺より先に他の誰かに見られたくねぇもん。はい、手貸して。歩きずらいでしょ?」
女の私なんかよりもずっと女子力が高い北ちゃん。顔だって小さいし声だって綺麗。
だけど宮崎出身で九州男子な北ちゃんは、その外見とは違って思うよりもずっと男らしい性格だった。
差し出された手を握るとキュッて指を絡める北ちゃんと目が合うとニッコリ笑う。
「浴衣も髪型もメイクも可愛い。…花火始まったらさ、2人で抜けよ?2人で見たい。」
「…ん。私も。」
ヤバい、嬉しい!キュっと指を強く握ると北ちゃんの視線がまた降りてくる。
「他になにか聞きたいことは?」
「え?…と、」
私の事、好き?なんて、聞けないー。でも聞きたい。むしろ、言われたい。私の前髪をふわりと反対の指で触れると、トクンと心臓が脈打つ。
「ほ、北ちゃんは?」
「俺が聞いてるの、こら。」
ふわりと抱き寄せられて耳元で「じゃあ聞いちゃうけど、俺の事好き?」…まさかの質問が飛んできた。だから小さくコクッと頷くと「やったね!」肩に置かれた北ちゃんの手にそっとチカラが込められる。
そのまま顔を覗き込まれて小さくキスをされた。もちろん抵抗なんて無し。でも恥ずかしくて真っ赤になって顔を隠す私を、楽しそうに笑ってみている北ちゃん。…かっよくてずるい。
そのままみんなとの待ち合わせ場所まで手を繋いで歩く。
当たり前に手を繋いでる私たちを見て「おい、北人!」ってツッコミを入れてる。
「陸さん、ユヅキちゃん俺のっすから。」
後ろに隠すように陸くんに向かってそんな言葉を浴びせる北ちゃんを嬉しく思うしかなくて、いっちゃんも翔吾くんもみんなみんな喜んでくれた。
「あれは?」
「あれはえーっと、あ、あれがアルタイルかな!一番光ってるのがベガ!織姫と彦星はこの2人だよ、うん。」
花火大会を抜け出して公園のベンチで2人、甘いカフェオレなんて飲みながら星の観察。
最後の花火が打ち上げられるまでしばし待機。
「…今頃みんな私と北ちゃんがいないこと気づいているかな?」
「あー大丈夫。一応翔吾に行ってあるから。俺らこっそり抜けるって。」
「そうなの?」
「抜かりないよ、そこは。」
ニコッて天使の微笑みをくれる北ちゃんはさっきから常に私の身体のどこかしらに触れていてそれがドキドキしてならない。
「あ、花火あがった!見て見て、綺麗!」
「おーすげー!!…みんなで見たかった?二人きりじゃなくて?」
「え?そんな事ないよ。二人きりだったら嬉しいのにって思ってたもん。」
「ほんと?んじゃ遠慮しないよ?」
なんの遠慮?そう聞き返そうとしたら肩に回された腕に途端にドキッとして何も言えなくなる。目の前で北ちゃんの綺麗な瞳が閉じられたから…――――
空高く花火が上がっていて、そのもっと上には沢山の星達が輝きを増しているというのに、私の目に映るのはたった一人、北ちゃんだけで。
「俺の事だけ考えて、俺の事だけ見て?…イヤ?」
優しく抱きしめてくれる北ちゃんにそんな言葉ずるいよね。そんなこと言われてNOって答える人がいるなら見てみたい。
「北ちゃんだけだよ。」
「俺も、ユヅキちゃんしか見えない…、」
見かけによらず男らしい北ちゃんのキスは甘くて優しくてちょっとづつゆっくりと先を進めていくように唇を甘噛みされて心臓がギュッと鷲掴みにされてるようだった。
花火見るよりユヅキとちゅーしてたい。