「あ、れ…?」
頭の下に伸びた腕はいつもと変わらないもので。
チラリと隣を見ると、綺麗な顔した黎弥がそこにいた。
えっ!?
なななななななんでえええっ!?
「黎弥どうして!?」
ユサユサと身体を揺らして黎弥を起こす。
「ん〜なぁに…?」
寝起きのしわがれた声と薄ら開いた瞳が私を捕らえる。
「どしたの?」
逆に吃驚したような顔で私を見ていて…。
ここ、さっきの勇征くんの部屋じゃないよね?
キョロキョロと辺りを見回すけど、やっぱりここには私と黎弥しかいないようで。
「出張は?今日何日?」
「出張?来週だけど…。今日月曜日でしょ。どうしたの、ゆき乃。嫌な夢でも見た?」
そう言われて分かった。
勇征くんとのことは、完全に私の夢だったんだって。
ああ、よかった。
そう思いながらも、すごいリアルだったな…って。
え、やばくない?
これ、下…濡れてんじゃない?
そう思ってそっと指をそこに宛てがたう。
でもなんか怖くて。
「黎弥ぁ私、濡れてる?」
「…え?どこ?」
…そうだよね、そうなるよね。
「なんでもない」
言えるわけもなく起き上がってシャワーを浴びようとした私を、グイって腕を掴まれてベッドの中に引き戻される。
「お前、濡れてんの?」
どうやら気づいたのか、黎弥が私を組みふせて指を突っ込まれた。
その瞬間、口端が緩くあがって…
「なんだよ、シたかったなら言ってよ」
言われて黎弥のいつもどおりの優しいキスが落ちた。
それに安心して、何だか分からないけど涙が出そうだった。
だからそれに気づかれないように黎弥の胸に顔を埋めた。
これでいい。
これでいいんだ。
私の恋人は黎弥だけでいい。
夢でよかったけど…―――次どんな顔して勇征くんに会えばいいんだろうね。
その日の夕方、ピロン♪って黎弥にLINEが届く。
【すいません、アニキ。俺、夢でゆき乃さん抱いちゃいました☆】
勇征くんの夢に出演したらしい私…
これってやっぱり、夢でいいんだよね…!?
*END*