惚れた弱み

「あー士郎ちゃんだぁ。なになにー?名前に逢いに来たのぉ?」
 店に入った瞬間、来なきゃよかったと思えた。1秒前の自分を後悔した僕は大袈裟に溜息をついて呆れ顔で彼女を見返した。
「あのさ、本当いい迷惑なんだからいい加減止めなよ外で酒飲むの」
 よろよろと千鳥足で僕の方へと近づいてくる名前さんは、酒で赤くなった頬を膨らませてやだって首を降る。まぁ今ここで何を言っても無駄だって分かってるけど…
「悪りぃな、菊地原。ワイン飲ませちまったら風間と二人で潰れちまって。こいつは俺が送るから、苗字のこと頼んだぞ」
「いえ。ご迷惑おかけしてすいませんでした」
「おーまたなー!」
 僕に連絡をくれたのは他の誰でもないこの人、諏訪さんだ。小柄なうちの隊長を片手で抱えながら飲み屋の座敷から出て行く後ろ姿に、風間さんもほどほどにして貰わないと…なんて思えた。
「ほらちゃんと立って、帰るよ」
「送り狼になっちゃう系?士郎ちゃんてば」
 ツンツン指で僕の頬に触れる名前さんの腰に腕を回せば、一瞬目を大きく見開いてから馬鹿みたいに可愛い顔で笑うんだ。あー僕もたいがい駄目な奴かも…なんて思いながら名前さんの肩に腕を回して抱えながら店を後にした。
「あのねー士郎ちゃーん。怒ってるー?」
「怒りというか、呆れてる。僕は未成年だから酒の味なんて分かんないけど、そんなに美味しいの?」
 そう聞けば名前さんはふにゃりと笑った。それから僕の腰に腕を回して横からぎゅーって抱きついてくる。頬を掠めた名前さんの吐息からほんのりアルコール臭がしてちょっとだけ顔を歪めた。
「蒼也くんの恋バナだったからテンションあがっていっぱい飲んじゃったのー今日はぁ。士郎ちゃん知ってた?蒼也くん、好きな女の子いるんだってぇ!誰だと思う?ボーダーの子?って聞いたらコクって頷いてたのー!結構限られるよねぇボーダー内だったらさぁ!だから名前がキューピッドやってあげるーって言ったら、なんか怒ってたんだよねぇ。洸太郎くんは何だか難しそうな顔してたしさぁー。明日もっかい聞いてみよぉ、ふふ」
 酒のせいなのか、元々が抜けてるのか、僕には風間さんの好きな人…と聞いて名前さん以外浮かばなかった。自分がモテるタイプだと微塵も思っていない名前さんは、人懐っこい性格と軽いボディタッチ。おまけに屈託ない笑顔とくれば、普通の男なら悪い気はしない。まぁ僕もその中の一人なんだろうけど。というか風間さん名前さんにそんな話したってことは、僕から奪い取る気なのかな…。
「それは困るな」
「え?なんか言ったぁ?士郎ちゃーん」
 全く呑気な顔して僕に抱きついてる名前さんが憎たらしくも愛おしい。柔らかな髪に触れれば名前さんの瞳が熱く揺れた。
「士郎ちゃん…」
「こっち来て」
 人気のない公園。名前さんの住むマンションまで持たないかも…そう思った僕は、熱い名前さんの腕を引いて公園の中にある大きな象の滑り台の裏手に回ってそこにダンと名前さんを押し付けた。こっち側はぶっちゃけ森しかないから死角になっていて道路側からなんて見えやしない。ある意味穴場って誰かが言ってたのを聞いた。
「士郎ちゃん酔ってる?」
「酔ってない。飲んでるわけないでしょ。僕がこーゆー事するのはいつでも素面でしょうが」
「そうね。なんか今日の士郎ちゃん、かっこいい」
 もういいから黙ってよ。そんな意味も込めて僕は名前さんの熱い唇を自分ので塞いだ。アルコール臭のある名前さんの口内を僕の唾液で少しづつ溶かしていくように丁寧に口づける。本当は強引に奪ってやりたい所だけど柔らかい名前さんの舌に翻弄されるのは決まって僕の方だ。いつの間にか主導権は僕から名前さんに変わっていて、「んっ、ふうっ」自然と漏れる声に名前さんが楽しそうに微笑んでいるのが分かった。ちゅうっと名前さんの柔らかい唇が僕のを吸い上げるときゅんと下半身が薄く。はぁまぢでヤバイ、今ので完全に勃ったし。それを名前さんに気づかれないようにほんのり腰を引けば酔ってるくせに上手な名前さんはするすると手をそこに持っていく。ちゅっとリップ音を鳴らせて唇を尖らせるとふふっと耳元に息を吹きかけながら笑っている。くそっ、こんなはずじゃなかったのに。結局いつも翻弄されているのは名前さんじゃなくて僕の方だ。
「士郎ちゃん、したくなっちゃった?」
 耳に舌を這わせて耳朶をかぷりと甘噛みする名前さんの手は僕のそこをズボンの上から撫でている。はぁ…と一つ荒く息を吐き出すと名前さんが距離を取って僕を見つめ上げた。アルコールのせいで紅く染まった頬を指で抓ってやると目を見開いて「そうだよ。家まで待てないからここに寄ったんだよ」そう返しながらむぎゅっとニットの上から名前さんの胸に触れた。あー舐めたい…まぢでここでしてもいいのかな?こんな我慢も効かない子供みたいな事したくないのに、そんな自分が凄く嫌なのに、僕はこの人を前にすると感情のコントロールが効かなくなるんだ。
