「あ、もう、風邪ひくよ、起きて、准」
コタツに足を突っ込んでクッションを抱きしめたまま綺麗な寝顔をさらして眠っている恋人の嵐山准。私の部屋の合鍵を持っているから防衛任務終わりの現場から直接ここに来たんだろうか、仕事を終えて家の玄関を開けると珈琲のいい香りが漂っていた。
だけれど当の本人はコタツで幸せそうな寝顔…。仕事で疲れた私には最高の癒しだけど、これで彼が風邪でも引いたら元も子もない。なんせ准は大事なボーダー隊員の顔でもあるのだから。三門市を守る防衛任務は勿論のこと、いざネイバーが現れたら彼は迷いなく戦いに出る。その時に備えていつでも戦える準備はしておくのがボーダー隊員の使命でもあると言っても過言ではない。軽く腕を掴んで左右に揺すると「うーん」と口端を緩めた。
「准風邪ひいちゃうから、寝るならベッドで寝て」
私の言葉に薄っすらと瞳を開ける准。でもほんのり口端を緩めて私の腕を掴んだ。
「一緒に寝てくれるか?名前」
甘えた声で半笑いの准。その綺麗な顔でそーいう台詞言うなんて確信犯だな、このー。なんて思うものの私の頬は緩むだけで。結局のところ甘える准が可愛くて仕方がない。だって誰かがいると准は至って普通の恋人を演じているから。真面目な彼が人前でいちゃこらするなんて以ての外、超爽やか健全カップルを演じている。演じているのかは分からないけど、彼の性格上そうするべきだと思っているんだと思う。本当の本当は彼がとっても甘えん坊だということを知っているのはこの世で私一人だけでいい。
「准甘えたさん?」
「あぁ。俺名前の前ではいつでも甘えていたい」
言葉も口調も爽やかだけれど、伸ばした手はとても熱くて准の手に触れてしまえばどうなるかなんて考えなくとも分かる。わざとなのか、あざといのか、ほんのり唇を尖らせる准の誘惑に勝てた事などただの一度もない。あーずるいその甘ったるい表情。そんなトロンとした目つき可愛すぎる。
「ねぇキスして」
きた、甘い台詞。ちょっとだけいつもより低い声でそんな台詞言う准が憎たらしい。私が断らないって分かっている自信に満ちた表情も。よく理性がどうとか言うけどさ、理性って男だけの問題じゃないと思うの。女にだって少なからず理性はあると思う。そして今この瞬間、私の中のストッパーは完全にガタンと外れて崩れ落ちた。もう私、我慢できない…。コタツから腕を伸ばしている准の脇の下に腕を伸ばすとそのまますぐに私の後頭部を抱えてラグマットの上に転がされた。あれ?って思った時にはもう、天井との間に准の美顔が見えて、それが迷うことなく降りてくる。ちゅって甘い音を立てて二回ほど重なった唇。キスしてって言ったのは准の方なのに私を組伏せている時点でキスの主導権は准のもの。熱い准の身体に抱きしめられて胸がきゅんと音をたてる。
「もっとして」
あくまでキスされていたいらしい准の願望丸出しの可愛らしい台詞にちょっと笑いながら顔を寄せると半口開いたそこからニュルリと滑らかな舌が顔を見せた。それにチュルリと絡めて吸い付くと「んっ」…女みたいに甘い声を漏らす。はぁって時折吐息を漏らす准とコタツの中の脚が重なり合う。舌が絡まる度に漏れる甘いリップ音に私の身体がおおいに反応していて…そっと准の手が服の上から胸に触れた。
「准」
「だめか?したくなった、キスしたら」
「でもここコタツだから風邪ひいちゃう」
「ここで構わない、ベッドは冷たいし」
「そうだけど」
「駄目か?名前!俺としたくないのか?」
「…したくない」
「嘘だろ!?」
泣きそうな顔で私を見つめる涙目の准が見たくてあえて言ったんだもん。ここまでされてしたくないなんて言えないし思わない。
「嘘よ、しよっか」
「もーSなんだから。もう少しキスしてくれ」
「ん。こっちきて」
身体を密着させてキスを繰り返す准が私の腰に腕を回して更に強く抱き寄せられる。
「はぁ…幸せだな」
「ふふ、そうだね」
「あーすげぇ好き。好きだよ名前。もっとキスしよう」
「准キスばっかー」
「いーじゃないか、キスばっかで」
「いーけどむず痒い」
「ん?どこが?ここかな?」
コタツに潜って私のニットを捲り上げるとブラを簡単に外した。あっ!って思った時には空気に触れた肌に准の甘い舌が絡みつく。一気に気持ちが溢れる様ではぁ…と熱く吐息を漏らす。触れる准の唇に、私の感情混じりな声が漏れる。数秒の後、コタツから顔を出した准が一言「熱いっ!」と叫んだ。見るとほんのり額に汗を浮かべていて、頬が赤く染まっている。
「やっぱりコタツ無理じゃないかな?准」
「…だな。とりあえずこのままギューさせてくれ」
ふわりと准の温もりに全身包まれた。ドクドク早る心音に目を閉じてそっと准の背中に手を回した。それから、思っていたことを言葉にした。
「准あのさ、…嫌なことあった?」
「―――え?どうしてだ?」
「なんとなく。私にこうやって甘える時は決まって嫌なこと隠してるの、多くない?」
なんとなく准が私に助けを求めているような、そんなキスだったように思えて。勘違いならそれでいい。だけど永遠のパートナーとして私を選んでくれた准にとって、私は女だけどその全部を受け止めて包み込んであげたいって常に思っている。人間なんて所詮は弱い生き物で決して一人では生きてはいけない。だからこそ傍にいる人を大切にしなきゃってつくづく思ったりする。私にとっての准はかけがえのない大事な人だから。
「あーまぁ、そんな大したことじゃないんだが。でもこうして名前のこと抱きしめてると安心できる。ありがとうな名前」
「うん。じゃあもっとギューして」
「え?」
「私もそこそこ嫌なことあったりして」
「え、大丈夫なのか?」
「うん。准のギューで忘れる」
「それならずっとギューしててやる…好きだよ名前…」
「私もだーいすき、准が」
「俺の方が好きだよ」
見つめ合って甘いキス。生きていれば当たり前に起こる嫌なことも、大好きな人の温もりに包まれるだけで何にも変えられないくらいに心が癒される。ねぇ准、これからもずっと一緒にいようね。