「いいよ名前、ここでしても。士郎ちゃんのだけ抜いてあげてもいいし」
 いやそれ貴女の口から聞きたくなかったわー。抜くとか女が言うもんじゃないよ。そう言いたいのに僕は名前さんのニットの中に手を入れ込んでいて、背中のホックを外して下着の中に指を忍ばせた。はぁ…やっと名前さんから少し余裕のない吐息が漏れた。知ってる。名前さんは胸が弱い。少し触れるだけでも熱い吐息を漏らすから。ニットを捲くりあげてそこにすかさず口づける僕の頭を抱える名前さんから甘ったるい香りがしてまるで媚薬の様だ。ちゅるりと胸の尖端を口に含んで舌でぺろぺろと舐めると「んっふぅ」可愛い声が僕の耳を刺激する。激しく脈打つ心音が心地良くて僕は舌で胸を舐め回しながらも指をゆっくりと名前さんの腰から太腿へと移動させた。
「士郎ちゃっ、」
「隙だらけなんだよ、貴女は。そんな可愛い顔して厭らしい声だして、僕が迎えに来なかったらどうするつもりだったの?」
「ふぅっ、士郎ちゃん…んっ、そこで喋っちゃやぁっ」
 脚をがくがく震わせて快感に耐えている名前さんは堪らなく可愛い。そーゆう僕だけに見せる濡れた表情を見ているだけで、僕のソコは熱くなっていくのが分かる。あーやばい、痛ってぇ…。名前さんに触れる程、硬さを増してゆく僕のそれをどうにかしたくて名前さんのロングスカートを捲し立てて下着の上からそこに触れた。じわりと熱いそこに下着の上から指を擦りつけると「はぁっ士郎ちゃんっ、」きゅっと僕の首に巻き付く様にまた脚を震わせた。指をずらせて入口を突けば文句無しにくちゅりと音を立てて僕の指を迎え入れた。
「ああっ、んっふぅっ、」
 僕の鼓膜を刺激する名前さんの喘ぎ声。呼吸を乱して潤んだ瞳で僕を見つめる名前さんをのびっしょりな子宮に指を挿入して第二関節をくいくいと動かすとビクンと腰をうねらせた。
「ここ、好きだよね名前さん」
「んぅ好きっ士郎ちゃ…」
 くちゅくちゅと響く水音。死角になっているとはいえここは外。いつ誰が入ってくるかなんて分からないスリルを味わう趣味はないけれど、酔ってハイになっている名前さんを前に我慢ができる訳がない。そこそこ真面目を演じている僕だけど、普通に興奮するし、名前さん相手なら普通の感情だと思う。風間さんには悪いけど、こんな名前さんは僕だけの物だ。胸の尖端をちゅうっと吸い上げると名前さんが自分の手で口元を抑えた。声を殺して荒ぐ呼吸を繰り返す名前さんの手を退かして強引に舌を絡める。生温い名前さんの柔らかな舌をハムリと吸い込めば苦しそうに「んっ、ふうっ」と声を漏らした。きしきしと痛む下半身から意識を逸らして名前さんの口内を犯しながら指を動かし続けると、こくこくと首を横に振る。
「んっ、んんんぅっ、イッちゃっ」
 リップ音の後、僕を見つめる名前さんのほんのり開いた口がセクシーでまたキスをする。最早僕の股間を気にする事すらできない名前さんの子宮の指をくちゅくちゅと動かして、奥の壁をくいくいと擦ると「ああああっんっ」辛うじて手で抑えて籠もった名前さんの声と同時、子宮内にいた僕の指が強く締め付けられた。びくびくと子宮を揺らせて胸の尖端をピンと尖らせた名前さんは、肩で大きく呼吸を繰り返す。そのままぎゅっと僕に身体を預ける。
「士郎ちゃんの意地悪」
「え?」
「ここで最後までなんてしたくないよー」
「まぁそうだよね…悪いと思ってるよ」
「ほんとぉ?」
 僕の両頬に手を添えてむぎゅっとされる。素直にコクンと頷くとふにゃりと笑った。
「じゃあ許すー」
「いやあのさ、僕のこれ…結構しんどいんだよね」
 はち切れそうなくらいに盛り上がっている股間に名前さんの手を持っていくと目を見開いてくすりと笑った。
「だーめ。続きは家に帰ってから。士郎ちゃんのここは私だけの物だもん」
「さっきは抜いていいって言ってたよね?」
「えー言ってたぁ?」
 げぇ!!まぁ僕だって専らここで最後までするなんて事はなっから考えてなかったけどさぁ。けどこんな状態のこれをスルーできるか?って話で…。名前さんの腰に腕を回して引き寄せる僕にされるがまま腕の中に飛び込んでくる名前さん。
「すげー痛いんだよここ」
「んふふふ可愛いなぁ士郎ちゃーん。早く帰ろぉ」
 イッてすっきりしたのか乱れた服を直した名前さんは僕の腕にきゅっと抱きついて滑り台から移動する。前屈みでひょこひょこ歩く僕を見てけらけらと笑う名前さんは完全に酔っ払いで、腹が立つ。それなのに僕はこの握られた手を離せそうもない。
「おい酔っ払い女」
「はーい」
「今日泊まるから」
「うん、いいよぉ。士郎ちゃんのそれ、ちゃんと名前が抜いてあげるからねぇ」
 全く。うざいって思うし、馬鹿じゃんって思うのに、僕の身も心も名前さんしか受け付けない。これが俗に言う惚れた弱みって奴なんだろーなーって思う。覚えとけよ帰ったら。飛び跳ねている僕を見てやっぱり饒舌に笑う名前さんをベッドに組み伏せるまで後30分――。